池谷裕二『できない脳ほど自信過剰』



 昨日は取材で神戸へ(日帰り)――。

 行き帰りの新幹線で、池谷裕二著『できない脳ほど自信過剰』(朝日新聞出版/1512円)を読了。

 『週刊朝日』連載のコラム「パテカトルの万能薬」の単行本化第2弾である。第1弾の『脳はなにげに不公平』よりも、さらに面白さが増している気がする。

■関連エントリ→ 池谷裕二『脳はなにげに不公平』ほか

 このシリーズは、脳科学、心理学、行動経済学などさまざまな分野の最新研究を紹介し、その研究結果から著者が考えたことを綴っていくサイエンス・コラム集である。
 最先端の研究に触れられてためになるし、池谷さんの考察にもヒネリがあって、目からウロコが落ちまくる。一つのコラムにつき、少なくとも一箇所は「へーえ!」という驚きがある感じ。

 バラエティ豊かな内容だが、通底するテーマは「脳という装置をどんなふうに考えたらよいのでしょうか」(「はじめに」)であり、さらにその奥にある共通テーマは「人間とは何か?」である。

 サイエンス・コラム集としてのクオリティは抜群だが、一つだけ難を言えば、このタイトルはなんとかならなかったものか?
 ぱっと見では意味がわからないし(本文中のあるコラムの内容をふまえたものなのだが)、読書意欲がまったくそそられない。タイトルで損をしていると思う。

築山節『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』ほか



 昨日は、脳神経外科専門医の築山節(たかし)さんを取材。築山さんが所長を務める北品川クリニックにて。私はお盆期間も「絶賛仕事中」である。

 このブログ内を検索してみたところ、前回築山さんを取材したのは8年前の2009年のこと。品川から一駅先なのにまったく目立たない北品川駅で降りるのも、8年ぶりだ。

 築山さんの最新著作『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』(集英社)、『脳神経外科医が教える「疲れない脳」の作り方』(PHP新書)を読んで、取材に臨む。

 2つのうち、『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』はとくによい本であった。
 これは、累計57万部突破のベストセラーとなった築山さんの旧著『脳が冴える15の習慣』をふまえた続編ともいうべき本で、タイトルのとおり認知症予防に重点を置いた内容。

 「予約のとれない認知症外来の名医」(帯の惹句より)である築山さんの、長年の診療経験をふまえた、いわば“現場で磨かれた脳科学”の卓見が満載だ。

■関連エントリ
築山節『脳が冴える15の習慣』
築山節『脳から変えるダメな自分』

池谷裕二『脳はなにげに不公平』ほか



 昨日は、東大で脳科学者の池谷裕二さんを取材。
 東大本郷キャンパスは、ちょうど桜が満開。昨日はポカポカ陽気でもあり、そのまま花見になだれ込みたくなったが、お花見気分だけ味わってガマン。

 池谷さんを取材するのは8年ぶりだ。
 現時点の最新著作『脳はなにげに不公平――パテカトルの万脳薬』(朝日新聞出版/1404円)と、2012年刊行時に買ったが積ん読してあった『脳には妙なクセがある』(扶桑社/1728円)を読んで、取材に臨む。

 2冊とも、脳科学および隣接分野の最新トピックを紹介しつつ、「脳科学の視点から見て『よりよく生きるとは何か』」を考察したサイエンス・コラム集である。
 科学読み物としての知的興奮と、その底にある哲学的な深みのバランスが素晴らしい。面白くてためになる。

菅原洋平『すぐやる!』



 ジョン・ウエットン逝去――。
 昨年来、キース・エマーソン、グレッグ・レイクと、プログレ・レジェンドの訃報がつづくなあ。

 ジョン・ウエットンといえば、ロックファン一般には「エイジアのフロントマン」というイメージだろうし、プログレファンという狭い領域でいうと「第二期キング・クリムゾンの顔」というイメージだろう。
 が、私にとっては何よりも、「UKの中心者」としてのイメージのほうが大きい。私自身がロックを聴き始めた時期が、ちょうどUKの活動期に重なるからだ。

 ジョン・ウエットンはもちろん名ベーシストだが、やはりヴォーカリストとしての印象のほうが強い。彼の声自体がすごく好きだった。
 「キミタチ、サイコダヨ!(君たち、最高だよ)」――UKの日本公演を収めたライヴ盤『ナイト・アフター・ナイト』での、ジョンのたどたどしい日本語のMCを思い出す。

 ジョンのヴォーカルが冴え渡る、私のお気に入り曲を貼っておく。R.I.P.









