鈴木賢志『日本の若者はなぜ希望を持てないのか』



 昨日は、都内某所で打ち合わせが一件。今日もまた打ち合わせが一件。で、水・木・金はそれぞれ別の取材。


 鈴木賢志『日本の若者はなぜ希望を持てないのか――日本と主要6ヵ国の国際比較』(草思社/1620円)読了。

 2013 年に日本および海外6ヶ国(アメリカ、イギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国)で実施された若者の意識調査(内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」)で、日本の若者の「希望度」(将来に対して希望を抱いている度合いなど)が、他の6ヶ国に比して著しく低かった。
 なぜ、日本の若者はそれほどまでに希望を持てないのか? 明治大学教授の著者が調査結果を深掘りし、独自の考察も加えてその答えに迫った一冊。

 いいかげんな印象で語る若者論ではなく、きちんとした論拠に基づいた「いまどきの若者」論として、読み応えがある。たとえば――。

 「いまどきの日本の若者は、政治に対する関心がものすごく低い」と私たちは思い込んでいるが、若者の政治に対する関心が最も低いのは、じつはスウェーデンだという。
 ところが、スウェーデンの若者の選挙投票率は80%超と、日本の若者よりも圧倒的に高い。なぜ、政治に関心がないスウェーデンよりも、日本の若者の投票率は低いのか? その謎解きを通して、著者は若者の政治意識に肉薄していく。

 また、若者論の枠を超え、日本社会論・日本文化論として読める部分もある。
 たとえば、日本が“格差が目立ちにくい社会”である理由として、著者は次のように指摘する。

 日本人は裕福でも貧しくても、そのことがあまり世間で目立たないようにしたがる傾向がある。たとえば、これはリーマンショックの直後に不動産業者の人から聞いた話であるが、世の中が不景気になると、自分にお金があっても高額な物件を買い控える人が多いそうだ。また逆に自分が貧しくても、それをアピールして他人や政府から支援を引き出そうとするのではなく、そのことを恥として、世間に悟られないようにする傾向がある。



 このあたり、阿部謹也の「世間論」や、日本の生活保護捕捉率の低さの背景にある「恥意識」との関連で考察を広げてみたい気がする。
 
 「一つの意識調査から一冊の本を作るなんて、ずいぶん水増しだなァ」というマイナスの印象を抱いて読み始めたのだが、読んでみればすこぶる面白い若者論に仕上がっている。

原田曜平&日本テレビZIP!取材班『間接自慢する若者たち』

間接自慢する若者たち

間接自慢する若者たち
著者:原田曜平
価格:1,512円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る



 原田曜平&日本テレビZIP!取材班著『間接自慢する若者たち――ZIP!発!!若者トレンド事典 』(KADOKAWA/1512円)読了。仕事の資料として。

 テレビ番組『ZIP!』のワンコーナー「アレナニ?」の書籍化。マーケッターの著者が、最新の若者消費事情を伝えるコラム集である。

 タイトルの「間接自慢」とは、おもにSNS上で行う“遠回しなリア充自慢”のこと。

 いまどきの若者たちは、ツイッターやフェイスブックなどで「直接自慢」(カノジョとのツーショットや、カレシからもらったプレゼントの写真を載せるなど)をすると仲間の反感を買うので、「間接自慢」をする。
 たとえば、ディナーの料理を写した写真にさりげなくカレシの体の一部を写し込ませるとか、プレゼントの包みが隅っこにちょっとだけ「見切れる」ようにしておくとか……。
 すると、友人はそれを見て「ほんとうに自慢したいこと」を鋭く察知し、リアクションしてくれるのだとか(笑)。

 いまの若者たちというのは、なんとまあ面倒くさいというか、大変ですね。

 そのほか、若者の間のさまざまな流行現象が紹介されていて面白く読んだが、「私には一ミリも縁のない世界だなァ」と疎外感を感じてしまった。本書に出てくるのはリア充世界の出来事ばかりだから、リア充でない若者が読んでも同じように感じるだろう。

中川淳一郎『夢、死ね!』


夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘 (星海社新書)夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘 (星海社新書)
(2014/07/25)
中川 淳一郎

