「サマー・ソング」ベスト20



 スチャダラパーの「サマージャム’95」の歌詞ではないが、10代のころ、夏になるとよく、お気に入りの「夏っぽい曲」ばかりを集めたテープを作ったものだった(ありがちですね)。
 では、いまの私が同じようなテープを作ったとしたら? というわけで選んでみたのが下の20曲。サザンとかチューブとか山下達郎とかは意地でも選ばないのである。           

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1位「夏なんです」(はっぴいえんど)
 トリビュート盤『HAPPY END PALADE』ではキリンジがカヴァーしていた名曲。キリンジのヴァージョンは“都市の夏”というムードに仕上がっていたけれど、名盤『風街ろまん』に収められたこの原曲は、昔ながらの田舎の夏休みという雰囲気。少年時代の夏休みの思い出が心に広がる、ノスタルジックな名曲。

2位「ポロメリア」(Cocco)
 Coccoの曲の中でも、「遺書。」や「Raining」と並ぶ屈指の名曲。ポロメリア(=プルメリア)とは花の名。曲名どおり、極彩色の花が咲き乱れる南の島の夏を思わせる、スケールの大きい曲。
「見上げれば
終わりをみたこともない
目眩を覚えるような空(あお)」
 ――リフレインのこのフレーズが、耳に焼きついて離れない。

3位「サマージャム’95」(スチャダラパー)
 ラップでこんなに抒情的な「サマー・ソング」が作れるなんて、私はこの曲を聴くまで想像だにしなかった。私がスチャダラパーに対して抱いていた偏見(=「どうせお笑いラップでしょ」)も、この1曲で吹っ飛んだ。
 これは、「夏なんです」から四半世紀近くを経て生まれた、“ジャパニーズ・サマーソング”のスタンダードだ。

4位「LADY COOL」(ルースターズ)
 ルースターズのラスト・アルバムでもある名盤『FOUR PIECES』収録の名曲。終わりゆく夏の恋を歌う歌詞が、ルースターズというバンドの終焉と二重映しになって哀切無比。間奏のギターソロの鳥肌ものの美しさなど、すべてがバシッと決まったパーフェクトな曲。花田裕之のヴォーカルはヘタだが、そのヘタさかげんすら、ここではむしろ切なさに昇華されている。

5位「ネフードの風」(パンタ&HAL)
 パンタのアルバム中、『クリスタルナハト』と並び称される名盤『マラッカ』収録の名曲。『アラビアのロレンス』をモチーフにした、男臭いサマー・ソング。ワイルドでありながらリリシズムに満ちている。
 パンタの曲ではいつものことだが、詞が素晴らしい。「つきっ放しのストロボのように/まばたきを忘れた空」――最初のフレーズでもうノックアウトだ。
 この『マラッカ』にはほかにも、ロックと演歌とレゲエのスピリットが奇跡のバランスで融合した「つれなのふりや」や、故マーク・ボランに捧げた美しいバラード「極楽鳥」など、夏っぽい名曲多し。

6位「サマー・ナーヴス」(坂本龍一&カクトウギ・セッション)
 坂本龍一がYMO在籍中に作った、テクノ&フュージョン風味のセッション・アルバムの、タイトル・ナンバー。このアルバム全体が夏っぽいテイストで作られていたが、とくに、オープニングを飾ったこの曲は三重丸のサマー・ソング。坂本のヘタクソなヴォーカルも、むしろかわいらしい。

7位「陽炎」(フジファブリック)
 2009年末に惜しくも早世したバンドのフロントマン、志村正彦の才気が輝きわたる名曲。
 ふと、子どものころの夏休みを回想し、胸をしめつけられる青年(いや、中年かもしれないが)。その心象を描きつつ、夏の思い出のみならず、「これまでに失ったものすべて」すら思い出させる。甘やかな喪失感に満ちた名品。

8位「いいあんべえ」(ザ・ブーム)
 「島唄」ももちろん素晴らしい曲だけど、こちらのほうが私好み。歌詞はすべてウチナーグチ(沖縄の言葉)なのに、島唄のたんなる模倣に終わらず、見事に「ザ・ブームの曲」になっている。これぞまさに日本産ワールド・ミュージック。

9位「夕なぎ」(ナーヴ・カッツェ)
 ポリスを彷彿とさせる緻密なアンサンブルで目利きを唸らせた、女性ばかりのロック・トリオ「ナーヴ・カッツェ」。そのファースト・アルバム『OyZaC』(1987)に収められた曲。夏の夕暮れに吹く一陣の風のように涼やかな名曲である
 このナーヴ・カッツェ、いま聴いてもスゴイ。なにしろ、ポリスばりのタイトな演奏なのに、ヴォーカルとコーラスは透き通るような美しい女声なのだからたまらない。その落差にしびれる。

10位「夏色の服」(大貫妙子)
 大貫妙子にも夏に似合う名曲は多い。名盤『ロマンティーク』(私はこれがいちばん好き)はアルバム全体が見事なサマー・ミュージックになっていたし、「夏に恋する女たち」なんてヒット曲もあった。あ、「幻惑」や「海と少年」も夏に合うなあ。
 でも、1曲選ぶとしたら、『クリシェ』収録のこの曲。「よく似合うと買ってくれた夏色の服を/今年もひとりで抱きしめてしまう」という切ない歌詞をもつトーチ・ソング(失恋・片思いの歌)の傑作。



