『22年目の告白 -私が殺人犯です-』



 今日は、早朝から箱根駅伝の予選会の取材。予選会は立川の昭和記念公園で行われるので、現地までチャリで行った。

 間近で見ると、テレビの中継で観るのとは迫力が段違いである。


 『22年目の告白 -私が殺人犯です-』を、映像配信で観た。2012年の韓国映画『殺人の告白』のリメイク。



 私はオリジナルの韓国版を観ていないので比較はできないが、上出来のクライム・サスペンスであった。二転三転、どんでん返しが連続する展開で、最後まで少しも飽きさせない。

 この手のサイコ・サスペンスにありがちな猟奇的要素は控えめにし、全体に抑制のきいた演出である(たとえば、サイコキラーが「キャハハハハ!」と気味の悪い笑い声を上げたりしない)。そのことが、脚本のよさをくっきりと浮かび上がらせる。
 

『酒井家のしあわせ』



 取材した録音データを文章化する作業のことを、私のようなオッサン・ライターは「テープ起こし」と呼ぶが、最近の若いライターや編集者は「文字起こし」と呼ぶ。まぁ、いまはテープ(=カセットテープ)に録音するわけじゃないからな。
 CDショップのことを、オッサンがつい「レコード屋」と呼んでしまうようなものか。

 ……と思ったら、映像業界では文字起こしを「スクリプト」と呼ぶ人が多いことを最近知った。「先日の取材のスクリプトが仕上がりましたので、送ります」とか。
 「えっ? スクリプトって台本のことじゃないの?」と違和感。
 映画の撮影現場で、撮影シーンの様子や内容を記録する人を「スクリプター」と呼ぶそうだから、「取材現場の記録」という意味で「スクリプト」と呼んでいるわけか。


 レンタルDVDで、『酒井家のしあわせ』を観た。呉美保監督の、2006年のデビュー作。
 呉美保の『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』がどちらもよい映画だったので、旧作も観てみようと思ったしだい。

 監督の出身地である三重県伊賀市を舞台にしたホームコメディ。もっとも、コメディ色は強くなくて、笑える場面も微苦笑を誘う感じの淡い笑いだ。

 主演の友近と、助演の濱田マリの「関西のおかん」っぷりがもう最高である。
 とくに友近は、じつに素晴らしい女優でもあると思った。何気ないフツーのセリフをしゃべっても、端々がそこはかとなくおかしい。

 途中までは面白く観ていたのだが、ユースケ・サンタマリア演ずる酒井家の主人が家を出ていったホントの理由が明かされるところで、一気にシラけた。あり得ないでしょ、それは。馬鹿馬鹿しいったらない。

 映画としては傑作になりそこねた失敗作だろうが、呉美保の優れた演出力はこのデビュー作からすでに輝いていると思った。とくに、中学生たちの自然な演技を引き出す手腕は素晴らしい。

『怒り』『団地』



 レンタルDVDで『怒り』と『団地』を観た。



 吉田修一の同名小説を映画化した『怒り』は、絶賛している人も多かったので期待して観たのだが、私にはさっぱり面白くなかった。何より、ものすごく後味の悪い、不快きわまる映画だと思った。

 もう少し深みのある人間洞察があるのかと思ったが、どのキャラも薄っぺらい。

 犯人像も、宮崎あおいが演ずる元風俗嬢も、通俗的な紋切り型そのもの。
 「サイコパスの殺人犯って、こんなもんでしょ」「アタマの悪い風俗嬢って、こんなもんでしょ」と、一般的イメージをただなぞっているだけという印象で、キャラに血が通っていない(ただし、宮崎あおいの演技それ自体はよい。体当たりで汚れ役に挑んで、なかなかのもの)。

 終盤のとってつけたような「いい話」調の展開も興醒め。
 とくに、「主要登場人物の1人がじつは心臓に難病を抱えていて……」と最終盤で唐突に明かされる点がひどい。いきなりそっち方面に話を持っていかれても、心の準備ができてないから感動できないのだ。
 もっとも、終盤の展開は原作とは少し違うらしいが(私は原作未読)。

 けなしついでにもう一つ言うと、坂本龍一による音楽も情緒過多で陳腐だと思った。「手クセで書いた曲」ばかりというか、あたかも“2流の作曲家が坂本の作風を真似て作った音楽”みたいなのである。
 かつて『戦場のメリークリスマス』の音楽で見せた独創的な輝きは、まるで感じられなかった。

 「口直しに」と思ってもう一本観てみた阪本順治の『団地』が、これまた輪をかけてクダラナイ映画だった。

 

 「SFコメディ」という触れ込みだが、笑いを狙った箇所の九割方は笑えなかった。主演の藤山直美の演技はいいのだけれど。



『後妻業の女』



 昨日は久々のオフ。思いっきりダラダラとすごす。

 DVDで、『後妻業の女』と『ジョン・ウィック』を観た。どちらも、観終わったあとにはキレイさっぱり忘れることができ、心に余分な夾雑物を残さないエンタメ作品。ダラダラ観にふさわしい。

 『後妻業の女』は、黒川博行の小説『後妻業』の映画化。
 最近頻発している、高齢者の遺産を狙った犯罪を描いたものだが、ブラック・ユーモアが基調になっている点が特徴。私は原作未読なので、どの程度原作に忠実なのかはわからない。



 かつて『黒い家』でぶっ飛んだサイコパス女を怪演した大竹しのぶが、ここでも遺産狙いのサイコパス女を怪演。
 こういう役をやらせたら、日本で彼女の右に出る者はいない。本作でも、いくつかの場面では観る者を圧倒する迫力の熱演を見せる。

 映画としては粗の目立つB級作品でしかないが、大竹や尾野真千子らの演技合戦は楽しめる。
 ただ、トヨエツはミスキャストだと思った。平気で人を殺すような男にはとても見えず、どうしようもなく迫力不足なのだ。

『ミュージアム』



 『ミュージアム』を映像配信で観た。
 巴亮介の同名マンガを、大友啓史監督/小栗旬主演で実写映画化したサイコサスペンス。ストーリーはおおむね原作に忠実だ。 

 基本設定は、デビッド・フィンチャーの『セブン』をあからさまに踏襲している。快楽殺人者による猟奇的連続殺人を描いている点も、主人公の刑事の妻が犯人の標的となる点も……。
 ただし、「たんなるパクリ」と言わせないだけのアレンジと創意工夫が、本作にはある。

 あまり期待せずに観たせいか、意外と面白く感じた。
 まあ、犯人の「カエル男」(妻夫木聡)があまりにも超人的で、たった一人で警察をきりきり舞いさせすぎなので、その点興醒めではある。
 しかし、どのシーンも演出には力がみなぎっているし、国産サイコサスペンスとしてはかなり頑張っているほうだと思う。

 元々演技のうまい尾野真千子(小栗旬の妻役)や松重豊のみならず、小栗旬も意外な熱演で好感を抱いた。
 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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