侍留啓介『新・独学術』



 昨夜は、九段下の「イタリア文化会館東京」で開催された、聖エジディオ共同体主催のフォーラム「共通の未来を構築するために 平和の道を拓こう」を取材。
 「この赤いビルって、前にも来たことあるなァ」と思ったら、前に取材で赴いた角川春樹事務所も同じビルに入っているのだった。

 カトリックのみならず、さまざまな宗教を持つ者同士が集って、死刑廃止など、さまざまな角度から平和について語らうフォーラム。宗教間対話の有意義な試みである。


 行き帰りの電車で、侍留(しとめ)啓介『新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法』(ダイヤモンド社/1620円)を読了。

 帯に推薦文を寄せている佐藤優さんの写真が大きくて、まるで佐藤さんの著書のようだ(笑)。
 本書で開陳される独学術は、大学受験用の学習参考書などを「大人の学び直し」に用いる方法であって、それは佐藤さんが著書で主張している独学術と重なる。本書を佐藤さんが絶賛するのも理の当然なのである。

 つい半月前に当ブログで取り上げた『最強の独学術』(本山勝寛)など、最近独学術の本がよく刊行されている。
 それは、一つにはネットの発達で独学環境が飛躍的に整備されたためであろう。また、AIによる雇用破壊、日本の終身雇用制の崩壊などによって、世のビジネスパーソンが「勉強し続けないと、生き残っていけない」と危機感を強めていることの反映でもあろう。

 『最強の独学術』が受験勉強から生涯学習までの幅広い独学を扱っていたのに対し、本書は明確にビジネスパーソンのための独学術に的を絞っている。

 著者は、参考書を用いたさまざまな独学を紹介するなかで、その学びがビジネスにどのように役立つのかを逐一説明していく。その説明と著者が薦める独学法は、どれも理にかなっていて得心がいく。
 『最強の独学術』もよい本だったが、こちらもかなりの良書である。

 ちなみに、アマゾンの本書のページの下に出てくる「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に並んでいる本は、その多くが本書で著者がオススメしている参考書だ。私もこれらの本を買い揃えたくなった。

本山勝寛『最強の独学術』



 本山勝寛著『最強の独学術――自力であらゆる目標を達成する「勝利のバイブル」』(大和書房/1412円)読了。

 某誌で昨年取材させていただいたこともある、「学びのエヴァンジェリスト」、日本財団パラリンピックサポートセンター・ディレクター、5児の父(!)である著者による独学術の本。

 以前、類書である『東大教授が教える独学勉強法』(柳川範之)を読んだとき、抽象的な心構えばかりが書かれていてガッカリしたものだ。
 対照的に、本書は徹頭徹尾具体的で実用的。「最強の独学術」かどうかはともかく、かなり「使える」本だ。
 
 著者は貧しい家庭に育ち、経済的理由から学習塾や予備校に通うことは一切なく、独学で東大に現役合格。さらに、やはり独学で米ハーバード大学に進んだ経歴の持ち主。
 その経験をふまえて説かれる独学術には、重い説得力がある。

 独学術の本は昔からたくさんあるわけだが、本書の特徴の第1は、ネットの無料講義やブログ等をフル活用した、2010年代後半ならではの独学術が説かれているところ。
 著者も言うように、いまほど独学環境が整った時代はないわけで、効率的な独学術を身につけておくことは、受験生等に限らず、誰にとっても有益だろう。

 特徴の第2は、試験突破など目先の目標のためのみならず、もっと広義の独学術までが射程に入っている点。
 全体が3部に分かれており、「PART2」では「教養を深めて人生の幅と世界をひろげる独学術」が、「PART3」では「一生学び続ける秘訣をつかみ夢を叶える独学術」が説かれているのだ。

 ゆえに、目先に突破すべき試験等がない人であっても、学び続けるために背中を押してくれる本だ。

新谷学『「週刊文春」編集長の仕事術』



 昨日は、取材で湘南の辻堂へ――。

 ついでに上野に足を伸ばし、国立西洋美術館で開催中の「アルチンボルド展」を鑑賞。
 辻堂と上野はけっこう離れているので、「ついでに」という感覚はわかりにくいだろうが、「上野東京ライン」という路線だと辻堂-上野間は一本で行けるのだ。

 夏休みでもあるので来場者が非常に多く、ゆっくり鑑賞できなかったのはちょっと残念だったが、なかなか楽しめた。

 奇想の宮廷画家ジュゼッペ・アルチンボルドの絵は、近くに寄ったときと離れて見たときの印象がまったく違うので、「一粒で二度おいしい」というか、「一枚の絵で二倍楽しめる」感じがする(小学生並みの感想ですが)。 





 行き帰りの電車で、新谷学著『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社/1512円)を読了。
 昨今のスクープ連発で世の注目を浴びる『週刊文春』の現編集長が、自らの仕事術を開陳したもの。

 『週刊文春』におけるスクープの舞台裏が明かされるのはもちろん、編集者として駆け出しだったころからの思い出を振り返っており、ちりばめられたエピソード自体に読み応えがある。
 たとえば――。

 山口組系若頭射殺事件の関連で、ある大物組長の取材をしたときには、こんなこともあった。取材の最後にその組長に写真撮影をお願いすると、「写真十年や」と断られた。「ワシらの世界では、近影が出るとそれだけ的にかけられやすくなるから、寿命が十年縮むんや」というのだ。その取材からまもなく、インタビューした幹部3人のうち2人が射殺されたときには本当に驚いた。



