ジェイソン・マーコスキー『本は死なない』


本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」
(2014/06/19)
ジェイソン・マーコスキー

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 ジェイソン・マーコスキー著、浅川佳秀訳『本は死なない――Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」』(講談社/1728円)読了。

 Amazonの電子書籍端末「キンドル」の開発に、最初期から5年間かかわったという著者による電子書籍本。
 読む側は当然、「中の人」ならではの視点で鋭く本の未来を展望する内容を期待する。

 が、その意味ではかなり期待外れ。これまで何冊か「電子書籍本」を読んでいる人なら、「どっかで聞いたような話」がほとんどだろう。
 私が「へえ」と思ったのは、近い将来に電子書籍の中古販売が実現する、という話くらい。

 全体に構成がダラダラしている。秩序立った形で読書の未来を論じた本というより、電子書籍について筆の赴くままに綴ったエッセイという印象だ。

 自分が開発に携わったキンドルを、「21世紀を代表する発明品になる」と自画自賛するのはご愛嬌としても、どうでもいい著者の自分語りが随所に顔を出すのはウザい。

 それに、著者が描く「読書の未来」の何が素晴らしいのか、私にはいまいち理解できない。

 著者は近い将来生まれる「読書用フェイスブック」が、「Reading2.0」となるのだと主張する。
 「読書用フェイスブック」とは何かというと、1冊の電子書籍から「あらゆる本がリンクでつながり、世界中のすべての本が巨大な一冊を構成する一要素とな」り、「複雑に絡み合うハイパーリンクですべての本がつながる」ようなありようのことだという。

 わかったようなわからないような説明だ。
 たとえば電子書籍を読みながら、ワンクリックで関連情報が調べられたり、同じ本を読んでいるほかの人とつながれたりする仕組みができたとして、それの何が画期的なのか?
 我々はいまでも、読書の途中でパソコンやスマホに向かって同じようなことをしているではないか。

 それに、著者は後半の「読書時の集中力」の項で、その「読書用フェイスブック」のアイデアを自ら否定するようなことも書いている。
 iPadのような汎用端末で電子書籍を読むと、読書しながらついネットを見てしまったりして、読書に集中できないからよくない(趣意)と述べているのだ。
 ほかの本、ほかの人とつながりながら読書できることが「Reading2.0」ではなかったのかw?

 この一例が示すように、全体にとっちらかった内容の駄本。

武井一巳『Kindle新・読書術』


Kindle 新・読書術 すべての本好きに捧げる本Kindle 新・読書術 すべての本好きに捧げる本
(2013/01/25)
武井 一巳

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 武井一巳著『Kindle新・読書術――すべての本好きに捧げる本』(翔泳社/1344円)読了。

 IT分野にくわしいジャーナリストで、第2世代キンドル(初代は日本では買えなかった)からのヘビーユーザーであるという著者が書いた、キンドルの楽しみ方入門。キンドルを使った読書についてはもちろんのこと、それ以外の便利な機能についてもくわしく解説されている。

 また、アマゾンでの電子書籍自費出版である「キンドル・ダイレクト・パブリッシング」(KDP)についても、一章が割かれている。私はKDPで本を出してみようと思っているので、この章で概要がつかめたのはよかった。

 ただし、本書で扱っているのは「キンドル・ペーパーホワイト」のみ。Androidタブレットである「キンドル・ファイア」にはほとんど言及されていない。

 細かい機能についてまで懇切丁寧に紹介されていて、キンドル購入前に読んでおいて損はない本だ。

 かくいう私も本書を読んで背中を押され、「キンドル・ペーパーホワイト3G」をポチった。
 ご多分にもれず私も本の収納には悩まされてきたから、今後はできるだけ電子書籍で買おうと思う。

 KDPについては本書の1章のみでは不十分だと思うので、ほかに解説書を買うつもり。それについてはまたエントリを改めて。

 ところで、佐々木俊尚が書いた「ネオヒルズ族は稼げてライターは稼げない 情報産業でメシを食うのに必要なこと」という「日刊サイゾー」の記事は、たいへん身につまされるものだった。

 ライターの多くが、「いまは食えているけど、5年後に同じように食えているとはとても思えない」と感じていることだろう。私もその一人。
 それで、既成の雑誌や書籍以外の食い扶持をみんなが探しているわけだが、いまのところ誰にも「これだ!」という決め手が見つからない。

 相場の安いウェブメディアの原稿料だけでは、とても食っていけない。有料メルマガなどの個人メディアで食っていけるのも有名人だけ。アフィリエイトで稼げるのは小遣い銭程度……。
 けっきょくは、いろんな方面に手を広げ、少しずつリスクヘッジしていくしかないのだろう。ライター以外の仕事との兼業も、今後はあたりまえになっていくはずだ。

