小谷野敦『このミステリーがひどい!』



 小谷野敦著『このミステリーがひどい!』(飛鳥新社/1620円)読了。

 ヘタなことを言うとマニアがうるさい、「地雷原」のようなジャンルがある。ミステリー小説もその一つだろう。
 本書は、ミステリー・マニアというわけではない(むしろ「推理小説嫌い」を自称する)著者が、その地雷原に果敢に踏み込んだ記録である。しかも、第5章「SF『小説』は必要なのか?」では、SF小説というもう一つの地雷原にまで踏み込んでいる。

 そのため、Amazonのカスタマーレビューではすでにマニアたちの集中砲火を浴びているのだが、ミステリー・マニアではない私には楽しく読めた。

 内容の三分の一くらいは、ミステリー小説を原作にしたテレビドラマや映画の話になっている。また、ミステリーと関係のないSFの話に一章が割かれているように、随所に脱線がある。それに、この著者の本ではよくあることだが、自分語りが異様に多い。

 それでも、著者ならではのミステリー四方山話として、最後まで飽きさせない。
 なるほどと膝を打ったくだりも多い。たとえば――。

 日本のミステリーが隆盛を見るのは、やはり「角川商法」以後であって、そこはやはり角川春樹の功績なのである。



 だいたい、日本人は完訳にこだわり過ぎで、小説というのは往々にして水増しして一冊にしているのだから、抄訳は大いに用いるべしである。(中略)どうも世間には、カネを出して買うのだから本は分厚いほうがいいと思っている人がいるようだ。



 一般人が主役になった推理=冒険小説には、「なぜ警察に言わない?」と思う場面がしばしばある。(中略)どうも、革命にロマンを感じる人たちには、警察は国家の手先だから、警察に手を委ねたくないという思いがあるらしいが、そりゃ無茶である。



 現代日本のミステリー作家たちへの歯に衣着せぬ寸評も、おおむね痛快であった。たとえば、森村誠一に対する次のような評価。

 清張も森村も社会派だが、清張にはハイブラウな文化へのしっかりした敬意がある。森村は、知りもしないでバカにしている。全然違うのである。森村は、その教養のなさが、作品に現れてしまっている。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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