竹邑類『呵呵大将――我が友、三島由紀夫』


呵呵大将: 我が友、三島由紀夫呵呵大将: 我が友、三島由紀夫
(2013/11/22)
竹邑 類

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 竹邑類(たけむら・るい)著『呵呵大将――我が友、三島由紀夫』(新潮社/1470円)読了。

 著者は舞台演出家・振付師で、本書刊行後ほどない昨年12月に世を去った。はからずも、これが遺著となったことになる。

 著者がまだ無名の学生であった1960年代初頭、たむろしていた新宿のモダンジャズ喫茶「KIIYO(キーヨ)」に、すでに人気作家であった三島由紀夫がやってくる。もともと三島作品の大ファンであった著者は話しかけ、たちまち意気投合。それから友人として付き合い始める。

 本書は、「KIIYO」をおもな舞台に、三島との交友を振り返ったエッセイ。
 タイトルはもちろん「呵呵大笑」のもじりで、三島の特徴であった爆発的大笑と「大将」をかけている。

 当時「KIIYO」にたむろしていた若者たちは、睡眠薬ハイミナールをビールやコーラで流し込んでは「ラリる」のを常としていた。つまり、のちの和製ヒッピー「フーテン」のハシリであったわけだ。
 ただ、永島慎二の『フーテン』に描かれた少しあとのフーテンよりはずっとファッショナブルで、時代の先端を走る存在であったようだ。最先端風俗に目がなかった三島が「KIIYO」に出かけていったのも、そのためだろう。

 三島の短編「月」の主人公「ピータア」のモデルが竹邑であり、物語の舞台となるジャズ喫茶のモデルが「KIIYO」である。
 「月」は、新潮文庫では自選短篇集『花ざかりの森・憂国』に収録されている。三島にとってもお気に入りの一編だったのだろう。

 本書は、正味160ページ程度の薄い本で、内容もわりと薄いのですぐに読めてしまう。
 三島らしさを感じさせるエピソードは随所にあるし、60年代初頭の東京の若者風俗をヴィヴィッドに伝える貴重な資料でもある。しかし、汗牛充棟の「三島本」の山の中に置いたとき、上位に位置するようなものではない。

 ただ、最先端の若者風俗と接するときにも、三島がけっして興味本位ではなく、どこまでも真剣に向き合っていた様子が伝わってきて、感心させられる。三島は真剣にツイストを踊り、真剣にフーテンたちと遊ぶのである。
 その点についての著者の次のような分析は、本書の白眉だと思った。

 教養と良識に毒された、ひ弱な文士とかインテリは「精神性こそが本分」とばかり、肉体を動かすスポーツや流行ものはナナメに見て批判をしなければならず、若者のやることなすこと軽薄そのものであると勝手に思い込んでいる。三島さんの周りの文学仲間やジャーナリスト、三島さんの讃美者でさえも。
 その偏見に、逆の美意識を駆使して、インテリたちの自意識を逆撫でしたり、軽薄そのものの社会現象の最先端を走ったり、トゥイストを踊ったり、映画スターやロカビリー歌手と交流を持つ、そして自らの肉体をボディビルで鍛えあげて、ナルシズムと反抗精神を二つながら楽しんでいるのである。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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