追悼・永島慎二

漫画家残酷物語―シリーズ黄色い涙 (1)漫画家残酷物語―シリーズ黄色い涙 (1)
(2003/06)
永島 慎二

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 永島慎二さんが亡くなった。
 マンガ家としては引退状態であった人だから、いまの若い人たちにはまったくなじみのない名前だろう。

 間違えるやつが絶対出てくるだろうから先に言っておくけど、水島新司じゃねえぞ!

 以下、「ヨミウリ・オンライン」の記事(2005年7月6日3時3分)から引用。

 「漫画家残酷物語」などの叙情的・感傷的な作品で青年漫画の教祖的存在だった永島慎二さんが6月10日、心不全で死去していたことが5日分かった。67歳。告別式は親族のみで行う。
(中略)
 その後、新宿で2年にわたるフーテン体験を基にした連作「フーテン」を手塚治虫主宰の「COM」誌に連載。同時に「ガロ」誌でも活躍して、郷愁とペーソスに満ちた“人生派”漫画を開拓、後進の漫画家に絶大な影響を与えた。



 「青年漫画の教祖的存在だった」と言われても、ほとんどの人はピンとこないだろう。川本三郎の名著『マイ・バック・ページ/ある60年代の物語』の中の一編が、そのへんの雰囲気をよく伝えているので、引用する。

 私が住んでいた町、阿佐谷に“ぽえむ”という小さな喫茶店があった。(中略)永島慎二のマンガにしばしば登場することで有名になり、あの界隈に住む若者たちのささやかなたまり場になっていた。
(中略)
 朝日ソノラマから永島慎二の『フーテン』や『漫画家残酷物語』が出版されたのは六五~六年ではなかったろうか。当時もう大学の授業にほとんど顔を出さなくなった私は、永島慎二のマンガにかぶれて、新宿でヒッピーまがいの生活をすることが多くなった。
(中略)
 永島慎二もおそれ多くて近づけなかった。“ぽえむ”は狭い喫茶店だったから、すぐ隣に永島慎二がいるというのに、なかなか声をかけられない(「町はときどき美しい」)



 私にとっては、いちばん思い入れのあるマンガ家。代表作『漫画家残酷物語』は、私の“生涯ベストワン・マンガ”である。
 もちろん、『フーテン』も『若者たち』も「青春裁判」も好きだ。

 「裁判長、ひとつだけ……お聞きしたいことがあります」
 「なんだね?」
 「血を流さない青春なんてあるんでしょうか?」(「青春裁判」)
             *
 「人間てえものはな…悲しいものだぞ! だからな、おれはその悲しい人間の…長い長いともだちになれるような、そんなまんがが描きたいんだ!」(『フーテン』)



 ……などという永島作品の中の言葉は、あまりにセンチメンタルで、いまとなっては鼻が曲がりそうにクサイ。が、それでもやっぱりしみじみといい。

 シンプルでありながら、誰にも真似のできないうまさと味わいのある絵柄も好きだ。『フーテン』や『若者たち』に出てくる女性たちの表情の、なんといきいきと魅力的なこと。

 ご冥福をお祈りいたします、心より。

 逝去を機に、ほとんどが絶版状態である永島作品が復刻されることを願う。とくに、『フーテン』、『少年期たち』、『若者たち』、『そのばしのぎの犯罪』はぜひとも。
 『漫画家残酷物語』は、最近、ふゅーじょん・ぷろだくとから復刻された(2004年7月に刊行予定だった第3巻がいまだに出ていないのは、いったいどうしたことか?)

 名短編「青春裁判」は、文春文庫ヴィジュアル版のアンソロジー『マンガ黄金時代/'60年代傑作集』に収録されているから、比較的入手しやすいかな。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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