山口周著『外資系コンサルの知的生産術――プロだけが知る「99の心得」』(光文社新書/928円)読了。
コンサルの世界だけで通用するような話も中にはあるものの、全体としては分野を問わない普遍的な内容だ。
いわゆる「ライフハック」の本ではない。つまり、この本を読んだからといって、日々の知的生産の効率が急に上がるわけではないのだ。本書に書かれている「99の心得」の大半は、もっと深い次元の「心構え」の話である。
その「心構え」の中に示唆に富むものが多く、仕事に向かう姿勢の見直しを促してくれる。
どっかで聞いたような凡庸なアドバイスもないではないが、その場合にも著者の語り口のうまさ(例に挙げるエピソードの的確さなど)で読む者を唸らせる。
とくに、第5章(全5章)の「知的ストックを厚くする」は、読書論として独立した価値をもつ素晴らしい内容だ。
メモしておきたいような名フレーズも随所にある。たとえば――。
プロフェッショナルというのは常に100%を目指すものだと考えている人がいますが、この考え方は完全に間違っています。そんなことをしてもプロフェッショナルとしてのキャリアは全うできません。プロフェッショナルというのは80%の力でクライアントを継続的に満足させられる人のことです。常に100%の力を出そうとするのはむしろアマチュアです。(中略)毎日の仕事で常に100%の力を発揮していたらそれこそ体がもちません。
プロというのは常に、求められている水準をギリギリ最低限の労力でクリアする人たちなのです。(太字強調は原文ママ)
「知的生産術」本の新たなスタンダードになり得る好著。
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