『マンチェスター・バイ・ザ・シー』



 今日は都内某所で取材が一件。ゴーストの仕事なので、お相手等はナイショ。
 これで今月の取材は一段落。今週はひたすら取材内容を原稿化する“アウトプット・ウイーク”である。


 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を映像配信で観た。今年のアカデミー主演男優賞・脚本賞をダブル受賞した作品。



 素晴らしい映画だった。ベン・アフレックの弟ケイシー・アフレックが、深い悲しみを目に宿して、過去に“人生の地獄”を見た男を熱演。主演男優賞も納得の、一世一代のハマり役である。

 兄の死によって、主人公はその地獄を味わった故郷の町――マンチェスター・バイ・ザ・シーに舞い戻らざるを得なくなる。
 そして、兄の遺児である甥っ子と「喪の仕事」の日々を過ごすうち、過去ともう一度向き合うのだった。

 ハリウッド映画の悪い癖が出た場合、主人公は天真爛漫リア充高校生である甥っ子に感化されて明るくなり、過去を乗り越え蘇生して大団円――という感じの展開になっただろう。

 が、この映画はそうした紋切り型に陥らない。“あまりにつらい過去は、どうしても乗り越えられない”という苦い結論が用意されているのだ。それでも、ラストには雲間から一条の希望の光が射し込む。

 町山智浩氏が本作について、「小津安二郎みたいなハリウッド映画」と評していたが、言い得て妙。
 この静謐さ、登場人物の心の揺れ動きをじっくりと描き出す手際は、ハリウッド映画というよりも良質な日本映画を思わせる。

 主人公が元妻(ミシェル・ウィリアムズ)と再会し、言葉を交わすシーン(DVD等のジャケになっている)の、なんと深く胸に迫ること。これは映画史に残る名場面だろう。



 ストーリーの合間に映し出されるマンチェスター・バイ・ザ・シーの街並みが、絵画のように美しい。観客は主人公と同じまなざしで、過去をかみしめるようにその景色を眺めることになるのだ。

『キング・アーサー』



 昨日は、取材で群馬県渋川市の「永井食堂」へ――。



 テレビ等で「日本一のもつ煮の店」としてよく紹介される有名店だが、私はグルメ取材で行ったわけではなく、永井食堂三代の物語を聞く「ヒューマン・ストーリー」的な取材である。

 取材前に私たちも食事。
 「ごはんが山盛りなので、半ライスで十分」と聞いていたので、もつ煮定食を半ライスで頼む。たしかに、半ライスでもどんぶりにすりきり一杯ごはんが盛ってあった。
 とても柔らかく煮込まれたもつ。2種類の味噌をブレンドし、ほどよくニンニクが効いた味付けも絶品。

 平日の午後にもかかわらず、食べる客とおみやげ用のもつ煮(1袋1kgのけっこうな量)を求める客がひっきりなしで、すごい繁盛ぶりであった。「おみやげ、23個」と注文し、ダンボール箱で持ち帰る客もいた。
 もつ煮以外のメニューもあるのだが、私たちがいた間、もつ煮を頼まなかった客はたった一人だけ。


 『キング・アーサー』を映像配信で観た。
 アメリカ・イギリス・オーストラリアの合作で、ガイ・リッチー監督がアーサー王伝説をモチーフとした映画。



 王の血を引くアーサーがスラム街の娼婦たちに拾われて育つという、一種の貴種流離譚になっている。いわば、ストリート感覚で描くアーサー王伝説。
 映画全体も、重厚なファンタジーというより、ロック・アーティストのPVを思わせるポップな感覚で作られている。

 主役のチャーリー・ハナム(『パシフィック・リム』に主演した俳優)は、最初から最後まで王らしい威厳とは無縁で、マッチョなチンピラ兄ちゃんという趣。そこが面白いといえば面白い。
 

『沈黙 -サイレンス-』



『沈黙 -サイレンス-』をDVDで観た。マーティン・スコセッシ監督による、遠藤周作の代表作の完全映画化。


 
 私は恥ずかしながら原作未読。篠田正浩が監督した日本映画版『沈黙』(1971年)も未見。
 もっと退屈な「文芸大作」を予想していたのだが、意外にもドラマティックで起伏に富むストーリーで、2時間40分の長編があっという間だった。

 江戸幕府のキリシタン弾圧を描いた重厚な歴史映画としても、「信仰とは何か?」を突きつめた思索的な人間ドラマとしても秀逸。
 「ハリウッド映画が描く日本」にありがちな珍妙さがなく、日本映画だと言われても信じてしまいそうな自然さ(もっとも、撮影の大半は台湾で行われたらしいが)。

 キリシタンを弾圧する幕府側のイッセー尾形や浅野忠信らは「悪役」ということになるのだが、善玉・悪玉をくっきり色分けするような通俗性はなく、どのキャラクターにも複雑な陰影が与えられている。

『夜に生きる』



 昨日は都内某所で打ち合わせが2件。今日も夕方から取材。何かとバタバタしているが、明日くらいで一段落の予定。


 『夜に生きる』を動画配信で観た。
 主演のベン・アフレックが自ら監督した、禁酒法時代を舞台にしたフィルムノワール。
 


 原作は、クリント・イーストウッドが映画化した『ミスティック・リバー』などで知られる米国のミステリー作家、デニス・ルヘイン。
 少し前に観た『クライム・ヒート』も、ルヘインが原作だった。

■関連エントリ
『クライム・ヒート』
『ミスティック・リバー』

 ルヘインの創る物語は、血なまぐさい中にも静謐な詩情があって素晴らしい。
 本作もしかり。警察幹部の息子に生まれながらギャングとなる主人公の無頼の人生が描かれるのだが、全編に詩情が満ちている。
 撮影も素晴らしく、暴力を描いた場面すら、時に陶然となるほど美しい。

 フィルムノワールといえば、裏社会に生きる男たちの友情が大きなファクターになるものだが、本作はその要素が希薄。むしろ、主人公と3人の女性たちとの関わりに重点が置かれている。

 それぞれが主人公の人生を変えるきっかけになる3人は、キャラクターも演じる女優もタイプが異なるが、三者三様に魅力的だ。

 ギャングのボスの情婦でありながら主人公と恋仲になるエマ(シエナ・ミラー)は、蓮っ葉な中にも哀しさがほの見えるファム・ファタールぶりが絶品。

 主人公の妻となるキューバ出身の女性グラシエラを演ずるゾーイ・サルダナは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでは特殊メイクのために美貌が十分発揮されていなかったが、本作ではエキゾティックな美しさで魅せる。

 哀しい運命をたどる娘・ロレッタを演じるエル・ファニング(ダコタ・ファニングの妹)の可憐さは天使級。とくに、終盤に見せる儚い笑顔が強い印象を残す。

 ストーリーにはやや冗長感があるが、映像の美しさと女優たちの魅力でその欠点が帳消しになる。上出来のフィルムノワールである。

 

『美女と野獣』



 『美女と野獣』を映像配信で観た。
 


 1991年のディズニー・アニメ版『美女と野獣』の、ディズニーによる実写リメイク作品。これって、元はフランスの民話なのだね。

 私はディズニー・アニメ版を観ていないので比較はできないが、なかなか面白かった。

 まあ、基本「おとぎ話」だから他愛ない話ではあるのだが、ヴィジュアルに工夫が凝らされていて、飽きない。ヒロインのベル役のエマ・ワトソンは可愛くて眼福だし。
 
 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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