『S.W.A.T.』

S.W.A.T.の画像

 なんの予備知識もなく観たのだけれど、これは拾い物。面白かったあ。
 70年代のアメリカ産テレビドラマでもおなじみ、ロス市警の特殊部隊「S.W.A.T.(スワット)」の活躍を描くアクション大作なのだが、なかなか上質な映画になっている。

 前半は渋いドキュメンタリー・タッチで、S.W.A.T.内部の人間ドラマと新規編成チームの訓練風景をリアルに見せる。後半は一転して、L.A.の街破壊しまくり、火薬使いまくりのド派手なアクションとなる。なんだか「一粒で二度おいしい」って感じで、並の映画2本分の満腹感が味わえる。

 国際的な麻薬王が、偶然にも交通検問に引っかかって逮捕される。捜査記録を調べてみると、とんでもない大物犯罪者であることがわかり、刑務所までの護送にS.W.A.T.が狩り出される。
 麻薬王はテレビカメラに向かって「オレを逃がしてくれたヤツには1億ドルやるぞ!」と叫ぶ。そのニュースを見たL.A.中の悪党どもが、1億ドル欲しさから、ありとあらゆる武器を使って護衛のS.W.A.T.チームに襲いかかってくる。
 果たして、無事刑務所まで麻薬王を護送できるのか……というのが後半の展開。どうです、面白そうでしょ?

 サミュエル・L・ジャクソン率いるS.W.A.T.チームの面々が、それぞれ個性豊かでキャラ立ちまくり(セクシー&タフな女性隊員がいたりとか)。
 主役級で活躍するS.W.A.T.隊員「ストリート」を演ずるコリン・ファレルは、女性にも男性にも好かれるタイプのさわやかな好青年で、今後ブレイク必至。また、美しい蛇を思わせる白面の麻薬王(オリヴィエ・マルティネス)も、悪役として魅力十分だ。

 保身ばかり考えるイヤな上司と男気あふれるS.W.A.T.隊長との確執など、警察組織の内部事情がリアルに描かれる。それでいて軽快かつスピーディーな展開は、なんだか〝S.W.A.T.版『踊る大捜査線 THE MOVIE』〟という趣。ただし、『踊る~』ほどコミカルではないけれど…。とにかく、料金分は満足できる映画だ。
関連記事

ライターには方向音痴が多い(ような気が)

 私はスサマジイ方向音痴である。
 どのくらいすごいかというと、引越しすると一週間くらいは自分の家までの道が覚えられない(ホント)。
 取材場所に行ったりする場合、先方から地図をファクスで送ってもらい、それを持っているにもかかわらず道に迷う。道行く人にその地図を見せて、「すいません、ここに行きたいんですが、どちらに行ったらいいんでしょうか?」などと聞いたりする(相手はけげんな顔をする)。

 じつは、ライター/作家にはけっこう方向音痴が多い。
 有名どころでいうと、柳美里さんや日垣隆氏はものすごい方向音痴だそうだし、私の知り合いにも多い。

 いっぽう、カメラマンに方向音痴はまずいない。少なくとも私は知らない。重い機材を抱えて仕事をする彼らは、自分の車で取材場所に赴くことが多いから、方向音痴ではやっていけないのだろう。

 先日登山家の今井通子さんを取材したときに、同行したカメラマン氏が3年前にも今井さんを一度取材したことがあるということだった。そして驚くべきことに、3年前に一度行っただけの今井宅の場所を、彼は正確無比に記憶していた。

 あらかじめ住所を調べておいてくれた編集者が「この道ですね」と進もうとしたところ、カメラマン氏が「あ、ちがうよ。たしかもう一本先だ」とこともなげに言ったのである(念のために言うと、大通りではなく、すごく狭い、どこにでもあるような住宅街の路地である)。
 そして、果たしてカメラマン氏の記憶のほうが正しかった。

 な、なんで3年も前に一度通ったきりの道を覚えていられるの~!? 私からみると神業のようである。

 カメラマンとライターでは、仕事上の必要から、脳の発達具合がちがってくるのではないかと思う。ホラ、右脳と左脳のちがいというアレである。ライターは地名を文字で記憶するのに対し、カメラマンは職業柄、映像で道を記憶しているのだろう。きっとそうだ。
関連記事

