点滴ポール 生き抜くという旗印 (2013/06/28) 岩崎 航・著、齋藤 陽道・写真 他 商品詳細を見る |
今週の月曜、日帰りで仙台へ取材に行った。
詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』(ナナロク社/1470円)で話題の岩崎航(わたる)さんへのインタビュー。
岩崎さんは37歳。進行性筋ジストロフィーと闘うベッドの上から、「五行歌」を紡ぎ出す詩人である。
3歳で発症。20代で人工呼吸器を導入し、いまでは「胃瘻」(腹部を切開して胃に通した管から栄養補給をする)によって生命を保っている。寝たきりの生活のなか、25歳から詩作をつづけてきた。
かつて、茨木のり子は次のように書いた。
詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無惨な屍をさらすのは、感情の耕しかたが足らず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。(『詩のこころを読む』)
岩崎さんの詩は、そのような小手先だけで書いた「死んでいる詩」の対極にある。感情の奥底まで見つめて書かれた、生きることに直結した詩、「生の証」として刻みつけられた詩なのである。
谷川俊太郎や糸井重里ら、当代一流の言葉のプロたちが絶賛したのも、詩にみなぎる「生き抜く」という意志の力に圧倒されたがゆえだろう。
たとえば、次のような詩――。
点滴ポールに
経管食
生き抜くと
いう
旗印
自分の力で
見いだした
ことのみが
本当の暗闇の
灯火(ともしび)となる
泥の中から
蓮は 花咲く
そして
宿業の中から
僕は 花咲く
言葉が本来もっている力と美しさというものを、まざまざと見せつける詩集である。
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