松崎ナオ『正直な人』


正直な人正直な人
(1998/10/31)
松崎ナオ

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 最近、「ドキュメント72時間」というNHKの番組が気に入っている。
 この番組のよさは、「声高に主張する感じ」がまったくないところ。

 ドキュメンタリー番組というと、「社会問題を扱うもの」という無意識の縛りがある気がする。
 社会問題を扱う以上、作り手には多少なりとも「社会正義を背負っている」という気負いが生まれ、番組全体に「声高に主張する感じ」がみなぎってしまう。私はそれが苦手だ。

 ところが、「ドキュメント72時間」には社会問題を真正面から扱う感じがまったくない。1つの場所にカメラを据え、そこにいる人々の72時間をただ淡々と追う番組なのである。

 鶯谷の「信濃路」(西村賢太の随筆に頻出することで有名になった、24時間営業の居酒屋)を取り上げた回など、そこにやってくる客たちに次々と話を聞くだけの内容で、「よくまあ、これで番組として成立するものだ」と思った(ドキュメンタリーとしては味わい深いのだが)。視聴率をあまり気にしなくてよいNHKならではだろう。

 番組全体に静謐な印象があるのもよい。
 年のせいか、最近、バラエティ番組のゲラゲラ笑いなどをまるで受け付けなくなった。内容以前に、「うるさいから大声張り上げるな」と思ってしまうのだ。
 バラエティにかぎらず、民放の番組は総じて、過剰な演出が目にもうるさい。

 対照的に、「ドキュメント72時間」は番組全体がつぶやくような調子で作られている。カメラもナレーションも、登場する人々に、ただ静かに寄り添う。少しも声高ではない。その静謐さが心地よい。

 前置きが長くなった。
 その「ドキュメント72時間」のエンディングテーマとなっているのが、シンガーソングライター・松崎ナオの「川べりの家」。くり返し聴いているうちにすっかり気に入ってしまった。



 で、とりあえず、松崎ナオの最初のフルアルバムである『正直な人』(1998年)を買って、いまヘビロ中である。

 アマゾンのカスタマーレビューなどを見ると、「ドキュメント72時間」で松崎ナオを知ったという人は、私以外にもたくさんいるようだ(さすがNHKの影響力)。

 「川べりの家」の印象から、もっとフォークっぽいのかと思ったら、アルバムは意外にロック色が強い。
 曲によってはCoccoや椎名林檎を彷彿とさせたり、スザンヌ・ヴェガぽかったりする。

 コケティッシュな感じとボーイッシュでイノセントな感じが混じりあったヴォーカルがよい。
 いい曲も多い。「電球」と「あなたに向かって」は名曲だ。





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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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