団鬼六『不貞の季節』



 団鬼六著『不貞の季節』(文春文庫)読了。

 先日読んだ『赦す人――団鬼六伝』の中で、タイトル作の短編「不貞の季節」について、かなり紙数を割いて言及されていた。それで興味を抱いて読んでみたしだい。

 「不貞の季節」「美少年」「鹿の園」「妖花 あるポルノ女優伝」の4編を収めた短編集である。

 「不貞の季節」は、団鬼六の最初の妻が不倫に走り、それが原因で離婚に至るまでの顛末を元にしたもの。『赦す人』と併せて読むと、どのあたりが脚色されているのかがよくわかる。
 古い言葉で言えば「コキュ(cocu=妻を寝とられた男)もの」、流行り言葉で言えば「NTR(ネトラレ)もの」である。

 団は妻の不貞を知って見苦しいほど動揺するのだが、それ以前に自分はさんざん不倫をしたり愛人を囲ったりしているのだから、妻に対する激しい怒りは身勝手と言うしかない。
 それはともかく、「NTRもの」としてはなかなかよくできた小説である。映画にもなったそうだ。

 他の3編も自伝的な作品であり、元ネタになった話が団のエッセイの中に登場している(『一期は夢よ、ただ狂え』など)。エッセイと読み比べてみると、それぞれがかなり脚色されている。

 団鬼六の作品にはSM小説と一般小説の二系列があるわけだが、本書に収められた4編にはそれぞれ強烈な性描写があり、一般小説とSM小説の中間に位置するものといえる。

 団が私生活においても長く交友を結んだ、ポルノ映画における「SMの女王」――谷ナオミを描いた「妖花」が、際立って面白い。もう少しふくらませて長編にしてもよかった気がする。谷ナオミの波乱万丈の半生自体がドラマティックだし、彼女は女優としても、一人の女性としても魅力的だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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