雨宮まみ『女子をこじらせて』


女子をこじらせて女子をこじらせて
(2011/12/05)
雨宮 まみ

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 雨宮まみ著『女子をこじらせて』(ポット出版/1575円)読了。
 
 AVライターの著者が、自らの少女時代から三十路の現在までを振り返った自伝的エッセイ。
 「青春エッセイ」という趣。それも、さわやかで美しい青春ではなく、自分の黒歴史もドロドロした内面も赤裸々に明かした青春エッセイなのだ。
 「ああー! 過去の自分マジで死んでくれ!」というフレーズがツボにはまった。私も自分の若いころを思い出すと、そう叫びたくなることだらけである。

 AV業界、エロ雑誌業界の話も当然ふんだんに出てくるが、それでも女性にも抵抗なく読める感じの本だ。

 頻出する「こじらせ系女子」「こじらせている」という言い方の意味が、本書を通読しても私にはよくわからなかった。
 「童貞をこじらせて」うんぬんという言い方があるから「非モテ女子」のことなのかと思ったら、そうともかぎらないようだ。著者は、少女時代はともかく大学以降はいつも彼氏がいて、けっこうモテてるし……。
 「腐女子」「非モテ」「メンヘラ」――このへんはわかる。でも、「こじらせガール」はそのどれにもあてはまらないようだし。

 「こじらせ」の意味についてはともかく、内容はたいへん面白く、一気読みした。
 著者の文章には終始軽やかな自虐的ユーモアが漂う。自分の内面を視線でグリグリえぐるように見つめ、分析していくくだりが多いのだが、それが重くも自己陶酔的でもなく、笑えるのだ。

 以下、笑える箇所と印象に残った箇所を引用。

 「男にモテたい」なんて、思う余裕もなかった。それ以前に服すら似合わない。オシャレにすらなれない。恋愛や男のことなんて、そういうことをクリアしたあとで考える、雲の上の出来事に思えました。

 

 行くところがなく、諸悪の根源である同郷の彼に会いに行きました。泣いているといきなりナスカの地上絵の写真集を見せられ、「コレを見てると悩みとか全部ちっちゃいことに思えてどうでもよくなるからさ~」と言われました。ナスカの地上絵に恨みはないですが、ぜんぜんどうでもよくはならなかったです。っていうかお前が! 私と! どーすんだっていう話をしてんだよ! 古代人の叡智でごまかすんじゃねえ!



 恋愛をするということは、汚い自分を引き受けることです。まったく汚いところのない恋愛なんて、ない。どこかに必ず汚い自分の影が現れる。そのことを知らずに、自分は童貞だ処女だと、恋愛している人間を恨んだり憎んだりするのは、浅い考えです。汚い自分を他人に見られ、知られ、そういう自分に自分で気づくことは、何も知らずにいるよりもずっときつい。



 AVライターという特殊な分野の仕事を選んだことからくる葛藤を綴ったくだりも、読み応えがある。
 たとえば、こんな一節――。

 ショックな出来事がありました。私を持ち上げてくれる人たちが、私のことを「美人ライター」と呼び始めたのです。(中略)「美人ライター」という言葉は、顔写真を出さないように、女ということが極力目立たないようにと思って仕事をしていた私のせせこましい努力を一瞬で水の泡にする「調子乗ってると思われるワード」でした。(中略)
 応援するつもりで邪魔されている。何が美人だよ、私がAV女優だったらブスって言うだろ、しょせん「ライターはブス」って思ってるから、普通に化粧して女の服着てるだけで「美人美人」ってチヤホヤしてるだけじゃねえかよ、バーカ、と思っていました。
 25年以上もずっと「ブス」と言われ続けてきたのに、手のひらを返したように「美人」と呼ばれることもばかばかしかったし、文章に見た目なんか関係ないのにいちいち見た目のことを言うのも意味がわからなかった。



 なお、巻末に『モテキ』の久保ミツロウと著者の対談が載っており、これもなかなか笑える。
 久保ミツロウは『笑っていいとも!』にゲストで出たときの映像をユーチューブで見て、「この人、女芸人より面白い」と思ったものだが、本書の対談も彼女の個性が全開である。
 誰か、久保ミツロウの語り下ろしエッセイを本にすればいいのに……。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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