松田洋子『好きだけじゃ続かない』


好きだけじゃ続かない (ビームコミックス)好きだけじゃ続かない (ビームコミックス)
(2014/05/24)
松田 洋子

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 一昨日は、取材で八王子の東京富士美術館へ。
 館長さんへのインタビュー。そのあと、同美術館で開催中の「華麗なる英国美術の殿堂 ロイヤルアカデミー展」を観賞。とても豊かな気持ちになった。

 で、昨日は都内某所で打ち合わせが一件。行き帰りの電車で、松田洋子の『好きだけじゃ続かない』(ビームコミックス)を読んだ。
 カドカワの本が電子書籍で買うと半額になる「カドカワ祭り」をやっているので、ついあれこれポチってしまったうちの1冊。本作はなんと7割引(225円)だった。

 短篇集である。
 表題作は地味な田舎中学生の初恋物語。キスもハグもなしで、交換日記と自転車の二人乗りが恋のクライマックスだという、なんとも淡~いラブストーリー。

 しかし、松田洋子のことだから、ただリリカルなだけでは終わらない。その初恋を、主人公2人が疲れきった中年になった現在の視点から描くことで、ビターな味わいの作品に仕上げている。

 残りの3編は、いずれも自伝的要素の強いもの。
 松田の幼年期をベースにした「平凡なヨウコちゃん」(松田自身の名前の読みは「ひろこ」だが、主人公の女の子の名前は「松戸ヨウコ」)と、ど田舎のサブカル女子高生の青春を描いた「青空必携1982」「ビックリハウス・ゲイトウェイ」の3つである。

 そのうち、「平凡なヨウコちゃん」が突出して素晴らしい。私は表題作よりもこちらに強い印象を受けた。
 欲の皮の突っ張った祖父母や頼りない遊び人の父に翻弄され、夜逃げ先でつらく貧しい暮らしを送る母と幼い娘たち。だが、すさんで見えるその暮らしが、松田洋子の手にかかると、笑いと哀感に満ちた「冒険譚」になる。
 代表作『ママゴト』や『赤い文化住宅の初子』が好きな人なら、気に入ること間違いなしの作品だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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