11位「8月のセレナーデ」(スガシカオ)
 よく聴いてみれば、この曲の歌詞には夏を連想させる言葉はただの一つも出てこない。にもかかわらず、タイトルとメロディー、アレンジだけで、見事に夏を表現している。たとえばイントロのギターは川のせせらぎを思わせるし、コーラスや間奏のピアノは夏の風と光をイメージさせる。その繊細な表現力に脱帽。
 スガシカオにはほかにも、「夕立ち」「ぬれた靴」など、けだるい真夏の夜を思わせる佳曲がある。

12位「ファム・ファタール~妖婦」(細野晴臣)
 細野晴臣がYMO結成直前に発表した名盤『はらいそ』の収録曲。一見トロピカル・ミュージックのようでいて、熱帯の夏というよりは“異界の夏”という趣の幻想味を漂わせる傑作。

13位「夏の光に」(やまがたすみこ)
 1976年のアルバム『サマー・シェイド』に収録された、「和製ボサノヴァの到達点」ともいうべき1曲。鈴を鳴らすような声の澄み切ったヴォーカルが素晴らしい。「J-POP史上最高の美声」の持ち主はやまがたすみこだと思う。

14位「愛を求めて」(ネッド・ドヒニー)
 ネッド・ドヒニーが1976年に発表した『ハード・キャンディ』は、私にとっては洋楽最高のサマー・アルバムだ。これほど夏に似合う曲満載のアルバムはほかにない。
 夏に似合うアメリカン・ポップスというと馬鹿明るいだけの能天気な曲を思い浮かべる人が多いだろうが、このアルバムはさわやかさと切なさと透明感を併せ持った絶品である。アコースティックなフォーク色と洗練されたソウル・フィーリングの見事な融合。この「愛を求めて(EACH TIME YOU PRAY)」のほかにも、いい曲がいっぱい。

15位「砂の女」(鈴木茂)
 元はっぴいえんどのギタリスト・鈴木がアメリカに渡り、向こうの一流スタジオ・ミュージシャンたちと互角に渡り合った名盤『バンド・ワゴン』のオープニング曲。安部公房の「砂の女」とは関係ない(たぶん)。乾いた夏の風が吹き抜けていくような「シティー・ポップ」の逸品。このアルバムにはほかにも、「微熱少年」などサマー・ソングの名曲が。

16位「ドラゴンフライ・サマー」(マイケル・フランクス)
 マイケル・フランクスの曲にも、夏に似合うものが多い。『タイガー・イン・ザ・レイン』のタイトル・ナンバーは雷が過ぎさったあとの切なさにぴったりだし、名盤『スリーピング・ジプシー』や『ブルー・パシフィック』は丸ごとサマー・ミュージックの逸品だ。
 でも、あえて1曲選ぶとしたら、タイトルに「夏」が織り込まれたこれ。同名アルバムのタイトル・ナンバーで、夢幻的で上品、かつ切ない。ちなみに、「ドラゴンフライ」とはとんぼのこと。

17位「海辺のワインディング・ロード」(矢野顕子)
 矢野顕子のピアノ弾き語りカヴァー集はいまのところ4作あって、そのうち『Home Girl Journey』は、いちばん夏っぽい曲を集めたアルバムになっている。小室等の「赤いクーペ」、槙原敬之の「雷が鳴る前に」などなど。とりわけ、忌野清志郎のカヴァーであるこの曲の清冽さ・切なさといったら……。

18位「ENDLESS SUMMER NUDE」(真心ブラザーズ)
 1995年発表の「サマーヌード」をリアレンジした、97年発表作品。元曲よりもこちらのほうが格段にカッコイイ。パワフルなのにオシャレで、明るいのに切ない曲。市川準監督の映画『大阪物語』の中でこの曲が印象的に使われており、そのシーンも忘れがたい。

19位「夏の初めのイメージ」(笠井紀美子)
 日本の女性ジャズ・シンガーの草分けの1人・笠井紀美子が1977年に発表したアルバム『TOKYO SPECIAL』の1曲。
 作詞は安井かずみ、作曲は筒美京平で、俗なアレンジを施したらただの歌謡曲になってしまうところ。それが、鈴木宏昌の洗練されたアレンジによって、「東京湾岸ボッサ」という趣の涼やかで上品な佳曲に仕上がっている。

20位「ハイヌミカゼ」(元ちとせ)
 元ちとせのデビュー・アルバムのタイトル・ナンバー。「南からの聖なる風」を意味するタイトルのイメージそのままの曲。
 吹き渡る夏の風をイメージさせる馬頭琴の音色が印象的。ふつうのストリングスではなく、あえて馬頭琴を用いた作り手のセンスが素晴らしい。

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音楽同好会(名前検討中  やまがた すみこ を語る会
やまがた すみこ で プログ検索中です。
こないだ あるページから はじめて やまがた すみこ さんという アーティストを知りました。いい歌ですね。
動画で ふるさと ペパーミント・モーニング 虹になりたい 日曜日のキューピー  夢色グライダー
ムーンライト ジルバ 風に吹かれていこう 雨上がりのサンバ  そしたら空は スピリット オブ プレイス ありがとう あなた(モモ)   最高ですね。
  • 2012-09-19│13:40 |
  • 村石太スタンバイ URL│
  • [edit]
デヘヘラーさん

おお、「サマー・ヌード」。それもありましたね。
吉田美奈子の「8月の永遠」とか、「7月」もしくは「8月」をタイトルに冠した曲だけでもベストテンが作れそうです。
  • 2008-07-16│09:55 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
サマーソング
今日のエントリー、とても楽しく拝見しました。
20曲どれもこれも、そうそうそうと共感しきり。

1曲付け加えさせてもらえれば、
真心ブラザースの「サマーヌード」。

わたしも近いうち、汗ダラダラかきながら
選んでみたいと思いました。
  • 2008-07-15│22:55 |
  • デヘ URL│
  • [edit]

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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