『観ずに死ねるか! 傑作青春シネマ 邦画編』


観ずに死ねるか ! 傑作青春シネマ邦画編観ずに死ねるか ! 傑作青春シネマ邦画編
(2014/05/01)
宮藤 官九郎、園 子温 他

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 『観ずに死ねるか! 傑作青春シネマ 邦画編』(鉄人社/2000円)読了。

 昨年読んだ『観ずに死ねるか !  傑作ドキュメンタリー88――総勢73人が語る極私的作品論』の続編。
 前作はドキュメンタリー映画の作品論を集めたものだったが、今回はタイトルのとおり、邦画の青春映画編だ(※)。

※私は未読だが、その前に第1弾として韓国映画編も刊行されていたそうだ。

 総勢80人が語る極私的作品論。一人旅、無軌道な反抗、学園ヒエラルキー、歪んだ愛、挫折と自立。1970年代以降、日本で製作・公開された青春映画の傑作を約90本集め、クリエイター、パフォーマー、文筆家が極私的な視点から作品への想いを語った。(「BOOK」データベースより)



 本の出来としては、前作のほうが上だと思う。
 前作は、作品ごとに「その映画を論ずるのにいちばんふさわしい人、論ずる必然性のある人」を選ぶというキャスティングの妙が、何よりの魅力だった。
 原一男の『全身小説家』を小説家の中村うさぎが論じたり、ボブ・ディラン・フリークのみうらじゅんが『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』を語ったり……。

 対照的に今回は、「なんでこの名作についてコイツが語るんだよ?」と首をかしげるミスキャストが目立つ。
 とくに、人気俳優や人気芸人に名作を語らせるページがけっこう多くて、これはおそらく営業サイドの要請だろう。「もっと人気のある人を出さないと、本が売れませんよ」と……。

 長澤まさみが『ジョゼと虎と魚たち』を語ったり、バカリズムが『トキワ荘の青春』を語ったり、成海璃子が『サウダーヂ』を語ったり、斎藤工が『麻雀放浪記』を語ったりするのである。
 「もっとこの名作を語るにふさわしい人が、ほかにいるだろうに」と舌打ちしたくなる。

 まあ、俳優を起用したケースでも、染谷将太が『青春の殺人者』を語ったあたりは、まだ理解できる。
 『ヒミズ』で父親を殺す主人公を演じた染谷には、同じように「親殺しが描かれた青春映画」である『青春の殺人者』を語る資格はあるから。
 しかし、長澤まさみの「ジョゼ~」論なんて、ただの人寄せパンダでしかなく、なんの面白さもない。

 ……と、ケチをつけてしまったが、素晴らしい作品論も少なくない。
 たとえば、北尾トロが書いた「秋吉久美子が青春だった」は思い入れたっぷりで熱量がスゴイし、水道橋博士が『キッズ・リターン』を語ったインタビューは師・たけしへの敬愛に満ちたいい内容だ。
 それ以外も、「その映画を語る強い必然性のある人」による作品論には、やはりよいものが多い。

 洋画編を出すときには、必然性のない人寄せパンダは排除してほしいものだ。どうせ、人気女優とかをいくら出しても、売れる部数なんてほとんど変わらないし……。

 なお、本書の青春映画のセレクトは、おおむね納得のいくものだった。
 『白い指の戯れ』『がんばっていきまっしょい』『下妻物語』『シコふんじゃった。』など、「なんであれが入ってないんだ?」というものもいくつかあるが、わりと順当だと思う。

 ちなみに、本書に取り上げられた作品から、私が70年代以降の青春映画ベスト10を選ぶとすれば……。
 『遠雷』『キッズ・リターン』『サード』『祭りの準備』『ジョゼと虎と魚たち』『大阪物語』『十九歳の地図』『青春の殺人者』『Wの悲劇』『バタアシ金魚』――というところか(順不同)。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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