ザ・セクション『ザ・セクション』『フォーワード・モーション』



 ザ・セクションの『ザ・セクション』(1972年)と『フォーワード・モーション』(1973年)を聴いた。

 ザ・セクションは、当時ジェイムス・テイラーのバックバンドを務めていた面々が、そのかたわらやっていたバンド。
 メンバーは、ダニー・コーチマー、クレイグ・ダーギ、ラス・カンケル、リー・スクラーの4人。
 いずれも一流スタジオ・ミュージシャンで、ジェイムス・テイラー以外にも、キャロル・キング、リンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウンらのアルバムに参加。70年代のウエスト・コースト・ロックを陰で支えてきた面々とも言える。

 ザ・セクションは3枚のアルバムを残したのみで自然消滅してしまうが、今回聴いた2枚はファーストとセカンドに当たる。

 私がいまごろ手を伸ばしたのは、先日聴いたドリームスのアルバムとの関連からである。
 ザ・セクションのファーストにはマイケル・ブレッカーがサックスでゲスト参加しているし、この2枚のアルバムもドリームス同様、「FUSION 1000」という廉価盤シリーズで最近リイシューされたのだ。

 2枚とも、全曲インスト。ジェイムス・テイラーの音楽との共通性は、ファーストのほうに少しだけ感じられる。「ウェストコースト・ロックの香りを感じさせるロック・インスト」という趣の曲が少なくないのだ。

 いまではザ・セクションはフュージョン・バンドにカテゴライズされているが、70年代初頭の発表当時には、まだフュージョンというジャンル自体がなかった。
 にもかかわらず、「1980年代半ばに発表されたフュージョンのアルバムだ」と言われても信じられるほど、サウンドが洗練されている。驚くべき先駆性であり、「10年早すぎたバンド」だと思う。

 ファーストのピザを用いたジャケットはオシャレで気が利いているが、対照的にセカンドのジャケットはショボい。ライヴ・フォトが「どうでもいい感」満々に用いられていて、ブートレッグみたいだし、「これってライヴ・アルバム?」と勘違いさせてしまう点もひどい。



 しかし、ジャケのショボさとは裏腹に、このセカンドの中身はなかなかスゴイ。

 ファーストにはアメリカン・ロック的なレイドバック感があったのに対し、こちらは曲によっては非常に先鋭的で、しかも全体にカンタベリー系ジャズ・ロック的な詩情と陰影に満ちている。予備知識なしに曲だけ聴いたら、アメリカのバンドとはとても思えないほど。


↑セカンド所収の「Bullet Train」。複雑な曲構成、スリンングな展開は、ややブランドX的。

 フュージョンの源流の一つ……というより、「フュージョン以後のジャズ・ロック」を1970年代初頭に先取りしていたバンド、という趣だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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