大今良時『聲の形』


聲の形(5) (講談社コミックス)聲の形(5) (講談社コミックス)
(2014/08/16)
大今 良時

商品詳細を見る


 仕事上の必要があって、大今良時の『聲(こえ)の形』(講談社コミックス)を、既刊1~6巻まで一気読み。
 4巻時点で累計100万部を突破したというから、いまどきとしては大ヒット作と言ってよいだろう。

 聴覚障害をもった少女と、健常者の少年のラブストーリーである。

 ……というと、手垢にまみれた「感動もの」を連想するだろうが、本作には類似作には見られない斬新な仕掛けがなされている。
 主人公の少年を、転校してきた聴覚障害の少女を「率先してイジメた張本人」として設定しているのだ。これは新機軸というか、コロンブスの卵。「ううむ、その手があったか!」と唸った。

 過去の類似作では、イジメた側が主人公になることなど決してなかった。「そんな主人公が読者の共感を得られるはずがない」という、当然の判断からであろう。
 じっさい本作でも、小学生時代のイジメの経緯が描かれた1巻は、けっこう読むのがツライ。しかし、作品全体から見ればその部分はプロローグに過ぎず、2巻以降の展開こそがメインストーリーなのである。

 補聴器をくり返し壊すようなイジメが学校で問題化し、そこからこんどは少年がイジメのターゲットになる。それからほどなく少女は転校し、少年の前から消える。
 周囲から完全に孤立する日々の中で、高校生になった少年は絶望して自殺を決意する。そして、死ぬ前にやり残したこと――あの少女に会って謝罪すること――を片付けようと、消えてしまった少女を探し始めるのだ。

 「死ぬための再会」だったはずなのに、少年は少女に再会してふたたび「生きよう」と思う。贖罪のため、自分が壊してしまったものを取り戻すために……。

 俺は 俺が西宮から奪ったであろう沢山のものを 取り返さないといけない



 ……という少年のモノローグは、胸に迫る。

 まあ、身もフタもないことを言えば、「昔自分をイジメていた男子を好きになる障害者の少女なんて、いるわけねーだろ」という気もする。2巻以降のラブストーリー展開はファンタジーとしか言いようがない。
 しかし、基本設定の不自然さは否めないにしても、小学校~高校のクラス内の人間関係の描き方などは、すこぶる繊細でリアルである。

 『少年マガジン』連載の「もろ少年マンガ」なのに、私のようなオッサンにも「つづきが気になって仕方ない」と思わせるあたり、なかなかのものだと思う。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
21位
アクセスランキングを見る>>