大久保真紀『児童養護施設の子どもたち』


児童養護施設の子どもたち児童養護施設の子どもたち
(2011/05)
大久保 真紀

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 大久保真紀『児童養護施設の子どもたち』(高文研/2100円)読了。

 テレビドラマ『明日、ママがいない』が大騒ぎになっているので、ネットで無料配信されている第1話を見てみた。で、ついでにといってはなんだが、物語の舞台になっている児童養護施設のルポである本書も読んでみたしだい。

 ドラマのほうは、第1話を見たかぎりでは、目くじら立てるほどひどい内容とは思わなかった。芦田愛菜の演技はマジすごいし。

 ただ、抗議している人たちの気持ちもわかる。大人はあのドラマが児童養護施設の実態を描いたものだとは思わないだろうが、施設で暮らす子どもたちがドラマのせいで差別に遭う可能性は、十分あると思う。
 私の子ども時代にも学区内に養護施設があって、そこから学校に通っていた子は差別を受けていた(深刻なものではないが)し……。

 さて、本書は、『朝日新聞』のベテラン記者(現・編集委員)が、長期にわたって児童養護施設を取材して書いたルポである。一章ごとに一人の児童、または施設出身者が主人公となり、計10人の半生が描かれる。
 最後のパートⅢでは、子どもを虐待する親の側にスポットが当てられる。親自身も養護施設出身であるなど、いわゆる「虐待の連鎖」が描かれ、虐待癖を克服してきた道筋がたどられている。

 著者は、新聞記者でありながら計80日も養護施設に泊まり込むなど、子どもたち一人ひとりに寄り添って取材をしている。
 また、虐待サバイバーたちは必然的に生きづらさを抱えているものだが、著者は彼らが社会で生きていくための手助けやアドバイスを、親身になって行う。

 それは時に取材者としての「分」を踏み越えるほどのものだが、そこまで深く関わっているからこそ、彼らも著者に心を開いたのだろう。

 ここまで「虐待」と書いてきたが、それは当然、養護施設に入るまでに親や同居人によって加えられたものだ。
 ただ、施設の職員によって虐待が加えられていた事例も、一つ紹介されている。『明日、ママがいない』はフィクションだが、それに近い現実もないわけではないのだ。

 各編とも、過酷な日々を生き延びてきた子どもたちが蘇生していくさまが描かれているので、読後感はあたたかい。
 とくに、登場する10人のうちの1人「彩美」の物語は感動的で、もっと広げて一冊の本にしてもいいと思った。

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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