南信長『現代マンガの冒険者たち』


現代マンガの冒険者たち現代マンガの冒険者たち
(2008/05/15)
南 信長

商品詳細を見る


 南信長著『現代マンガの冒険者たち――大友克洋からオノ・ナツメまで』(NTT出版/2520円)読了。
 著者は、雑誌・新聞などでよく名前を目にする「マンガ解説者」。編集者の新保信長と同一人物である。

 5年前に出た本だが、いまでも十分読むに値するマンガ論集であった。というのも、1年も経てば古びてしまうような、コマギレの作家・作品紹介ではないから。
 これは、現代マンガ全体を鳥瞰してその主要な流れを取り出し、系譜をたどった作家論集なのである。つまり、現代日本マンガ史としても読める本なのだ。

 「現代マンガ」といっても、手塚治虫の出現から説き起こすわけではない。副題に「大友克洋からオノ・ナツメまで」とあるように、おおむね1970年代後半以降が俎上に載る。
 そこから現在までのマンガ史を、著者は5つの流れ――ビジュアルの変革者たち・「Jコミック」・ギャグマンガ・ストーリーマンガ・少女マンガ――に沿って系統化していく。

 その系統化の手際がじつに鮮やかで、マンガ史の流れがすっきりと把握できる。つまり、誰がどのような革新を担い、誰が誰の影響下にあるのかといったことが、一通りわかるのだ。
 文章の平明さも特筆もの。最近の大学に増えてきた「マンガ学科」に「現代マンガ史」という講義科目があるなら、そのテキストに採用してもよいくらいだ。

 約400ページと薄くはない本だが、それでも、一冊で現代マンガの重要な作家が網羅できるはずもない。かなりの抜け落ちがある。
 たとえば、岩明均についての言及がまったくない(系譜図の中に名前があるのみ)ことに、私は首をかしげた。現代のストーリーマンガについて論じるなら、彼は絶対外せない重要作家だと思うのだが……。

 もっとも、マンガ百科事典ではない以上、そうした偏りもある程度仕方のないことだろう。大雑把に現代マンガ史を鳥瞰する本としては、上出来の内容といえる。

 私がとくに感心したのは、各章に一つずつ入っている系譜図・分布図の素晴らしさ。

 たとえば、第1章の冒頭には「〈ビジュアルの変革者たち〉系譜図」が見開きで載っており、戦前から21世紀までの日本マンガのビジュアル革新史がコンパクトにまとめられている。重要作家の名前を並べるのみならず、作家相互の影響関係までが図示されているのだ。

 こういう図を作るのは、ものすごい労力がいるものだ。
 私は20年ほど前、某大手取次会社が主催した大規模なマンガ展にかかわったことがある。そのパネル展示の中の系譜図も私が作ったのだが、たいへんな作業であった。
 そこから、本書の系譜図に費やされた労力も察せられる。原稿も8割方は書き下ろしだそうだし、すごい労作だと思う。

 5年後の現在までの状況を加筆した安価な文庫版を、ぜひ出してほしいところ。



関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
21位
アクセスランキングを見る>>