合理的なのに愚かな戦略 (2014/10/23) ルディー和子 商品詳細を見る |
「2月はわりとヒマになる」という腹づもりでいたのだが、いつの間にか月末まで仕事がギッシリ。
ま、我々フリーランサーにとっては、「仕事がないつらさ」に比べれば、「忙しいつらさ」なんて「つらさ」の範疇にも入らないのだが……。
ルディー和子著『合理的なのに愚かな戦略』(日本実業出版社/1836円)読了。仕事の資料として読んだものだが、読み応えある好著だった。
著者はマーケティング界の第一人者にして立命館大学教授。セブン&アイ・ホールディングスの社外監査役でもある。
その著者が、日本や各国のさまざまな有名企業の失敗事例を通して、失敗の深層を分析していく本。
畑村洋太郎さんがずっと取り組んでいる「失敗学」の、ビジネス特化版という趣もある。
マーケティング理論のみならず、行動経済学や心理学、脳科学など、さまざまな分野の先端的知見を駆使しての分析の手際は、鮮やかでスリリング。読んでいて知的興奮を覚える。
おもな対象読者は企業経営者などのビジネスマンであろうが、私のような門外漢が読んでもためになる。
たとえば、第2章「プライシングの逆説」では、いわゆる「牛丼戦争」(吉野家・松屋・すき家などによる牛丼の安売り競争)が「10年間を棒にふった」大失敗に終わった原因が、くわしく分析されている。
この部分だけでもすこぶる面白く、質の高いビジネス論として独立した価値を持つものである。
また、第4章「コミュニケーションの逆説」は、日本企業のコミュニケーション下手の深層に迫って、一種の日本文化論としても読める内容になっている。
そのように、たんなるビジネス書に終わらず、さまざまな読み方が可能な奥深い内容になっているのだ。第一級のビジネス書である。
- 関連記事
-
- ピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン』
- 石坂典子『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える!』
- ルディー和子『合理的なのに愚かな戦略』
- 横田響子『女性社長が日本を救う!』
- 今野晴貴『ブラック企業』