荻原規子『源氏物語 宇治の結び』



 昨日は、取材で京都へ(日帰り)――。

 行き帰りの新幹線で、荻原規子訳『源氏物語 宇治の結び』(上下巻/理論社/各1836円)を読了。書評用読書。

 『源氏物語』のラスト十帖である「宇治十帖」を、児童文学やファンタジー小説で知られる作家の荻原規子が現代語訳したもの。
 京都に行く新幹線の車中で読むのに、これほどふさわしい本がほかにあるだろうか? しかも、今回の取材先は宇治市の「宇治おうばく病院」であったし。

 荻原規子は以前にも、『源氏物語』の主要部分を「紫の上」を中心に再構成した、『紫の結び』という現代語訳を刊行している。本書はその続編というか、スピンオフというか。
 そもそも、「宇治十帖」は光源氏没後の物語であり、それ自体が『源氏物語』のスピンオフのようなものと言えなくもない。

 光源氏の末子・「薫」と、光源氏の孫で明石の姫君が産んだ「匂宮」という2人の貴公子が、宮家の姫君たちと恋をしていく物語。

 三角関係のラブストーリーである点など、現代の恋愛小説に通じる部分もある。
 林真理子も、「宇治十帖」をフランスの心理小説のようなタッチで現代に蘇らせた『STORY OF UJI  小説源氏物語』というのを書いている。

 色恋のことしか考えていない平安貴族の思考回路は、私にはまるで共感できない。それでも、四季折々の美しい風物の描写が随所に織り込まれ、愉しく読めた。

 荻原規子の訳は平明にしてスピード感があり、現代の読者を『源氏物語』の世界に誘う最初の入口としてふさわしい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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