2016年に読んだマンガBEST10



 大晦日の今日は、2016年BEST10の第3弾として、マンガのBEST10を。

 基準は、「現在連載中の作品で、昨年までのBESTには選出していなかったもの」。タイトルをクリックするとレビューに飛びます。

 
たーし『ドンケツ』

南勝久『ザ・ファブル』

佐々大河『ふしぎの国のバード』

日暮キノコ『ふつつか者の兄ですが』

鈴木良雄『フルーツ宅配便』

オジロマコト『猫のお寺の知恩さん』

施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』

高野ひと深『私の少年』

山田胡瓜『AIの遺電子』

松田奈緒子『重版出来!』 関連エントリ(ドラマ『重版出来!』最終回)
――これまでも『月刊スピリッツ』で読んではいたが、テレビドラマ版にハマったのを機にコミックスを買い揃えた。「ドラマも込み」で考えるなら、私の本年ベスト1作品ということになろうか。

■次点
稚野鳥子『月と指先の間』 

2015年に読んだマンガBEST5



 大晦日の夜から風邪で熱を出してしまい、けっきょく、三が日ずっと寝床で過ごす羽目に……。
 酒を飲むのはおろか、食欲もなかったのでほぼ絶食状態。今日測ってみたら体重が2キロ減っていた(それでも2キロしか減らないのな)。
 まだちょっとふらふらするし、喉も痛いのだが、明日には今年初の取材もあるし、今日からそろそろ起き上がったしだい。

 「くっそー、自分史上最悪な年明けだぜ!」と思った。だが、考えてみれば4日間連続で完全に休んだのなんて、10年ぶりくらいである。最近はろくに休みもない状態がずっとつづいていたから、「三が日くらいゆっくり休ませろ!」とカラダが悲鳴を上げたのであろう。
 正月だったおかげで仕事に穴をあけることもなかったし、「体を休められたので結果オーライ」と考えよう。

 そんなわけで、今日やっと年賀状を書きます(三が日に届いた分の返事)。賀状下さった方々、スミマセン。


 年明け一発目は、2015年に読んだマンガBEST5を選んでみた(BEST10にするほどは新作をたくさん読まなかったので)。

一ノ関圭『鼻紙写楽』
――ほかの4作は順不同だが、これだけはダントツのマイ・ベストワン。「昨年のベスト」というより、すでにしてマンガ史上に残る名作。願わくば、何年でも待つからきちんと完結させてほしい。

田辺剛・カリブsong『サウダージ』
――薫り高い絵とストーリーで、古典のような風格を漂わせる好短編集。

蛇蔵『決してマネしないでください。』
――惜しくも最近完結してしまったが、じつに楽しい「大人の学習マンガ」であった。私はこの作品で蛇蔵のファンになってしまった。

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』
――「どんどん題材がマニアックになっていく」という、最近の歴史マンガの傾向(フス戦争を描いた『乙女戦争』とか)を象徴する作品。元冦を描くに当たって、対馬での攻防に的を絞っているあたりがマニアックである。

竹良実『辺獄のシュヴェスタ』
――これもマニアックな歴史マンガの一つで、中世の魔女狩りを背景にした少女の復讐譚。竹良実は、このまま順調に伸びていけば、マンガ史に名を残す作家になれるであろう大型新人。

■関連エントリ→ 2014年に読んだマンガBEST10

2014年に読んだマンガBEST10


あれよ星屑 2 (ビームコミックス)あれよ星屑 2 (ビームコミックス)
(2014/10/25)
山田 参助

商品詳細を見る


 年末なので、今年読んだマンガのBEST10を選んでみよう。
 (日を変えて、本と音楽のBEST10も選ぶつもり。映画については、今年はあまり数を観ていないので、なし)