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 木、金と、取材で長野県へ――。塩尻市と諏訪市を回る。
 今月は、珍しく地方に泊まりがけの取材が多い。最近は地方取材でも日帰りが多かったので、泊まりだと気分転換になってよい。なにせ、家から出ない日も多い仕事だから……。


 中川淳一郎著『夢、死ね!――若者を殺す「自己実現」という嘘』 (星海社新書/886円)読了。
 
 『ウェブはバカと暇人のもの』以来、ネットの負の側面に的を絞った著書を出しつづけてきた著者が、こんどは仕事の負の側面に光を当てた仕事論である。

 2010年に出た『凡人のための仕事プレイ事始め』(文藝春秋)を改題し、加筆したものだが、タイトルは今回のほうが断然いい(「夢、死ね!」は、元本でも章題の一つ)。
 てゆーか、元本のタイトルではなんの本だかさっぱりわからない。文春は書籍のタイトルづけがヘタで損をしている出版社だと思う。

 『ウェブはバカと暇人のもの』は、梅田望夫の『ウェブ進化論』への“アンサーブック”であり、ダーク・ヴァージョンであった。同様に、本書は世にあふれる“自己啓発系仕事礼賛書”に対するアンチテーゼの書であり、ダーク・ヴァージョンといえる。
 「がんばれば夢はかなう」「仕事を通じて自己実現できる」という、いわば「自己啓発書イデオロギー」に、思いっきり冷水をぶっかけ、仕事についてホンネで論じた書なのである。

 マスコミ、テレビ業界、広告業界など、華やかに見える業界であっても、仕事の現場というものがいかにクダラナイ力学で動いているかが、著者の経験をふまえた印象的なエピソードを通して明かされていく。
 とくに、ライター業界のトホホ話の数々は、同業者として大いに身につまされた。

 ライター、ミュージシャン、作家、アーティスト、お笑い芸人など、一般に「クリエイター」としてくくられがちな職業を目指す若者の多くが、「がんばれば夢はかなう」「仕事を通じて自己実現できる」という幻想に振り回され、人生をしくじっていく。そうした若者たちに、現実の厳しさを知らしめる良書である。

 私が身を置くライター業界について言えば、「自己表現をしよう」などと思ってライターになりたがる若者というのは、じつに困った存在である。

 たしかに、ライターの仕事にはクリエイティブな側面もないではない。だが、ライターというのはクリエイターである以前に一種の「サービス業」であって、クライアントの求めるサービスを提供できることが何よりも重要だ。「自己表現」をするのは作家センセイの仕事であって、ライターの仕事ではないのだ。

 「自己表現をしたい(=自分のことを書きたい)」と考えてライターになりたがる若者は、そのへんがまるでわかっていない。ゆえに、多くの場合「使えない」のである。
 本書に登場する、文章はすごくうまいのに「使えない」ライターの事例に、「あー、あるある」と大いにうなずいた。

 才能よりも良好な人間関係を作れるか否かが仕事では重要

 

 ……という本書の一節は、至言だと思う。

 私のようなオッサンには笑えて共感できる本だが、“夢を目指すプロセス真っ只中”の若者諸君にとっては、ショッキングで苦い本かもしれない。

■関連エントリ
中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』レビュー
中川淳一郎『今ウェブは退化中ですが、何か?』レビュー
中川淳一郎『ウェブを炎上させるイタい人たち』レビュー
中川淳一郎『ネットのバカ』レビュー

原田曜平『ヤンキー経済』『さとり世代』


ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)
(2014/01/30)
原田 曜平

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 昨日は、取材で愛知県日進市へ――。

 行き帰りの新幹線で、原田曜平著『ヤンキー経済――消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)『さとり世代――盗んだバイクで走り出さない若者たち』(角川oneテーマ21新書)を読了。仕事の資料として読んだもの。

 博報堂の「若者研究所」でリーダーを務め、最近はテレビの「ZIP!」のコメンテイターとしても知られる著者が、日頃の研究をふまえて「いまどきの若者」の素顔を紹介する2冊。

