沢田ひろふみ『山賊王』



 仕事上の必要があって、沢田ひろふみの『山賊王』全13巻を古本で購入し、一気読み(マンガを読むのも仕事のうちなのである)。

 少年マンガには珍しい、鎌倉時代末期を舞台にした歴史マンガである。
 ストーリーの骨格は史実に基いているものの、主人公の家に伝わる不思議な力をもつ刀が重要な役割を果たすなど、「伝奇もの」としての色合いも濃い。

 暴君・暗君として民を苦しめる鎌倉幕府の執権・北条高時に父を殺され、復讐の炎を燃やす若武者・樹長門(いつき・ながと)が主人公。

 長門の胸には星形のアザがあった。同じアザを体のどこかに持つ5人の選ばれし者たちを集め、6人が力を合わせれば、鎌倉幕府を倒せる――そんなお告げのとおり、運命に引き寄せられ集い来る「星の者」たちは、楠木正成・足利尊氏・新田義貞・赤松円心らであった。
 
 『アストロ球団』の「アストロ超人」は、体に野球ボール型のアザをもつという設定だったなァ。まあ、この手の設定のオリジナルは『南総里見八犬伝』だろうが……。

 この設定が示すとおり、古き佳き少年マンガの香りを濃厚に残したヒロイックな歴史マンガである。細部までよく練られており、大人の鑑賞にも十分堪える。

 度重なる戦に際して、主人公の奇抜な戦略が奏功する展開が、くり返し描かれる。「戦略マンガ」としてもよく出来ており、横山『三国志』などが好きな人にとっても面白く読めるだろう。

 主人公たちが鎌倉幕府を打ち倒し、「建武の新政」が始まるところで、物語は幕となる。
 そのとき、6人のうち5人のアザは消えるが、足利尊氏のアザだけは消えない。尊氏は「これは何の啓示なんだ…まだ私には残された使命があるというのか!?」と戸惑う。余韻嫋々のエンディングである(南北朝の動乱までが描かれた続編が読んでみたい)。

■関連エントリ→ たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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