 順不同。タイトルをクリックするとレビューに飛びます。

さそうあきら『花に問ひたまへ』
――「このマンガがすごい! 2015」のオトコ編1位に選ばれた『聲の形』(大今良時)にはあまり感心しなかった私だが、これはほんとうにいいマンガ。「障害者もの」の期を画した傑作だ。

柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』

ヤマザキマリ+とり・みき『プリニウス』

山田参助『あれよ星屑』

市川ラク『白い街の夜たち』

近藤ようこ+津原泰水『五色の舟』

松本大洋『Sunny』

 ――私は今年初めて本作を読んだので。松本大洋ファンから見れば「何をいまさら」だろうけど。

鈴木みそ『ナナのリテラシー』

李昆武+フィリップ・オティエ『チャイニーズ・ライフ』

松田洋子「平凡なヨウコちゃん」(『好きだけじゃ続かない』所収)

 10作のうち、じつに4作までが『コミックビーム』連載作品になった(「平凡なヨウコちゃん」が入った『好きだけじゃ続かない』もビームコミックスなので、それを含めれば5作)。
 いまの『コミックビーム』のレベルの高さがわかる。『IKKI』なきあとの希望の星ともいうべきコミック誌だと思う。

 あと、高野文子の久々の新作『ドミトリーともきんす』をまだ読んでいないので、読んでいればたぶん10作の中に入れたと思うが……。

李昆武ほか『チャイニーズ・ライフ』


チャイニーズ・ライフ――激動の中国を生きたある中国人画家の物語【上巻】「父の時代」から「党の時代」へチャイニーズ・ライフ――激動の中国を生きたある中国人画家の物語【上巻】「父の時代」から「党の時代」へ
(2013/12/21)
李昆武(リー・クンウー)、フィリップ・オティエ 他



 李昆武(リー・クンウー)、フィリップ・オティエ著、野嶋剛訳『チャイニーズ・ライフ――激動の中国を生きたある中国人画家の物語』(上下巻/各1890円/明石書店)を読んだ。
 「漫棚通信ブログ版」さんが取り上げていたので、興味を抱いて手を伸ばしたもの。

 中国人画家(新聞社の美術記者)による自伝マンガで、上下巻あわせて700ページ近い長編である。

 共著者のオティエは中国在住のフランス人外交官。熱烈なマンガ愛好家でマンガ原作も手がけているそうだから、本作のプロデューサー/アドバイザー的役割というところか。本書の中にも、李とオティエが天安門事件の描き方について議論をする場面がある。

 本書は当初フランスで刊行され、昨年初頭には中国でも刊行。昨年11月には、中国で最も権威あるマンガ賞だという「中国漫画大賞」も受賞している。

 ……というと、「なんだ、中国当局お墨付きの共産党礼賛マンガか」と思う向きもあろうが、意外にそうでもない。
 大躍進政策時代に中国を襲った飢饉の惨状や文革の狂気など、中国現代史のマイナス面もきわめてリアルに描かれているし、その後の経済発展も手放しで礼賛してはいない。

 文革期に1人の少年だった著者は、紅衛兵にあこがれて「反革命分子」糾弾の真似事をする。その場面に添えられた次のようなモノローグに、強い印象を受けた。

ああ、自らを狂喜に委ねることはなんと気持ちのよいことだろう。

昨日まではみすぼらしい無数の水滴の集まりにすぎなかったのに、今日はすべてを洗い流す激流になるなんて。

誰も我々を止めることができませんでした。あらゆる時代の貴重な品々を葬り去りました。
目に見えない塵となって飛び散り、私たちの若い胸を満たしたのです。



 ただし、1989年の天安門事件については、著者は“自分は事件をメディアを通じて知っただけだし、友人知人にも当事者はいないから”と、詳細に描くことをかたくなに拒んだという。
 その点をとらえて、「これは現代中国を正確に描いた作品ではない」と難ずることもできなくはない。が、いまも中国で暮らす著者にそこまでを望むのは酷だろう。

