中村淳彦『崩壊する介護現場』


崩壊する介護現場 (ベスト新書)崩壊する介護現場 (ベスト新書)
(2013/09/07)
中村 淳彦

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 中村淳彦著『崩壊する介護現場』(ベスト新書/800円)読了。

 著者は多くの著書をもつフリーライターだが、そのかたわら、2008年にデイサービス施設を立ち上げ、経営者兼介護職員をしている。出版不況で増えてきた“兼業ライター”の一人だ。

 本書は、「介護現場で働くライター」という特異な立場を活かした衝撃的なノンフィクションである。

 介護の仕事が総じて「3K」(給料が安い・キツイ・汚い)であることはよく知られているが、本書が的を絞る「崩壊」はそこではない。介護に携わる人材の急速な劣化を、「崩壊」として語っているのだ。

 介護業界は離職率が高く、慢性人材不足である。そのため、フツーの企業なら採用されないような人でも採用される。その敷居の低さに、一部大手介護企業(「ワタミの介護」など)の急拡大志向が拍車をかけ、まともでない人がどんどん介護業界に流入してきている、という。

 仕事がまったくできないスタッフたち、安い給与を補うため売春に走る女性職員たち、日常茶飯事である職員同士の不倫、一般世間より格段に高いサイコパス率……。本書に描かれた人材崩壊の現状は、じつにすさまじい。

 内容の衝撃性に引っぱられて、思わず一気読み。
 ただ、本書の告発が介護業界の全体像を正確にとらえているかといえば、やや疑問。著者の目から見える「現状」は、かなり極端な気がするのだ。

 著者はもともと、AV業界や性風俗の世界をおもに取材してきたライターである。そのため、彼が目にする情報や接する人々にも、必然的に偏りがあるのではないか。
 本書を読むと、介護業界で働く女性の多くが副業で性風俗をやっているように思えてしまう。まあ、中にはそういう人もいるだろうが、まさかそんなに多くはないだろう。

 そのへんを割り引いて読む必要はあるが、介護業界の現状にホンネで迫った書として、一読の価値はある。

■関連エントリ
中村淳彦『職業としてのAV女優』レビュー
中村淳彦『名前のない女たち』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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