『ベスト外道』


ベスト外道(初回)(DVD付)ベスト外道(初回)(DVD付)
(2003/06/25)
外道

商品詳細を見る


 精神分析学者の小此木啓吾さんが亡くなった。私は2度ほど取材でお会いしたことがある。大の猫好きの方で、取材で訪れた千駄ヶ谷のオフィスに、大小さまざまな猫の置物が所狭しと置かれていたのを思い出す。

 『モラトリアム人間の時代』などのベストセラーがよく知られているが、私がいちばん好きな小此木さんの著作は『対象喪失』(中公新書)である。これは、精神分析の本なのに文学的感動を呼ぶ本であった。

 ご冥福をお祈りします。

 ……という前段とはまったく色合いの違うことを書くが、今日アマゾンから届いた『ベスト外道』にシビレた。

 1970年代前半に一時代を築いた伝説のロック・バンド「外道」のベスト盤である。今年は外道結成30周年。外道はさきごろ再結成し、間もなく復活ニュー・アルバムも発売されるのだが、その露払いとして発売されたものだ。

 いやー、これはめちゃめちゃカッコイイ。
 ブルース色、グラム・ロック色を濃厚にまぶした骨太のハード・ロック(ヘビメタではなく、あくまでハード・ロック)。ロックがまだ「不良の音楽」であった時代ならではの、危ない匂いがプンプン。それでいて、サイケデリックなポップ感覚もたっぷり。ドライヴ感に満ちた曲が多く、聴いていて心地よい。

 かの「イエローモンキー」はこの外道の曲からバンド名をつけたのだが、イエモンの好きな人、あるいはピンククラウドのような男臭いロックが好きな人なら、絶対に気に入るはず。

この『ベスト外道』には初回特典としてDVDがついている(DVDつきのものは少し高く、3780円)のだが、これがまさしく「お宝映像」。74年にテレビ東京で放映された田原総一朗プロデュースによる外道のドキュメンタリー番組が丸ごと(23分)収録されているのだ。

 いろんな意味で面白い。外道のメンバーやファンへのインタビュー部分が、思わず失笑してしまうダサさ。

 田原「外道のどこがいいんですか?」
 ファン「なんつーかさあ、ほかのバンドと違うじゃん。シビレるよ」
 田原「どんなふうにシビレるんですか?」
 ファン「どんなふうにって、うまく言えねえけどさあ、オレらの言いたいこと言ってくれてるっていうか」

 ……てな感じのドン臭~いやりとりが、延々とつづくのだ。30年前の「不良」たちは、いまどきの殺伐としたツッパリたちよりずっと朴訥である。

 だが、ちりばめられている外道のライヴ映像は、さすがのカッコよさ。1970年代前半、日本のロックの中にはこれほどのクオリティーを誇るバンドもいたのだ。
関連記事

『ピカレスク/人間失格』


ピカレスク [DVD]ピカレスク [DVD]
(2002/12/25)
河村隆一.緒川たまき.さとう珠緒.とよた真帆.裕木奈江

商品詳細を見る


 『ピカレスク/人間失格』をビデオで観た。猪瀬直樹の『ピカレスク~太宰治伝』の映画化である。

 太宰を演じるのは、河村隆一。
 いかにもミスキャストという感じだが、実際に観てみるとそうでもない。考えてみれば、陰気な弱虫のくせに女性にモテまくるナルシストという太宰のキャラには、河村隆一はけっこうハマリ役かも。

 河村演ずる太宰は、さとう珠緒が本妻のときには緒川たまきを愛人にし、裕木奈江が本妻のときにはとよた真帆を愛人にする。豪気な話である。

 ただ、これまでに太宰を演じた役者のなかで私がいちばんピッタリだと思ったのは、かれこれ20年以上も前のテレビドラマ『冬の花火~わたしの太宰治』の石坂浩二である。これは、じつによいドラマだった。もう一度観たい。

