NHK「女性の貧困」取材班『女性たちの貧困』


女性たちの貧困 “新たな連鎖女性たちの貧困 “新たな連鎖
(2014/12/16)
NHK「女性の貧困」取材班

商品詳細を見る


 NHK「女性の貧困」取材班・著『女性たちの貧困――“新たな連鎖”の衝撃』(幻冬舎/1512円)読了。

 「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」の「女性の貧困」シリーズを書籍化したもの。
 NHKならではの機動力と資金力(一つの取材に潤沢な手間ヒマをかけられる、という意味)を駆使して、丹念な取材・調査がなされた労作だ。

 「貧困に苦しむ女性なんて、日本にだって昔からたくさんいたではないか。なぜ最近になって急に『貧困女子』が騒がれているのか?」――各種メディアの「貧困女子」特集などを見て、そういぶかしむ人は多いだろう。
 本書を読むと、その理由がよくわかる。

 まず、昔の「女性の貧困」は「結婚をするまでの、一過性のもの」としてとらえられていたから、深刻視されなかったこと。
 だが、未婚化・晩婚化の進展や離婚の増加、男性側の収入の不安定化などがあって、「結婚をして貧困から逃がれる」という選択肢を持たない女性、または「結婚しても貧困から逃がれられない女性」が増えた。そのために「女性の貧困」が可視化されたのだ。

 また、男女間の賃金格差も、いまなお根強く残っている。
 たとえば、「同じ非正規雇用であっても、女性は男性の八割程度の賃金にとどまっている」という。非正規雇用の拡大が貧困層を拡大させた中にあっても、とくに女性の非正規雇用者は困窮に陥りやすいのだ。
 そうした賃金格差の背景には、「『長く働けない女性労働者は人材として活用できない』という考え方が定着している日本の企業文化」がある、と分析されている。

 データ/解説部分と、貧困女性たちの声を捉えた取材部分のバランスがよい本である。

 取材部分でとくに衝撃的なのは、10代の姉妹とその40代の母が、2年間もネットカフェで暮らしていたという事例。
 もっぱら貧困女性が宿泊に使うネットカフェ(利用者の約7割が女性の長期滞在者)が新宿にはあるそうで、そこに3人が一部屋ずつ(といっても、一部屋が一畳程度)を借りて暮らしていたという。
 いわば“ネカフェ難民家族”であり、「貧困の連鎖」をそのまま可視化したような事例といえる。

 また、シングルマザーが性風俗の世界に入る事例も、一章を割いて紹介されている。
 風俗店側もシングルマザーを貴重な労働力と見なして優遇しており(子どもたちとの生活がかかっている分、独身女性より真面目に仕事に取り組む傾向があるから)、独自の託児所をもうけるなどして彼女たちの生活を手厚くケアしている。

 社会保障の網をすり抜けてしまった貧困女性を、性風俗がセーフティネットとなって「救って」いる――そのことを、番組のコメンテイタ-となった専門家は「社会保障の敗北」と表現したという。

 「妊娠と貧困」の章では、予期せぬ妊娠によって自分では育てられない子どもを産んだ女性と、養子を欲しがる夫婦を仲介するNPO「Babyぽけっと」の活動が紹介される。
 この章はすこぶるドラマティックで、1冊の本に広げてもよいと思った。

 衝撃的な事実の数々を冷静な筆致で綴り、「女性たちの貧困」を多角的に浮き彫りにした好著。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
24位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
18位
アクセスランキングを見る>>