前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』



 昨日は、取材で京都へ――。
 早朝に家を出て、夕方には帰宅するとんぼ返り。書くべき原稿もたまっているので、どこにも寄り道せず。

 行き帰りの新幹線で、前田亮一著『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書/886円)を読了。
 UFO、UMA(未確認動物)、超能力、心霊写真、ピラミッドパワー、大予言など、1970年代のオカルトブームを総花的に再検証し、最後にいまの日本におけるオカルトについて考察した本。

 といっても、批判的検証からは遠いし、「と学会」の「トンデモ本」シリーズのような「オカルトブームを笑い飛ばす」という角度でもない。

 著者は取り上げたオカルト事象について、否定も肯定も注意深く避けている。「こういうことがありました」的な客観的記述に徹しているのだ。
 ただし、取材で会ったユリ・ゲラーについて「エネルギッシュで若々しく、その迫力には圧倒されるばかりであった」と肯定的に言及しているように、“やや肯定寄り”なスタンスではある。

 「今を生き抜くための」というタイトルはなんだかよくわからないが、「けっして面白半分にオカルトを取り上げた本じゃないんですよ。社会的意義のある真面目な考察なんです」という、世間向けのエクスキューズが込められているのだろう。

 著者の意図はどうあれ、私は興味本位でこの本を楽しんだ。なにしろ、著者とも同世代であり、子ども時代に70年代オカルトブームの直撃を受けた世代だから……。

 本書で取り上げられた事象でいうと、ユリ・ゲラーの超能力も、『うしろの百太郎』に出てくる守護霊も、ノストラダムスの大予言も、ツチノコの存在も、私はすべて信じていた(子どものころの話である)。
 だからこそ、“70年代オカルト・カタログ”としても読める本書は、「あー、こんなのあったねえ」と単純に懐かしくて楽しかった。

 たとえばツチノコについて、『釣りキチ三平』で知られる矢口高雄のマンガ『幻の怪蛇バチヘビ』で、私は知った。
 しかし、いまとなっては「バチヘビ」なんて呼び方はほぼ忘れ去られているだろう。だからこそ、『幻の怪蛇バチヘビ』が70年代ツチノコ・ブームのきっかけであったことを正しく指摘する本書の記述を、うれしい思いで読んだのだ。

 「考察」の面では、エピローグの次の一節が心に残った。

 なぜ日本は、73年のノストラダムスの大予言に始まるオカルトブームに、90年代後半までどっぷりと浸かっていたのか? そこには、日本人特有の滅びの美学と滅亡史観があったと思う。そして、オカルトブームとともに選民思想的な精神主義が噴出したのだ。それは、日本的な宗教観といってもいいだろう。



 この一節は、明らかにオウム真理教事件を念頭に置いて書かれている(ノストラダムスの大予言を取り上げた第7章にも、オウムへの言及がある)。
 上祐史浩らオウムの幹部たちは、70年代オカルトブームの直撃を受けた世代であり、オウムの活動にもその影響ははっきりと見てとれる。

 連合赤軍事件が日本の学生運動にとどめを刺したように、「オタク世代の連合赤軍事件」とも呼ばれたオウム事件は、70年代からつづいていたオカルトブームにとどめを刺した。
 それでも、かつて日本を「オカルト大国」にした心性は、いまも変わらず毛根のように残っている。きっかけがあれば、すぐにまた芽吹くのだ。本書は、そのことを改めて感じさせる。

 私同様、70年代オカルトブームをリアルタイムで知る世代なら、面白く読める本だろう。

■関連エントリ→ 大田俊寛『現代オカルトの根源』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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