山田順『人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本』


人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本
(2014/01/21)
山田順

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 山田順『人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本――これから確実に起こる未来の歩き方』(PHP/1575円)読了。

 タイトルを見ればわかるとおり、ものすごく悲観的に日本の未来を描き出した本である。章立ては次のようになっている。

 第1章 どんなビジネスも人口減に勝てない
 第2章  日本・中国・韓国 ともに衰退する未来図
 第3章 超高齢化社会到来 老人しかいない街
 第4章 老人の街でやる2020年東京五輪
 第5章 あなたの街がデトロイトになる日
 第6章 ものづくり国家 ニッポンの崩壊
 第7章 2020年日本車消滅という衝撃未来
 第8章 仕事を機械に奪われ失業者が増える
 第9章 英語ができないだけで貧乏暮らし
 第10章 さよならニッポン 続々出ていく富裕層
 第11章 巨大債務がある限り給料は上がらない
 第12章 増税で締め上げられ監視される市民生活
 第13章 ポルトガルと同じ運命をたどるのか?



 エコノミストの高橋乗宣は「悲観の乗宣」と呼ばれ、悲観的な経済予測をさせると水を得た魚のようにいきいきとすることで知られるが(笑)、山田順がこれまでに出した本にも悲観的なものが多い。『出版大崩壊』『出版・新聞 絶望未来』『2015年磯野家の崩壊――アベノミクスの先にある「地獄」』といった具合である。
 高橋乗宣の後継として、「悲観の順」の二つ名を用いるとよいと思う。

 まあ、悲観もここまで徹すれば一つの「芸」だし、悲観的な本も世の中には必要だ。
 本書も、読んでいて気が滅入る本ではあるが、“日本人はもっと未来に対して危機感をもつべきだ”というのはそのとおりだし、うなずける主張も多い。たとえば――。

 本当に不思議なことだが、多くの日本人が、自分が暮らしている自治体の財政状況を知らない。いつ破綻するかわからないのに、何事も起こらないと思って暮らしている。
 そこで、読者のみなさんには、お住まいの自治体の「財政力指数」と「実質公債費(負担)比率」を見ることをお勧めする。



 アジアの新興市場が発展したのは、第一に賃金が安いことだが、第二は旧英国領の国が多く、英語ができる人々がいたからである。低賃金と英語を武器に、新興アジアは発展したのだ。
 日本人は、高賃金で英語ができない。この差は、グローバル経済ではかぎりなく大きい。



 しかし、1冊全体として見ると、どうも眉ツバな極論が目立つ。

 山田順は長年光文社の編集者をしていた人だから、出版については専門家だ。ゆえに、出版界の暗い未来を語っている分には傾聴に値した。
 しかし、本書のテーマとなる経済・教育・人口問題についてはいずれも専門ではないわけで、“ほかの専門家の受け売り”の感が否めない。それも、専門家の主張をかなりねじ曲げて我田引水している印象がある。ところどころアヤシゲなのだ。

 たとえば、人口の増減を、国の経済の最大決定要因であるかのように扱っていて、あまりに単純すぎると思った。“中国は早晩人口が急減し始めるが、アメリカは今後も人口が増えつづけると予測されている。ゆえに、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国になることはあり得ない”みたいな書き方をしているのだ。

 人口増の国の経済は成長を続けるという法則から見て、アメリカ経済は今後も順調に成長を続けていくことになる。ついこの間まで、アメリカ衰退論、アメリカ経済崩壊論がさかんに言われたが、この国連の人口予測から見ると、そうした事態は起こらないことになる。
 むしろ起こるのは、「米中はやがて逆転する」とも言われてきた中国が失速してしまうことだ。



 世界経済って、そんなに単純にできているのだろうか?

 また、第12章で展開されている、“アメリカはすでにネットを通じて人類を監視する「全人類データベース」を完成させており、今後は『1984』(ジョージ・オーウェル)のような監視社会が到来する”との論は、ほとんど陰謀論である。

 そんな具合なので、「話半分」で読んだほうがよい本だ。

■関連エントリ
山田順『出版・新聞 絶望未来』レビュー
山田順『出版大崩壊』レビュー

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  • 2015-03-30│11:38 |
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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