平井和正『サイボーグ・ブルース』


サイボーグ・ブルースサイボーグ・ブルース
(2013/05/13)
平井和正

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 平井和正の訃報に接して、本棚の奥から『サイボーグ・ブルース』(角川文庫)を引っ張り出してきて再読。
 
 少年時代に何度となく読み返した、大好きな小説。平井和正といえば、「ウルフガイ・シリーズ」や『幻魔大戦』がよく知られているだろうが、私にとっては断じて『サイボーグ・ブルース』だ。
 Kindle電子書籍で、新装版が200円という激安価格で売っていたので、それもポチった(ついでに言うと、この電書版のカバーイラストはひどい。内容とまるでかけ離れた、『ベルセルク』みたいな外見のサイボーグの絵。なんじゃこりゃ) 。

 平井が原作を書いたマンガ『エイトマン』への、「鎮魂歌」として書かれたという作品。エイトマンはサイボーグ刑事であったが(※)、この『サイボーグ・ブルース』もサイボーグ特捜官が主人公である。

※「8番目の刑事はスーパーロボット」というキャッチフレーズのとおり、『エイトマン』では「サイボーグ」という言葉は使われていない。しかし、「殉職した刑事の人格と記憶がロボットに移植された」という設定なので、ロボットというよりサイボーグである。(参考→「エイトマンとは」【ピクシブ百科事典】


 僕はこの連作長編において、マンガのフレームと商業主義的センセーショナリズムから解放されたエイトマンの実像をえがきたかった(早川書房版『サイボーグ・ブルース』のあとがき「エイトマンへの鎮魂歌」より)



 ゴッサム・シティのような腐敗しきった未来都市が舞台。悪徳警官と犯罪シンジケートの罠にはまって射殺された黒人警官が、サイボーグ特捜官として蘇る物語だ(途中で特捜官を辞め、私立探偵になる)。
 
 最初に本として刊行されたのは、1971年。いま読み返してみると、ずっとあとに登場した『ブレードランナー』のような雰囲気がある。ハリウッドで映画化したら面白いと思う(もっとも、『エイトマン』と本作が『ロボコップ』の元ネタだとも言われているようだが……)。

 ハードボイルドSF小説の先駆にして金字塔であり、2015年のいま読んでも、古臭さはほとんど感じない。
 平井和正には、こういう小説をもっとたくさん書いてほしかったなあ。

 ほかの作品では、やはりハードボイルドSFの範疇に入る『メガロポリスの虎』や『死霊狩り(ゾンビー・ハンター)』が好きだった。
 『死霊狩り』は、『エイトマン』と同じく桑田次郎とコンビを組んだマンガ『デスハンター』のノベライズ。

 一時期はいちばん好きな作家だった平井和正だが、『幻魔大戦』の途中で「これはもうついていけない」とさじを投げ、ファンをやめた。宗教団体「GLA」にのめり込んでからの彼は、それ以前とは別の作家になってしまったのである(参考→「幻魔大戦とGLA」)。

 『幻魔大戦』は、第7巻くらいまでガマンして読んだだろうか。私同様、あの作品で「ファンをやめた」人は多いことだろう。
 ただし、長編小説化される前の、最初のマンガ版『幻魔大戦』(石森章太郎との共作)は、いま読んでも名作だと思う。

 ともあれ、一時期熱心に読んだ作家の訃報は寂しい。ご冥福をお祈りします。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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