 中国の市井の人々の等身大の像を焼き付けたマンガとして、本作には高い価値があると思う。イラン出身のマルジャン・サトラピの自伝マンガ『ペルセポリス』と同系列の、「異文化を知るマンガ」として優れている。

 著者の絵柄は、日本のマンガとはまったく別物である。
 版画的かつ水墨画的、とでも言ったらよいか。黒と白の強烈なコントラストを活かした見事な絵だが、すっきりとした日本のマンガを読み慣れた目には、かなりとっつきにくい。

 それでも、内容のインパクトに引っぱられてずんずん読み進めることができる。
 とくに、大躍進時代から文革期、毛沢東の死までが描かれた第一部(上巻の大半にあたる)の迫力はすごい。

『長嶋有漫画化計画』


長嶋有漫画化計画長嶋有漫画化計画
(2012/03/17)
うめ;ウラモトユウコ;衿沢世衣子;オカヤイヅミ;カラスヤサトシ;河井克夫;小玉ユキ;島崎譲;島田虎之介;萩尾望都;100%ORANGE;フジモトマサル;陽気婢;吉田戦車;よしもとよしとも



 『長嶋有漫画化計画』(光文社/1680円)を読んだ。

 長嶋有の作家デビュー10周年を記念した、彼の小説を人気マンガ家たちがコミカライズ(マンガ化)する試みをまとめたもの。
 『小説宝石』に連載されたものにくわえ、描き下ろし作品が5作もプラスされている。430ページを超えるポリュームで、参加したマンガ家の顔ぶれも豪華だ(→長嶋有公式サイト内の特設ページ参照)。

 長嶋は『週刊文春』にマンガについてのコラム『マンガホニャララ』を連載(ブルボン小林名義)しているほどディープなマンガ読みだから、いかにも彼らしい試みではある。

■関連エントリ→ ブルボン小林『マンガホニャララ』レビュー

 たんに原作を提供するだけではなく、作品のセレクト、マンガ家の人選・原稿依頼にまで長嶋自身がかかわり、マンガ家と綿密な打ち合わせを重ねたうえで作業が進められたようだ。つまり、長嶋は本書のプロデューサーとしての役割まで果たしたのである。

 私は長嶋有の小説が好きだし、参加しているマンガ家にも好きな人が多い。だから大いに期待して本書を読んだのだが、思ったほど面白くなかった。てゆーか、かなり玉石混交。
 まあ、もともと長嶋作品はあまりマンガ化向きではないのかもしれない。

 作家性の強いマンガ家が多いだけに、原作をそのままなぞったような芸のないマンガ化は少ない。作品によってはかなり大幅にアレンジされている。
 たとえば、長編『パラレル』は、うめ(というマンガ家)によってなんとボーイズラブ風にアレンジされてマンガ化されている(原作にBL臭はなし)。
 で、そうした大胆なアレンジが見事に決まっているものもあれば、「うーん、外したな~」というものもある。

 私がいいなと思ったのは、カラスヤサトシによる『夕子ちゃんの近道』、小玉ユキによる「泣かない女はいない」、ウラモトユウコ(この人は新人だが、新人離れした手慣れたマンガ化ぶり)による「サイドカーに犬」、河井克夫による「タンノイのエジンバラ」。
 とくにカラスヤサトシのものは、原作のエッセンスをきちんと活かしつつ、4コマ風に話を細かく区切り、笑えるオチなどを盛り込むことによって、まぎれもない「カラスヤサトシの世界」になっている。見事なアレンジだと感服した。

 なお、長嶋有は本書の試みと並行して、マンガ作成ソフト「コミPo! (コミポ)」を使ったマンガ『フキンシンちゃん』をウェブ連載していたが、それが先ごろついに単行本化され、マンガ家デビュー(?)も果たしたらしい。
 ううむ、こんなふうに“真剣に遊ぶ”姿勢は、いかにも長嶋有ですなあ。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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