市川ラク『白い街の夜たち』


白い街の夜たち 1 (ビームコミックス)白い街の夜たち 1 (ビームコミックス)
(2014/06/25)
市川 ラク

商品詳細を見る


 どんどん騒動が拡大しつつある、月刊誌『創』による柳美里さんへの原稿料不払い問題――。
 同じフリーの物書きという立場ゆえ、どうしたって柳さんの側に感情移入して報道を読んでしまう。

 私もフリーが長いので、不払いトラブルには何度も遭遇してきた。また、それとは別に、原稿料が出ない媒体にボランティアで書いたことも何度もある(書き手の側が納得ずくなら、それはそれでアリ)。
 しかし、連載開始時に約束した原稿料が、もう何年も払われていないというのはスゴイ。こんな例は聞いたことがない。

 何がムカつくって、不払いの当事者・篠田博之編集長(創出版社長)の弁明コメントだ。久々に「虫酸が走る」という感覚を味わった。

「『創』が赤字であることは以前から話していたし、(『創』の状況を理解して書いてくれている)他の執筆者と同様に『続けよう』という意思で書いてくれている、『応援してくれている』と考えてしまっていた。認識の行き違いがあった」(「J-CAST ニュース」の取材に対するコメント



 セクハラで逮捕されたオヤジが、「彼女も喜んでくれていると思っていた」と言いわけするのに近いものを感じる(笑)。

 『創』のブログに掲載された弁明「作家・柳美里さんとのことについて説明します。」も、なかなかスゴイ。

 『創』はこの何年か、赤字が累積して厳しい状況が続き、制作費がまかなえなくなっています。その雑誌の赤字を個人で補填してきたわけですが、私はもともと会社からは報酬を得ていないので、補填するにも限界があり、いろいろな人に迷惑をかけるようになってしまいました。(中略)ビジネスとして考えるなら雑誌を休刊させるしかないのですが、休刊させずにがんばってほしいと言ってくれる人も多かったので、無理を重ねてきました。



 一連の言いわけの何が「虫酸が走る」かというと、「オレ様は雑誌ジャーナリズムを担っているんだ。普通の中小企業とはわけが違うんだ」的な思い上がりと、その思い上がりに起因する甘えが透けて見えるからだ。
 「社会的意義のある特別な仕事をしているのだから、原稿料が払えなくて執筆者に迷惑かけても許されるはずだ」とでも言いたげなのである。

 しかも、「私はもともと会社からは報酬を得ていないので」(=「社長のオレだって給料もらわずに頑張ってるんだぞ!」)とか、「休刊させずにがんばってほしいと言ってくれる人も多かったので」とか、責任逃れと自己正当化が随所に見えて、いっそう見苦しい。
 だいたい、「休刊させずにがんばってほしいと言ってくれる人」たちというのは、「原稿料が払えなくてもいいからガンバレ」とでも言ったのか? んなアホな。

 これが一般の、製造業とかの中小企業経営者だったら、こんな言いわけは絶対にしないだろう。
 「ずっと支払いが滞っているが、下請けや取引先のみなさんも、ウチのことを応援してくれていると思っていた」なんてね。その前にとっとと会社畳めや、という話だ。


 市川ラクの『白い街の夜たち』(ビームコミックス)の既刊1~2巻を電子書籍で購入。
 これも例によって、「カドカワ祭り」で安くなっていたので買ったもの。2冊で500円以下。

 ひょんなことから新宿のトルコ料理店でバイトすることになった専門学校生をヒロインに据えた、エキゾティックでみずみずしい青春マンガである。

 出てくるトルコ料理が、ことごとくおいしそうだ。
 料理のみならず、トルコの文化を日本人に知らしめる啓蒙マンガとして優れているし、そのうえで青春マンガとしてもフツーに面白い。

 回を重ねるごとに各キャラクターのバックグラウンドが少しずつ明かされていき、その分だけ読者の感情移入が深まっていく。
 まるで、現実に知り合った人との友情が少しずつ深まっていくような感覚。巧みな構成だと思う。

 すき間が多いのに濃密な印象を与える絵も素晴らしい。ペン画なのに鉛筆デッサンのような味わいがある独特な絵柄である。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
21位
アクセスランキングを見る>>