 KDPだけで生活している人は日本にまだ一人もいないはずだが、近い将来、少なくとも収入源の一つにはなり得るだろう。そう考えて、暗中模索しているしだい。

山田順『出版・新聞 絶望未来』


出版・新聞絶望未来出版・新聞絶望未来
(2012/11/02)
山田 順

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 山田順著『出版・新聞 絶望未来』(東洋経済新報社/1575円)読了。
 タイトルどおりの内容で、出版界の片隅に身を置く者としてはお先真っ暗な気分になる本(笑)。

 光文社の元編集者であるこの著者の本は、電子書籍ブームに冷水をぶっかけた『出版大崩壊――電子書籍の罠』(2011)を読んだことがある

 本書は、『出版大崩壊』の続編ともいうべきもの。低迷する出版業界の救世主とも思われた電子書籍ブームも(日本では)不発に終わり、ジリ貧状態がつづく現状を、各種データと現場の声から浮き彫りにしている。

 とにかく、明るい話がほとんど出てこない。
 明るい話は、『日本経済新聞』の有料電子版が意外に健闘していることくらい。もっとも、健闘といったって、2年かけて有料購読者が20万人に達したというだけのこと。紙版の発行部数に比べたら微々たる数字である。

 まあ、本書に出てくる“出版・新聞をめぐる暗い話”の多くは、業界人ならどこかで耳にしていることでしかない。
 ただ、本書のように暗い話ばかり集めて見せつけられると、さすがにすごい迫力で、心中に暗雲が立ち込める気分になる。たとえば――。

 出版界の売り上げも1996年に過去最高の2兆6563億円を記録してからは、下降の一途となり、毎年、500億~1000億円減り続けてきた。
(中略)
 新聞、出版というプリントメディアが、これまでと同じように毎年1000億円縮小していくと、どうなるだろうか? 単純に言って、20年でゼロになってしまう。2032年には、プリントメディアは完全に消滅してしまうことになる。



 そして、それに代わる電子書籍も、日本ではいっこうに普及が進んでいないのである。
 たとえば、雑誌『論座』を休刊し、有料電子雑誌『WEBRONZA』を立ち上げた朝日の関係者が明かす内幕――。

「ひどいときは有料会員数が500人に達していませんでした。それも多くは朝日関係者だったので、純粋な部外読者はおそらく200人くらいだったのではないでしょうか? それでも1年以上かけて、なんとか3000人ほどになったといいます。ただ、赤字」



 朝日でさえそんなありさまなのだ。

 ほかにも、「アメリカの新聞を支えているのは広告収入だが、アメリカ全新聞の広告収入はグーグル単体にさえおよばない」とか、聞き捨てならぬ暗い話が目白押し。

 10年後に、私たちフリーライターのうち何割が生き残っているだろうか?

 私はときどき当ブログの検索フレーズを見てみるのだが、このところ目立つのが、「ライター 仕事がない」「ライター 廃業」という検索フレーズでやってくる人。つくづく不景気な業界なのである。
 いまのうちにカタギになってトラック転がすか、田舎に帰ってトマトでも作ったほうが賢明かもしれない。
 ま、私にはライター以外の仕事はできないし、郷里に田畑もないので、最後までこの業界にしがみつく所存ですが……。

野村総合研究所『2015年の電子書籍』


2015年の電子書籍2015年の電子書籍
(2011/03/18)
野村総合研究所

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 今日は都内で打ち合わせが一件。 

 行き帰りの電車で、野村総合研究所(前原孝章・川元麻衣子・石田樹生)著『2015年の電子書籍――現状と未来を読む』(東洋経済新報社/1785円)を読了。

 東日本大震災勃発とほぼ同時期に刊行されたため、まるで話題にならなかった不運な本。大震災の衝撃で、電子書籍本(=電子書籍をテーマにした紙の本)ブームなんかどっかいっちゃったからである。

 読んでみれば、電子書籍本としては悪くない出来だ。
 野村総研が作った本なのでもろ「白書」「レポート」っぽい作りで、文章は無味乾燥。佐々木俊尚の『電子書籍の衝撃』のような面白みはまるでない。

 しかし、大手シンクタンクならではの機動力と情報収集力を駆使したデータと分析は詳細で、資料的価値は高い(とくに、第6章の電子書籍市場の日米比較は読みごたえ十分)。
 佐々木俊尚や西田宗千佳の本が、一人で書いたがゆえに「葦の髄から天上を覗く」趣なのに対し、本書は大がかりな調査のもとにまとめられているため、より鳥瞰的・大局的なのだ。

 「教育分野における電子化」「法人内での電子書籍」などという章もある。これらは既成の電子書籍本にはなかった切り口で、本書の独創といえる(私には関心のない領域だけど)。

 私にとっていちばん面白かったのは、最後の第Ⅲ部「電子書籍市場の今後と関連業界への影響」。
 書名にある2015年――4年後の至近未来の電子書籍市場を予測したパートで、未来に希望のもてる内容になっているのだ。