 この『ピカレスク』も、あまり期待しないで観たせいもあってか、意外によかった。時代背景は昭和初頭から戦後間もないころまでだが、美術や衣装などが、その時代の雰囲気を的確に表現していて秀逸。
 また、壇一雄や井伏鱒二(佐野史郎!)よりも、むしろ当時の文芸編集者を演じる役者たちがいい味を出していた。

 かつてロック・ファンが「ビートルズ派」と「ストーンズ派」に二分されていたように、プロ野球ファンに「巨人派」と「阪神派」があるように、「太宰派」と「三島派」はわりと明確に色分けされているものである(三島が太宰を蛇蠍の如く嫌っていたのは、有名な話だ)。

 私はバリバリ「三島派」であるので、太宰にはまったく思い入れがない。作品も、『斜陽』その他の有名どころしか読んでいない。猪瀬直樹の『ピカレスク』も読んでいない。しかし、猪瀬が三島を描いた『ペルソナ』はしっかり読んだ(これは面白かった)。

 太宰に思い入れがないからこそ、「意外によかった」と思うのかも。太宰ファンなら、「河村隆一が太宰? ケッ!」って感じだろう。

 ところで、私はもう太宰が死んだ年(39歳)になってしまったということに、この映画を観て気づいた。ううむである。
関連記事

すべての夢が記憶できたら……

 映画1本分の長編の夢を見た。

 てゆーか、私が映画館で映画を観て感動している夢なのだが、上映されていた映画というのが、夢の中だけのオリジナル――つまり、私が頭の中で作った映画なのだ。

 途中から「あ、これは夢だ」と意識の隅で気づいて、「この夢の内容を脚本化して売り込もう」などと皮算用していたのだが(笑)、起きたらきれいさっぱり忘れていた。

 そんな経験ないですか? 私はけっこうあります。

 夢が記憶しにくいのは、睡眠中は記憶力が麻痺している(=記憶力のスイッチがオフになっている)からだという。昔流行ったちゃちな「睡眠学習器」なるものが役に立たないのも、そのためだ。

 もしもすべての夢が記録できる装置があったとしたら、あらゆる分野のクリエイターにとって、創作の大きな助けになるであろう。

 たとえば、作曲家がその装置のモニターで「ゆうべの夢」をチェックすると、そこには、自分がいくら頭をひねっても浮かんでこなかった素晴らしいメロディーがたくさんちりばめられていたりして……。
「おお、ゆうべは大漁だったな」
 などと言いつつ、無秩序な状態で浮かんでいるそれらのメロディーを曲の形に整えていく。それで一曲完成!
 
 しかし、夢の中で鳴っていたそのメロディーは、まちがいなくその人が作ったメロディーなのである。

 ……そんなことができたら、ロック・アーティストたちもドラッグに頼らずに済むであろう。

 『宝島』の作家スティーヴンソンは、奇妙な「就眠儀式」を持っていた。それは、寝る前に「小さなブラウニーたちよ、寝ている間に面白くてよく売れる物語を1つ作ってください」と唱えることだった。

 「小さなブラウニーたち」とは、スコットランドの伝説に登場する妖精。家の人が寝静まった夜中に、家事の手伝いなどをしてくれる妖精なのだという。スティーヴンソンは、潜在意識に秘められた奔放な創作力を、そう表現したのだろう。
 起きている間は、さまざまな雑念という〝意識の枷〟によって、その創作力にいわばリミッターがかけられている。だからこそスティーヴンソンは、潜在意識の扉が開く就寝中に創作力が活性化するように、〝おまじない〟を唱えたのだ。

 もっとも、だからといって、スティーヴンソンの小説が夢を作品化したものでないことは、いうまでもない。
 つげ義春の『ねじ式』はつげの夢をそのままマンガ化したものだが、夢をそのまま作品化しても、あのようなシュールレアリスティックな作品にしかなるまい。夢の中に現れるのは、あくまで作品の〝原石〟なのだ。

 ロック史上最高のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスは、「オレの頭の中には悪魔が棲んでいる」と言ったことがある。彼ほどのテクニックをもってしても表現し得ない音楽が、彼の頭の中にはまだまだたくさん眠っていた。それを「悪魔」と表現したのであろう。