 昨年から今年にかけて続々と刊行された“『週刊文春』本”のうち、私が読んだのはこれが3冊目だが、3つのうちいちばん面白かった。

■関連エントリ
週刊文春編集部『文春砲』
中村竜太郎『スクープ!』

 「仕事術」本としても、編集者の仕事に限らない普遍的なノウハウが多数紹介されている。
 たとえば以下の一節などは、あらゆる営業仕事に通ずる極意だろう。

 1回断られたぐらいであきらめてはいけない。あなたの熱意はその程度のものなのか、ということだ。
 よく現場の人間にも言う。断られたところから俺たちの仕事は始まるんだ、と。「ファーストアタックは失敗だったけど、次はどういう口説き方があるか」を全力で考える。編集者や記者の仕事は、口説く仕事だ。そして、私たちの仕事にはマニュアルがない。「こうすれば口説ける」という答えはない。そこは、みんなそれぞれ考えることしかない。



 また、編集長としてどう人材育成してきたか、編集部の結束力をどう高めてきたかが随所で綴られており、リーダー論・組織論としても価値がある。

 印象に残った箇所を引用しておく。

 職人肌の編集長、デスクほど、「美しい雑誌」を作りたがる。だが、週刊誌は美しさより鮮度。突貫工事でもイキのいいネタを突っ込むべきなのだ。丁寧に積み上げたものを最後にガラガラポンする蛮勇もときには必要なのである。



 伸びる記者かそうでないかを見分けるのは簡単だ。例えば「あれやってくれ」と指示をする。その指示に対して「指示どおりやったけどダメでした」と報告に来る記者は、そこまでだろう。本当に優秀な人間は「言われたとおりやってダメだったけど、こうやったらできるんじゃないですか」と返す。「こうすれば、記事は形になりますよ」「実際、こうやってみました」とくれば言うことなしだ。



 社交辞令で終わらせない。これは、仕事ができる人の特徴だ。何よりスピードがすごい。「○○さん、今度紹介してくださいよ」「いいよ」と言って、その場で電話をかける。「今、俺の目の前に文春の新谷さんって人がいるんだけど、ちょっと今度会ってやってよ。電話代わるから」といきなり電話を渡されるのだ。
 私もデスクや現場から「人を紹介してもらえませんか」と言われたら、なるべくその場で電話をかける。スピード感が大切なのだ。「どうしようかな」とウジウジ寝かせていたらネタは腐ってしまう。



寺尾隆ほか『図書館徹底活用術』



 寺尾隆監修『図書館徹底活用術』 (洋泉社/1620円)読了。

 先日読んだ坪井賢一『その手があったか! 時間がない人のための即効読書術』の巻末に、本書の広告(自社広告)が載っていた。それで興味を抱いて読んでみたしだい。

 監修者は、近畿大学中央図書館に30年間勤務し、おもにレファレンス業務を担当したという人物。現場を熟知するプロの視点から、効率的な図書館利用のコツを教える書である。

 ハマザキカク、南陀楼綾繁ら、図書館ヘビーユーザーのライター・編集者なども寄稿し、独自の図書館活用術を開陳している。

 有益な情報も一部にあるものの、全体的に図書館利用の初心者向けの内容で、仕事柄図書館を使い倒している私には物足りなかった。

 この手の本で私のイチオシは、千野信浩の『図書館を使い倒す!』(新潮新書)である。
 10年以上前に出た本なので情報が古くなっている部分もあるが、いまでも十分に「使える」本だ。

■関連エントリ
久慈力『図書館利用の達人』
井上真琴『図書館に訊け!』 

花村太郎『知的トレーニングの技術』



 花村太郎著『知的トレーニングの技術〔完全独習版〕』(ちくま学芸文庫/1404円)読了。てゆーか再読。
 1980年に別冊宝島の1冊として刊行された名著の文庫化である。



 私はフリーライターになりたてのころ――つまり約30年前に図書館で本書に出合い、強い影響を受けた。
 手元に置いておきたくて、版元の宝島社(当時は「JICC出版局」)に電話で問い合わせたら、「うちにも在庫がありませんし、重版の予定もありません」と言われてガッカリしたものだ(その後、古本屋で見つけて買った)。

 内容の一部が改訂されているとのことなので、文庫版も買ってみたしだい。2015年に文庫化されたものだが、私が買ったものは2016年の第6刷。けっこう売れているのだ。
 文庫の帯には、「あの伝説のテキストがいまよみがえる!」という惹句が躍っている。私同様、本書に影響を受けた人は多かったのだろう。
 有名なブログ「読書猿」の人も、本書に強い影響を受けた一人である。

 花村太郎は筆名で、本名は長沼行太郎という人なのだと初めて知った。
 1947年生まれ。別冊宝島版を書いたころは30歳そこそこだったことになるが、もっと年配の人だとばかり思っていた。文章に風格があったし、すごい博識ぶりが内容からうかがえたから。

 久々に再読してみて、改めて名著だと思った。「知的生産の技術」本としてはもちろん、文章論・読書論・教養論としても高い価値をもつものだ。
 インターネットどころか、ワープロすら一般的でなかった時代の書だから、情報として古びている面もなくはない。それでも、いまでも傾聴に値する卓見が目白押しである。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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