 現時点ではまったく「商売になっていない」日本の電子書籍だが、本書では次のような市場の拡大が予測されている。

 弊社で実施したアンケートをベースに市場規模予測を行った結果、国内の電子書籍コンテンツ市場規模(書籍・雑誌・新聞等の文字コンテンツ)は2015年には250億円を超えると期待される。



 取次業界については、「電子書籍により15%の売り上げ減少がもたらされるとすると、大手3社ですら利益がほとんど出ない構造に陥る可能性がある」と、厳しい未来を予測している。対照的に、出版社については意外に明るい未来を描いているのだ。

 (電子書籍の場合)一点一点の書籍の単位で考えると、損益分岐点は大きく下がると考えられる。すなわち企画数(新刊の数)をさらに増やすことが可能になる。
(中略)
 また、電子書籍化にともない、これまで出版社が取っていた在庫リスクがなくなる(返品の負担を考えなくて良くなる)。したがって、これまで「売れないかもしれない」ということでお蔵入りしてきた企画の出版や、コンテンツの海外販売を実現しやすくすることができる(翻訳のコストはかかってしまうが)。出版した書籍がヒットするかどうかは、ベテラン編集者にも見極めが難しく、しばしば博打にもたとえられる。新刊の数を低リスクで増やせるというのは、出版社のビジネスにとってプラスに働くと考えてよいと思われる。
 また、電子書籍化により書籍の保管にかかる費用が下がるため、絶版という概念を排することができるので、過去の資産(絶版本)を売上げに変えることも可能である



 これらは従来の類書でも挙げられていたことだし、“電子書籍が売れる時代”になって初めて享受できるメリットでもある。が、改めてデータをふまえて白書っぽく言われると、説得力がある。出版社にコバンザメして生きている身としては、希望が湧いてくるのである。

山田順『出版大崩壊』


出版大崩壊 (文春新書)出版大崩壊 (文春新書)
(2011/03/17)
山田 順

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 山田順著『出版大崩壊――電子書籍の罠』(文春新書/840円)読了。

 著者は光文社に34年間勤め、雑誌と書籍それぞれの第一線を経験してきたベテラン編集者。話題を集めたブログ「リストラなう!」の主「たぬきち」と同時期に同社の希望退職(昨年)に応じ、その後は電子書籍出版ビジネスに挑戦したものの、失敗したという。

■参考→ 「たぬきち」氏がブログで本書に言及したエントリ

 つまり、「電子書籍元年」とも呼ばれた2010年に、実際に電子書籍ビジネスの最前線に身を置いたベテラン編集者が、その経験をふまえた書いた電子書籍本なのだ。
 そういう経緯ゆえ、昨年来続々と刊行された一連の電子書籍本のうち、最も悲観的・絶望的な内容になっている。

 私も電子書籍本は何冊も読んできたが、困ったことに、いちばん悲観的な本書にいちばんリアリティを感じた。なにしろ、著者は電子書籍の可能性に一度は人生を賭けた人物なのだから、本書の悲観論には重い裏付けがあるのだ。旧世代の出版人がたんなる感傷から、「電子書籍にはぬくもりがない」とか言ってくさすのとはわけが違う。

 全11章のうち、1~3章はひどく退屈。電子書籍の歴史や、キンドルやiPadをめぐる騒動の経緯などがまとめられているのだが、従来の電子書籍本に書いてあることのくり返しでしかない。そのへんのことをすでにわかっている読者は、読み飛ばすべし。

 が、4章以降は著者の経験をふまえた生々しいエピソードが随所にちりばめられ、俄然面白くなる。

 ……いや、「面白い」といってはまずいか。なにしろ、4章から11章にさまざまな角度から書かれているのは、“雑誌・書籍・新聞といったプリント・メディアにいかに未来がないか”という話なのだから。

 ただでさえジリ貧の出版界は、現在、電子書籍に新たな収入源としての希望を託している。だが、著者は「電子出版がつくる未来」は幻想にすぎず、むしろ電子書籍の普及が出版社のクビを絞めることになると説く。
 そうした見立ての具体的根拠については本書に譲るが、いずれも私にはうなずける指摘ばかりだった。

 出版社も新聞社も自前のコンテンツのデジタル化を進めれば進めるほど、収益は上がらなくなっていく。そうして、その混乱のなかで、既成メディアを支えてきた多くの人間が失業する。
 すでに、出版界も新聞界も人間のリストラに入っている。正社員はもとより、デザイナー、カメラマン、フリーライターは、いまこの時点でもどんどん職を失っている。
 それを電子書籍が救ってくれるはずがない。(「はじめに」)

 

 フリーライターの1人としては、日頃漠然と感じている「先細り感」に具体的な裏付けが与えられていくようで、読んでいて気の滅入る本なのだが(笑)。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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