中川淳一郎『バカざんまい』



 中川淳一郎著『バカざんまい』(新潮新書/821円)読了。

 『週刊新潮』連載のコラムの書籍化。
 世にはびこるさまざまなバカを「鋭いツッコミで成敗していく」「現代日本バカ見本帳」とのことだが、あまり笑えなかったし、痛快でもなかった。

 私は中川淳一郎がこれまでに出してきた、“ネットにはびこるバカども”を笑い飛ばす本はわりと好きだ。

■関連エントリ 
中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』
中川淳一郎『ネットのバカ』
中川淳一郎『ウェブを炎上させるイタい人たち』

 中川はネットニュース編集者であり、ネット言論については専門家だから、ネットに的を絞るかぎり、プロならではの鋭い視点が感じられた。
 しかし、本書のように社会全般にフィールドを広げると、たちまち底の浅さが露呈してしまう。

 中には面白いコラムもあるが(本書でもネット・ネタの回はわりと面白い)、首をかしげる主張も目立つ。

 たとえば、「『行列』を持ち上げるバカ」という項目があって、新製品を買うために行列する人々などを揶揄しているのだが、著者が自明の前提のように書いている次のことが、私には理解できない。

 行列に関しても「好きなものに情熱を注ぐのは悪くないネ」「新しいものに関心を示すのは見上げたもんゼ」みたいに持てはやす風潮があります。



 行列する人=善意の人という世間の了解、本当にそれでいいの?



 そんな「風潮」や「世間の了解」が、いったいどこにあるのだろう? むしろ世間全般が、行列する人たちに対して冷ややかなのでは?

 このコラムにかぎらず、“連載のネタに困って、無理くり「バカ」を作り上げているような苦しさ”が目立つ本である。

 この手の本では、呉智英の80年代のベストセラー『バカにつける薬』が最も優れていたと思う。
 同書の冒頭に収められたコラム「折々のバカ」は、「折々のうた」を模したスタイルでさまざまな「バカ」をやり玉に上げたものだが、見開き2ページのコラム(元は『噂の眞相』に連載されたもの)の中に見事な「文の芸」があり、感心させられた。

 本書にも呉智英に対する言及があるし、他の週刊誌では中川と呉智英が週替りでコラムを連載しているから、中川も当然『バカにつける薬』は読んでいるだろう。

 呉智英の「洗練された悪口の芸」を手本に、中川はもう少し芸を磨くべきだと思う。 

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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