中川淳一郎『ネットのバカ』


ネットのバカ (新潮新書)ネットのバカ (新潮新書)
(2013/07/13)
中川 淳一郎

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 中川淳一郎著『ネットのバカ』(新潮新書/756円)読了。

 スマッシュヒット『ウェブはバカと暇人のもの』(2009)で脚光を浴びた、ネットニュース編集者・PRプランナーの新著。
 例によって、ネットのもつ負の側面に光を当て、軽妙な筆致で「ネットのいま」を眺め、「ネットとのつきあい方」を説く内容だ。しかし、『ネットのバカ』というタイトルは身もフタもないなあ。

■関連エントリ
中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』レビュー
中川淳一郎『今ウェブは退化中ですが、何か?』レビュー
中川淳一郎『ウェブを炎上させるイタい人たち』レビュー

 上に貼った『ウェブを炎上させるイタい人たち』(2010)のレビューで、私は「同じ著者が同じテーマで書いた本を3冊つづけて読んだので、さすがにもう飽きた。次は3年くらい間を置き、ネット上のおバカ事件のストックがたまった時点で出したらいいと思う」と書いた。
 それを聞き入れてくれたわけでもあるまいが、3年ぶりのシリーズ(?)最新刊である。

 著者は本書で、『ウェブはバカと暇人のもの』を「総論」、『今ウェブは退化中ですが、何か?』『ウェブを炎上させるイタい人たち』『ウェブで儲ける人と損する人の法則』(私は未読)を「各論」と位置づけている。
 そして、本書は『ウェブはバカと暇人のもの』以来の「総論」である、とする。その意味では4年ぶりの続編ということになる。

 ネットの普及が進むにつれ、著者のいう「バカと暇人」が参入してくる割合も高くなる。したがって、ウェブ上のおバカ事件も4年前より目立つようになってきた。SNS上の「おバカ店員事件」の頻発が象徴的だろう。
 4年前にはまだ、「ネットから生まれる集合知」に期待をかける言説のほうが優勢で、著者は異端的であった。しかし現在はむしろ、「ネットが生む集合愚」を憂うる声のほうが目立つ。いわば、「時代が中川淳一郎に追いついた!」(笑)わけだ。

 『ウェブはバカと暇人のもの』は笑いの要素が強い本だったが、本書は笑いを抑え、わりとマジメな調子で書かれている。
 しかし、一見マジメな筆致だからこそ、何気ない一節に著者が込めた皮肉の毒が、じわじわと効いてくる。たとえば――。

 ネットはあくまでも、リアルの場で実績がある人をさらに強くするものなのだ。
(中略)
 あなたの1クリック、1いいね、1RTはすべて強者をより強者にするために使われている。イケている人をさらにイケている人へと強化するために使われている。いわばあなたは「クリックする機械」でしかない。
 何もそこまで……と思われるかもしれないが、これは事実である。ありとあらゆるサイトでは、PVこそが儲けの源泉になっているのだから。



 本書の圧巻は、第8章「困った人たちはどこにいる」。
 ネットにはびこる「過度な自己承認欲求を持つ人」や「“愛国者”たち」などの「困った人たち」のイタさを揶揄して、じつに痛快だ。

 とくに、「もはやネットで韓国のことを一言もホメられないのだ。ホメたり書いたりすれば、何らかの影響が出ることは間違いない」と、ネット上で吊し上げられた体験をふまえて嫌韓“愛国者”を揶揄するくだりは、一読に値する。

 次の一節に、強い印象を受けた。

 ネットがあるから多様な意見を知ることになった、という主張は嘘である。特に、自らフォローしたい相手を選べるツイッターは、心地よい情報だけを入れることが可能になった。だからそうして、彼らは、マスコミの偏向報道の歴史や、在日韓国人にまつわる噂やらを信じ、確証バイアスを強めていく。

 
 仕事柄、大局的にネット界の流れをつかんでいるだけあって、著者はネットが進んでいる方向に警鐘を鳴らす「炭鉱のカナリア」たり得ている。
 しかも、眉根にシワ寄せて警鐘乱打するのではなく、ニヤニヤしながら楽しく読める本に仕上げているところが、いつもながら好ましい。ネット論の好著だ。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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