鈴木大介『家のない少年たち』


家のない少年たち 親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル家のない少年たち 親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル
(2010/12/17)
鈴木大介

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 今日は、名古屋の「名古屋観光ホテル」で、元横浜ベイスターズ監督の権藤博さんを取材。テーマは、コーチ/監督としてのご経験をふまえたリーダー論・人材育成論である。
 権藤さんは70歳を優に超えているのに、身のこなしなどがきびきびしていて、すこぶるダンディ。やっぱり一流アスリート/指導者は違うなあ、と思う。
 気さくに話してくださり、しかも取材テーマに沿うように気を配る細やかな配慮に感じ入った。

 取材を終え、編集者とともに名古屋駅の駅ビル「セントラルタワーズ」で遅い昼食をとったのだが、食事を終えて店の外に出たら、なんと目の前に鳩山前首相夫人の鳩山幸さんが歩いていて、ビックリ。見間違えようもない派手な顔立ちと特徴的なヘアスタイル。うーむ、名古屋で何をしておられたのか(よけいなお世話ですね)。

 
 車中で、鈴木大介著『家のない少年たち――親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル』(太田出版/1680円)を読了。

 鈴木大介のルポは、第1弾『家のない少女たち』、第2弾『出会い系のシングルマザーたち』をそれぞれ読んで、感銘を受けた。
 第3弾にあたる本書は、『家のない少女たち』の読者たちからの声――「家のない少女らの話はわかったけど、家のない少年たちはどうしてるの?」――に答えるべく書かれたものだという。

■関連エントリ
『家のない少女たち』レビュー
『出会い系のシングルマザーたち』レビュー

 前2作に連作短編集の趣があったのに対し、本書には全編を通しての「主人公」がいる。龍真、スギ、マー君、サイケの4人がそうだ。その4人を軸とした長編ノンフィクションの趣。それ以外の「家のない少年たち」も、サブストーリー的に出てくるのだが。

 少年鑑別所で出会った4人は、義兄弟のような絆で結ばれ、出所後はチームを組んで強盗などの犯罪をくり返していく。昔ならヤクザ組織などに吸収されたであろう彼らだが、どの組織にも属さない。「ネットや携帯などのツールの発達が、少年たちを犯罪現場の“主役"にのし上げた」時代ゆえだ。

 そんな「犯罪現場最前線」の少年たちを、著者は綿密な取材のもと、いきいきと描き出す。ほかにも、振り込め詐欺集団で働く少年などの肉声が記録されている。

 著者が出会ったプロの犯罪者になった少年の多くが、親の虐待やネグレクトなどを経験した「家のない少年たち」だった。

 龍真たちは、殴られ捨てられ放置され、腹が減ったから万引きして、万引き覚えたらその糧を年上の不良に搾取されて、トカゲの尻尾切りで一発逮捕、一発少年院。審判しようにも母ちゃんはシャブ中で更生施設の中だ。
 誰も面倒なんか見れないから、満期みっちりブタ箱生活。仮退院や再入院を繰り返せるだけの環境のある不良少年たちを指くわえて見ながら、塀の中で不公平に泣く。



 まるで『スラムドッグ$ミリオネア』のような世界が展開され、「ホントに日本の話なのか?」と驚かされる。主人公の一人・龍真がポツリともらすこんな言葉が印象的だ。

「俺、『クローズ』って漫画嫌いなんすよ。(中略)高校に通えてるヤツが不良とか意味わかんねーし。他のヤンキー漫画みたいのとかみんなほとんど高校行ったりとかで、クソだなって。不良高校行かねーよ。そういう話をスギやサイケたちとして、俺ら高校行くとか考えたこと一度もないし、そういう選択肢ないじゃないですか」



 犯罪を仕事としてつづける「家のない少年たち」を描きつつ、著者は彼らが心の鎧の下に隠した寂しさ、哀しみにまで迫っていく。その点にこそ著者の真骨頂があるのだが、しかし本書は前2作に比べ共感しにくい面がある。「犯罪を礼賛する気はさらさらない」と著者は「まえがき」で言うのだが、それでも犯罪をどこか肯定的に描いている印象を随所で受けるからだ。

 『家のない少女たち』で、援交家出少女たちに著者が注ぐあたたかいまなざしに、私は共感を覚えた。しかし、売春と強盗などの凶悪犯罪は、やはり次元が違うのである。少年たちがくり返す犯罪の模様をここまで詳細に描写する必要があったのかと、やや疑問。なにしろ、その手の場面はまるでノワール(暗黒小説)のようなのだから。

 とはいえ、犯罪者となった少年たちの世界をリアルに描き出してものすごい迫力ではあり、一読の価値はある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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