大田俊寛『現代オカルトの根源』


現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)
(2013/07/10)
大田 俊寛

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 今日は、都内某所で打ち合わせが一件。
 行き帰りの電車で、 大田俊寛著『現代オカルトの根源――霊性進化論の光と闇』(ちくま新書/864円)を読了。

 現代のオカルティズムの根底にある、19世紀後半に誕生した「霊性進化論」の系譜をたどった概説書。そこから、オウム真理教や幸福の科学などを生み出した思想的源流に迫っている。

 「霊性進化論」とは、「人間の生の目的は、自らの霊性を進化・向上させてゆくことにあり、その歩みの結果として、ついには神的存在にまで到達することができる」とする思想のこと。
 それは、「(ダーウィンの)進化論に対する共鳴と反発によって生み出された、その歪んだ『変種』」であり、「近代において宗教と科学のあいだに生じた亀裂に対し、その亀裂を生み出す大きな原因となった『進化』という科学的概念を宗教の領域に大胆に導入することにより、両者を再び融合させようとする試み」であった――というのが著者の見立てだ。

 修業によって自らの魂(生命)を磨こうとするのは、多くの宗教に共通する志向性であるし、「べつに霊性進化論も悪くないではないか」と思う向きもあるかもしれない。
 しかし、著者によれば、霊性進化論は「往々にして、純然たる誇大妄想の体系に帰着してしまう」し、「霊的エリート主義の形成」(そこから、信者以外を見下し、攻撃する傾向に陥る)・「被害妄想の昂進」・「偽史の膨張」といった負の側面をしばしば持つという。

 全3章立て。
 第1章では、ロシアの霊媒ブラヴァツキー夫人が生み出した「神智学」(霊性進化論の源流)の展開を追う。
 第2章では、神智学が生んだ霊性進化論が、第2次大戦後の欧米で「ニューエイジ思想」などのポップ・オカルティズムに変容していく過程をたどる。
 そして最後の第3章では、霊性進化論を根底に据えた日本の新宗教(オウム、幸福の科学と、両者に影響を与えた阿含宗やGLA)を概観している。

 霊性進化論の代表的論者の「思想」が、かなりの紙数を割いてくわしく紹介されている。それらの「思想」を垣間見るだけで、めまいがしそうになってくる。

 たとえば、イギリスのニューエイジ系思想家、デーヴィッド・アイクは、著者が「爬虫類人陰謀論」と名づけた珍妙な妄想体系を築き上げた。それは、レプティリアン(爬虫類型異星人)が世界の政治や経済を裏から支配している、というものだ。

 アイクによれば、ヒトラーもレプティリアンによって密かに操られていたという。

 レプティリアンたちは、金髪・碧眼の人間の血液を吸うことを好んでおり、ナチズムの政策は、レプティリアンに生き血を捧げる人間を確保することに利用されたからである。



 爆笑ものだが、著者は次のように解説を加えている。

 古来、悪魔や悪霊といった存在は、不安・恐怖・怨念といった否定的感情、あるいは過去に被った心的外傷を、外部に投影することによって形作られてきた。近代においてそれらは、前時代的な迷信としていったんはその存在を否定されたが、しかし言うまでもなくそれらを生みだしてきた人間の負の心性自体が、根本的に消え去ったというわけではない。
(中略)
 一見余りに荒唐無稽なアイクの陰謀論が、少なくない人々によって支持されるのは、「爬虫類型異星人」というその形象が、現代社会に存在する数々の不安や被害妄想を結晶化させることによって作り上げられているからなのである。



■参考→ オウム真理教事件の真の犯人は「思想」だった / 大田俊寛

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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