 「夢記憶装置」によって、たとえば、優れたアーティストたちの夢をディスクに記録できたとしたら、そこには、アーティストたちが作品化し得なかった〝幻の作品〟の断片も、記録されることになる。
 ジミヘンの頭の中で鳴っていた音楽――聴いてみたい気がするではないか。
関連記事

ゲッツ板谷『板谷バカ三代』

板谷バカ三代 (角川文庫)板谷バカ三代 (角川文庫)
(2003/08)
ゲッツ板谷

商品詳細を見る


  ゲッツ板谷著『板谷バカ三代』(角川文庫/590円)は、1冊で50回くらい笑える本。コラム集でこんなに笑ったのは、小田嶋隆初期の傑作『我が心はICにあらず』以来だ。

 小田嶋隆のコラムにはクールな知性に裏打ちされたシニカルな笑いがあるが、ゲッツ板谷の笑いはもっとストレートでパワフル。
 ありていに言って、「知性の笑い」ではない「バカの面白さ」。破天荒なパワーに満ちていた初期の椎名誠を彷彿とさせる。じっさい、「シーナからゲッツに乗り換えた」という本好きが、最近少なくないようだ。

 『板谷バカ三代』は、タイトルのとおり、自分の家族をネタにしたコラム集。板谷氏の父・祖母・弟の三人を中心とした板谷家の人々のバカぶり(と、私が書くとものすごく失礼な感じだが、著者自身がそう書いているのだ。父・祖母・弟は「バカのゴールデンライン」であり「核兵器級のバカ」だと…)があまりにブッ飛んでいて笑えてしまうという、前代未聞の一冊だ。

 例を挙げよう。

バアさんはオレの友達が遊びに来たりすると、サイ牛と命名したサイダーと牛乳を混ぜたモノを必ず出してくる。一度、「そんなモノは出さないでくれ!」と本気で注意したら、ネーミングを「牛ダー」に変えてまた出してきた。
---------------------------------------
 なんの気なしに2人の履歴書をのぞき込んでみたところ、趣味の欄にベッチョは「珍味」、セージは「ボクをグイグイとリードしてくれる人」という文字を書き込んでいた。さらに、扶養家族の欄には、ベッチョが「いいと思う」、セージは「7人家族。それと犬が1個います」と記入していた……。

 


 ちなみに、「セージ」とは板谷氏の弟、「ベッチョ」はセージの友人だ。

 板谷氏のコラムには、独特の破天荒な比喩表現がちりばめられていて、それだけでもおかしい。「頭蓋骨にヒビが入るほどマズイ」とか、「ここでもセージが昆虫のような行動に出たのである」とか。
 また、随所に掲載された家族の写真と、そこにつけられたキャプションも笑える。たとえば――。


花見で泥酔し、木に登るセージ。『カレーに福神漬け』レベルでマッチするんだな、桜とバカって…
---------------------------------------
 彼女と主食の駄菓子を楽しむセージ。奴の1ヶ月の駄菓子代は7万円前後

 


 ちなみに、板谷氏は私と同じく東京・立川市在住。しかも、住んでる町も丁目も同じの超ご近所さんだ。コラムに登場する市内のあれこれをよく知っているぶん、私には2倍笑える本なのである。

 私は単行本ももっているのだが、文庫オリジナルの企画ページ「アド街ック地獄in立川」が読みたかったので、文庫も購入。
 ちなみに、単行本の帯の惹句は、「オール完全実話!! 立川の最強バカ一家物語」という強烈なものであった。

 文庫版には、よしもとばなな・矢井田瞳・ピエール瀧の三人が解説を寄せている。ゴージャス!
 
 ご近所さんなので、立川の〝ナイスなスポット〟を紹介する「アド街ック地獄in立川」が、私にはすっごく笑える。なにしろ、登場するスポットときたら、「第六天神社」(魔王が住んでいる)とか「だんごの美好」とか「第一デパート」とか、「Hanako」の立川特集には決して登場しない激レア・ヤバめスポットばかりなのだ。

 立川市民は必読! あ、立川市民でなくても笑えますよ。



関連記事

Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
24位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
18位
アクセスランキングを見る>>