カレー沢薫『ブスの本懐』



 昨日は、都内某所で打ち合わせが一件。
 行き帰りの電車で、カレー沢薫著『ブスの本懐』(太田出版/1080円)を読了。

 「cakes(ケイクス)」連載のコラム「ブス図鑑」の単行本化である。
 
 カレー沢薫はマンガ家兼コラムニストだが、私はマンガ家としてよりも、むしろコラムニストとして評価している。
 そして、旧著のコラム集『負ける技術』『もっと負ける技術』でいちばん笑えたのは、「ブスネタ」のコラムであった。
 ゆえに、ブスネタのコラムのみを集めた本書が面白くないはずがない……と思って予約購入したもの。

 


 “ブスに厳しいブス”カレー沢薫がすべての迷える女性に捧げる、逆さに歩んだ「美女への道」



 ……と、帯の惹句にはあるが、実際のカレー沢薫は意外にも「ふんわり美人」であるらしい。
 まあ、「ブスが書いている」ということにしなければ、とてもこんな本は出せまい。ましてや、男のコラムニストが書いたら取り返しのつかないことになろう。

 内容は、半ば期待どおりだが、半ばガッカリ。
 途中までは快調で大いに笑えたのだが、終盤になるとさすがにネタ切れしてきた様子で、明らかにボルテージが下がってしまっているのだ。
 ブスネタのコラムだけで本1冊を書くこと自体、かなり無理があるわけだから、途中の失速もむべなるかなではある。

 とはいえ、値段分はしっかり楽しめるし、カレー沢薫のコラムが好きな人なら必読・必携の1冊といえよう。

 以下、笑えた一節を例として引用。

 日本は天然物志向が強いのか、整形美人は叩かれがちである。
 それを言うなら、こっちだって「産地直送もぎたてブス」として、良い値がついてもいい気がするのだが、大体「規格外品」でワゴンに乗せられてしまうのだ。



 ブスが食生活に気をつけると、「スタイルがよく、肌が綺麗で天使の輪を持つブス」という、単純にブスと呼ばれた方が良かったんじゃないか、というような評価を下されてしまうわけだが、逆に「肌と髪が汚く、新弟子検査の基準をクリアした体型のブス」というのは、鬼に金棒というよりも、金棒を持った鬼が逃げるレベルになる。



 この本の最初に「『美人は3日で飽きるが、ブスは3日で慣れる』は、どう考えてもブスが考えた言葉」と書いたが、同じくエスプリの効いたブスが考えたと思われる言葉に「美人は全部、同じに見える」というものがある。
(中略)
 その点、ブスはすべて一点もの、オーダーメイドで作られた感がある。顔のパーツ一つひとつはそんなに悪くないのに、それらが絶妙な配置によりブスになっている職人技の光るブスもいる。おそらく1ミリずれたら普通の顔になってしまう。そんな繊細な世界なのだ。
 つまり、バリエーションだけならブスは美人に圧勝なのである。



 ところで、帯に載っている読者からの感想コメントが、なにやら“女性向け自己啓発書”の感想のようで、ちょっと違和感。

「美人は大変そう、ブスで良かった!と思った。学生時代にこの本に出会いたかった」(40代/女性)

「ありのままの自分で良いのだ、と思える一冊です」(30代/主婦)



 という具合。「いやいや、これってそういうマジメな本じゃないから」と言いたくなる。
 まあ、このコメント自体がヒネリにヒネったギャグなのかもしれないが……。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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