鈴木涼美『身体を売ったらサヨウナラ』


身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論
(2014/11/26)
鈴木 涼美

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 昨夜は、編集者・カメラマンとのごく小規模な忘年会。
 行き帰りの電車で、鈴木涼美(すずみ)著『身体を売ったらサヨウナラ――夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎/1512円)を読了。

 著者は慶應SFCから東大大学院に進み、日経の記者をしていた社会学者・文筆家。
 学生時代に「佐藤るり」の芸名でAV女優として活躍していた時期があり、そのことが『週刊文春』の記事になって、今秋大きな話題をまいた。
 たしかに、学歴・経歴とAV女優であったことの落差は、おじさんたち(私含む)の関心をそそるに十分だ。

 本書は、著者が幻冬舎のサイトに連載した「お乳は生きるための筋肉です~夜のおねえさんの超恋愛論~」の単行本化。

 タイトルの印象から、AV女優時代の思い出とか、日経を辞めた経緯などが大きな紙数を割いて書かれているのだと思い込み(えげつない幻冬舎のことだから、そういう誤解を狙ってこのタイトルにしたのだろう)、下世話な興味から手を伸ばしてみた。
 しかし読んでみれば、AV女優時代のこと、日経記者時代のことにはほとんど触れられていないのであった。

 では何が書かれているかといえば、著者のキャバ嬢時代やホストクラブ通いの思い出、つきあった男たちの思い出、著者の女ともだち(風俗嬢やAV女優なども多い)をめぐるさまざまなエピソードなど……。
 恋愛論・幸福論としての側面もないわけではないが、論というよりは「自分語りエッセイ」である。

 性愛や風俗体験、ホストクラブ通いなどについて綴った優れたエッセイといえば、菜摘ひかるや中村うさぎのものが思い浮かぶ。本書は、菜摘や中村の作品に比べると、ずいぶん見劣りがする。
 「とめどない垂れ流し」という印象のダラダラした自分語りに辟易するし、さまざまな面で恵まれた環境に育った女性らしい“自覚なき上から目線”が随所に感じられ、読後感はよくない。

 ときおりキラリと光る一節はあるものの、著者はポスト菜摘ひかる、ポスト中村うさぎにはなり得ないと思う。

 私は、著者の最初の単著『「AV女優」の社会学』をまだ読んでいない。修士論文をベースにしたという同書を先に読んでいれば、また印象が違った(「へーえ、こういうくだけた本も書けるんだぁ」的な)のかもしれないが……。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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