 前者はいわゆる「マイルドヤンキー」(著者はこの概念の提唱者)の世界に踏み込んだもので、後者は大学生たちへの取材から「さとり世代」の実像を解き明かしたもの。
 マイルドヤンキー層がおおむね中卒・高卒で、後者に登場するのは上位ランクの大学生たちであるから、2冊を併読することで「いまどきの若者」の全体像が見えてくる。

 2冊が扱う若者たちはおよそ「階層」が異なるわけだが、読後の印象は不思議なほど似通っている。それは、「いまどきの若者って、ずいぶんこぢんまりと落ちついちゃってるんだなあ」という印象だ。

 マイルドヤンキーたちは、昔のヤンキーたちのように「BIG」になることを目指さず、生まれ育った地元の世界でこぢんまりと生活している。
 「さとり世代」の大学生たちも、分不相応な野心など抱かず、バブル世代のような見栄消費もしない。
 いわゆる草食系男子だけが「草食化」しているのではない。ヤンキーも、若い女の子たちも「草食化」傾向にあるのだ。

 実際のマイルドヤンキーたち、さとり世代の大学生たちの発言のいくつかに、目からウロコの落ちる思いを味わった。たとえば――。

 メリット、デメリットで考えると、恋愛のメリットがよくわからない。

 盗んだバイクで走り出したい欲望っていうのが、何を求めての欲望なのか、さとり世代にはよくわからないです。

 今は海外も日本も、生活様式って大して変わらない。景色しか変わらないんだったら別に(海外に)行かなくてもいいかなって思っちゃうんですけど。(『さとり世代』より)



 「日の出(町)の若者にとって、イオンは夢の国。イオンに行けば、何でもできるんです」

 「給料が5万円上がれば、生活満足度が100点になる」(『ヤンキー経済』より)



 ううむ……。

 私は、若いころの自分が「草食系男子のハシリ」だったと思っている。自動車にもブランドものにもまったく興味がなかったし、自分が若者だったバブル時代にはバブル的消費に熱狂する同世代が理解できなかった。
 だから、草食系男子たちにはわりとシンパシーを覚えるのだが、そんな私でさえ、いまどきの若者の“こぢんまり感”には驚かされた。

■関連エントリ→ 原田曜平『近頃の若者はなぜダメなのか』レビュー

瀧本哲史『君に友だちはいらない』


君に友だちはいらない君に友だちはいらない
(2013/11/13)
瀧本 哲史

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 瀧本哲史著『君に友だちはいらない』(講談社/1785円)読了。

 京大客員准教授で投資家の著者が、ベストセラーとなった『僕は君たちに武器を配りたい』につづいて、若者たちに“これからの社会で上手に生きていく方法”を説いた本。
 『僕は君たちに武器を配りたい』はオッサンの私が読んでも面白かったので、本書にも手をのばしてみた。

 今回のテーマは、「チームアプローチ」論。若者が起業などをするにあたって、どのようにチームを作り、運営していったらよいかが説かれている。
 カバーに『七人の侍』のワンシーンが用いられているのは、あの映画に「チームアプローチ」の一つの理想型が描かれている、と著者が考えるゆえである。

 そういう本が『君に友だちはいらない』というタイトルであるのはなぜか? 本書の最終ページにはこんな一節がある。

 夢を語り合うだけの「友だち」は、あなたにはいらない。
 あなたに今必要なのは、ともに試練を乗り越え、ひとつの目的に向かって突き進んでいく「仲間」だ。
 SNSで絡んだり、「いいね!」するだけの「友だち」はいらない。
 必要なのは、同じ目標の下て、苦楽をともにする「戦友」だ。



 しかし、いまどきの若者がもっぱら大切にしているのは、そういう「友だち」のほうであろう。「友だち」がどれほど多くても、これからの人生を切り拓く力にはならない。だから、「友だち」とのつきあいに力を注ぐより、「仲間」「戦友」を作れ、と著者は言うのだ。

 随所に興味深いエピソードがちりばめられ、読み物としてクオリティが高い本である。
 ただ、基本的に若者向けに書かれているうえ、フリーランサーである私はそもそも「チームアプローチ」とほぼ無縁だ。ゆえに、あまり参考にはならなかった。

 起業を目指す大学生とかが読めば、得られるものも多い本だと思う。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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