『そして父になる』


そして父になる【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)そして父になる【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)
(2013/09/05)
是枝 裕和、佐野 晶 他

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 立川シネマシティで『そして父になる』を観た。
 カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、スピルバーグも絶賛したという話題作。

 

 大変よかった。息子をもつ父親の1人として、胸を揺さぶられた。
 是枝裕和監督の作品で好きなものは多いけれど、後世に残るのは『誰も知らない』と本作なのではないかと思った。

 産婦人科での赤ちゃん取り違え事件(子どもが小学校に入学する段になって、取り違えが発覚する)という、80年代大映ドラマみたいなベタな題材を扱いながら、しっとりと落ち着いた人間ドラマになっている。

 題材が題材だけに、観客を泣かせようとしてかかったら、もっとあざとい「感涙映画」にできただろう。だが、是枝監督はさすがにそんなことはしなかった。
 ギョーカイ用語でいう「泣きのスイッチ」が押されるのも、最終盤だけ。あとは抑制の効いた演出が積み重ねられていく。

 是枝監督の脚本はいつもそうだが、言葉の贅肉が見事に削ぎ落とされていて、不自然な説明ゼリフが一つもない。最低限の言葉のみを用いて、行間は観客に悟らせるのだ。

 また、子役たちからドキュメンタリーのような自然な演技を引き出す「是枝マジック」も、相変わらず冴え渡っている。
 とくに後半、両親と家庭の「交換」を強いられる2人の男の子の、戸惑いと子どもなりの苦悩を表現する演技が、少しもわざとらしくなくて素晴らしい。

 対照的な2つの家庭の夫婦を演ずる主役級4人(福山雅治&尾野真千子/リリー・フランキー&真木よう子)のキャスティングもバッチリとハマっていて、誰が賞をとってもおかしくない演技合戦になっている。

 私がとくに感心したのは、尾野真千子の好演。
 彼女がメインとなる、映画全体の「肝」ともいうべき2つのシーンがあるのだが(夫の福山をなじるシーンと、最終盤に感涙必至のセリフを放つシーン)、その2つのシーンの演技はもう鳥肌ものだ。

 是枝監督は、『誰も知らない』『歩いても 歩いても』『奇跡』などの作品で「家族とは?」「親子とは?」を問うてきたわけだが、その問いかけの集大成が本作と言えるかもしれない。

■関連エントリ→ 『奇跡』『歩いても 歩いても』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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