 昨日は取材で永田町の衆院第二議員会館へ。で、今日は参院議員会館へ。

 今週は、月曜から金曜までずっと取材がつづく。
 まあ、たまにはそういうこともある。我々フリーランサーにとって、「仕事がないつらさ」に比べれば、「忙しいつらさ」など、つらさの範疇にも入らない。

 行き帰りの電車で、菅原洋平著『すぐやる!――「行動力」を高める“科学的な"方法』(文響社/1490円)を読了。
 リハビリテーション専門の作業療法士である著者が、仕事上の経験をふまえ、「後回しにせずにすぐやる力」を高める方法を開陳した本。

 類書は心理学者や脳科学者によるものが多いなか、作業療法士の目線から見た「行動力を高める方法」が説かれている点がユニークだ。
 本の企画としてはよいと思うが、内容はどうということのないものだった。

 この手の本のマイベストワンは(何度も書いているが)、先延ばしの研究をライフワークとしてきたカナダの心理学者、ピアーズ・スティールが書いた『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』である。同書を超える本はいまだにないし、本書など足元にも及ばない。

 本書は、脳科学の専門用語を随所にちりばめて信憑性を高めようとしているが、著者は脳科学の研究者でもないし、「どこまでホントなのかね?」と話半分で読んだ(偏見と言われれば偏見だが)。
 
 まあ、著者の書いている「コツ」の中に、納得のいくものもある。
 たとえば、「使ったものは元に戻す」とか、テレビなどのリモコンの定位置を決めておき、そこにいつも置いておくということが、「すぐやる力」を高めるために意外に重要だ、ということ。

 これは要するに、ルーティンでない行動は、ささいなこと(リモコンがどこに行ったか探すなど)でも脳に負担をかけるから、日常生活をできるだけルーティン化しておき、なすべき行動に振り向ける余力をキープしておけ、ということだろう。

 凡事徹底、ささいなことの積み重ねが大きなことを成し遂げるために大切だ、というのはそのとおりだ。
 でも、それは類書(たとえば、脳神経外科医・築山節氏の著書など)にもよく出てくる話で、著者の独創というわけではない。

 本書はよく売れているようだが(「8万部突破」という電車内広告を見た)、「後回しにせずにすぐやる力」を高める方法を知りたい向きには、『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』のほうを断然オススメする。

中野信子『サイコパス』



 昨日は都内某所で、取材兼打ち合わせが一件。
 行き帰りの電車で、中野信子著『サイコパス』(文春新書/842円)を読了。

 文春新書は、タイトルに飾り気やアクがなさすぎて損をしていることが多い。本書も、あまりにそっけないタイトルだ。まあ、逆にそのそっけなさを「潔い」と感じる人もいるだろうが。

 本書は、本文の前に構成者の名が明記されている。ライターの飯田一史氏が中野さんにインタビューして話をまとめたものなのだ。一般読者はそういうことを意識しないだろうが、私は仕事柄、構成者が気になる(ライターが構成した本であっても、構成者の名は出さないケースも多い)。
 本書の飯田一史氏は、じつにうまいまとめ方をしていると思う。

 これは、サイコパスの概説書として上出来な本だ。
 サイコパスの概説書としては、ロバート・ヘアの『診断名サイコパス』や、マーサ・スタウトの『良心をもたない人たち』あたりが、すでに「定番」としてある。ただ、2冊とも10年以上前の本だから、その後のサイコパス研究の進展がフォローされている本書のほうが、いまから読む最初の概説書としてはふさわしいだろう。

■関連エントリ→ マーサ・スタウト『良心をもたない人たち』

 心理学・脳科学を中心としたサイコパス研究の成果が手際よくまとめられており、読み物としてもなかなか面白くできている。
 著者の中野さんは脳科学者だから、第2章「サイコパスの脳」が、本書の「ウリ」ということになろう。

 ただ個人的には、「なぜ人類のなかにサイコパスのような個体が、一定の割合でいるのか」を考察した第4章「サイコパスと進化」を、いちばん面白く読んだ。

 サイコパスが淘汰もされず、爆発的に増えることもなく、一定の割合(研究によって幅があるが、だいたい1%前後)でいるということは、“人類という種の繁栄のためにサイコパスが必要だった”ということになる。
 その必要性とはなんだったのかを探っていくうちに、「なぜ人類は『心』を持つようになったのか?」を解く鍵につながっていく……という展開がスリリングである。
 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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