川崎大助著『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書/929円)読了。
著者が4年前に講談社現代新書で出した『日本のロック名盤ベスト100』は、私には大いに不満の残る内容だった。
不満はおもに、「名盤」のセレクトの偏りについて。感じた不満の中身を、ネチネチとブログに書きつらねたものだ。
■関連エントリ→ 川崎大助『日本のロック名盤ベスト100』
本書は同書の続編というか、洋楽ロック編。洋楽といっても当然、九割方は英米のロックで占められている。
著者自身が日本のロック名盤ベスト100を選んだ前著とは対照的に、本書はセレクトを外部に委ねている。
米『ローリング・ストーン』誌と英『NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)』誌という、両国を代表する音楽メディアが発表した、各500枚の「ロック名盤リスト」を素材に作られたベスト100なのだ。
著者は、2つのリストに重複して登場する196枚に絞り、そこから100枚をセレクトした。
基準になったのは、独自のポイント付与ルール。各リストの順位に沿ったポイントを付与し(1位のアルバムには500ポイント、500位なら1ポイントを付与する、という具合)、その後にアルバムごとにポイントを合算する、というものである。
要するに、著者の主観は一切入っていない客観的ランキングであり、それは英米のロック聴き巧者たちが選び抜いた正統的評価に基づいている……というわけだ。
ただ、著者も認めるとおり、元になった『ローリング・ストーン』と『NME』のベスト500は、それぞれかなり偏ったセレクトになっている。
したがって、偏った2つのランキングの中間をとり平均化した本書のベスト100も、必然的に偏っている。
著者自身も「あとがき」で触れているのだが、ベスト100の中にビートルズが6枚、ボブ・ディランが5枚選ばれているなど、計17組の〝強者〟がベスト100の約半数(47枚)を占めるという格差が生じている。
一方、U2、ポリス、クイーン、イーグルス、エルヴィス・プレスリー、エルトン・ジョンといった、上位にランクされてしかるべき大物たちが、1枚も選ばれていない。
ジャンルの偏りもある。
たとえば、プログレはピンク・フロイドの『狂気』が選ばれているのみだ。キング・クリムゾンもイエスもELPも、影も形もない。
うーん、これで『教養としてのロック名盤ベスト100』を謳われても、ちょっとなァ……。
ただ、偏りはあるものの、選ばれた100枚それぞれについての著者の解説は、とてもよい。
解説は、上位10枚のアルバムが各4ページ、それ以外は各2ページ。どれもコンパクトに手際よくまとまっていて、読み物としても情報としても有益なものになっている。
その点で、前著『日本のロック名盤ベスト100』よりも、本としての出来は上だと思った。