梅原猛『人類哲学序説』


人類哲学序説 (岩波新書)人類哲学序説 (岩波新書)
(2013/04/20)
梅原 猛

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 一昨日から昨日にかけて、一泊で京都へ――。

 哲学者の梅原猛さん、環境考古学者の安田喜憲さん、『岩手日報』編集局長の東根千万億(あずまね・ちまお)さんによる鼎談の取材(で、私がまとめる)。

 鼎談のテーマに関連する梅原さんの近著『人類哲学序説』(岩波新書/798円)を読んで臨む。

 タイトルだけでたじたじとなってしまいそうな本だが、これがじつに面白い。大学で行われた連続講座をベースにした本なので、全編語り口調のやわらかい文章で書かれているし、「(笑)」も頻出するのだ。

 自然を収奪することによって成り立ってきた西洋型文明が、20世紀後半からしだいに限界を見せ、福島第一原発事故という「文明災」によって決定的に行き詰まった。
 では、今後の新たな文明の土台となるべき哲学とはなんなのか? 梅原さんはそれを、仏教の「草木国土悉皆成仏」の中に見出す。人間や動物のみならず、草木や国土でさえ仏性をもち、みな仏になり得るという意味。元々は「天台本覚思想」だが、それが自然の中に八百万の神々を見る日本古来の思想と結びつき、「日本思想」となった。「草木国土悉皆成仏」は、鎌倉仏教の共通原理でもある。

 自然を支配しようとするのではなく、自然と「共生」する思想。それが日本から世界へと広まれば、21世紀にふさわしい「人類哲学」となり、文明のパラダイムシフトをもたらすのではないか? ……そのような壮大無比の構想の、本書はまさに「序説」にあたる。

 そのためにまず、梅原さんはデカルト、ニーチェなど、西洋文明を基礎づけてきた哲学の果たしてきた重要な役割を論じ、その限界を指摘していく。

 梅原さんの思想のエッセンスを抽出した入門書としても読める、内容の濃い一冊。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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