西村賢太『随筆集 一日』


随筆集 一日随筆集 一日
(2012/05/30)
西村 賢太

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 今日は、銀座の松竹試写室で、園子温監督の最新作『希望の国』の試写を観た。感想は改めて書くが、なかなかすごい映画であった。

 

 行き帰りの電車で、西村賢太著『随筆集 一日(いちじつ)』(文藝春秋/1523円)を読了。

 2010年に出た『随筆集 一私小説書きの弁』につづく、2冊目のエッセイ集である。

■関連エントリ→ 西村賢太『随筆集 一私小説書きの弁』レビュー

 本書には、芥川賞受賞前後のあわただしい日々を綴った随筆が多く収められている。
 「芥川賞でも獲れれば、現在岡惚れしているあのインテリ女性も、ひょっとしたらなびいてくれるかも、と、暫時夢想」――『一私小説書きの弁』の一編にはそんな一節があったが、本書はその夢がかなってしまったあとの話であるわけだ。

 もっとも、芥川賞作家になったからといって、西村はまったく変わっていない。守りに入っている印象は微塵もなく、相変わらず赤裸々で下品である。
 なにしろ、本書の後半に収められた連作エッセイのタイトルが「色慾譚」(東スポに連載されたもの)で、赤裸々極まる西村流『ヰタ・セクスアリス』なのだから……。

 ただ、『一私小説書きの弁』に比べ、全体に薄味の印象は否めない。芥川賞をとりたくてもとれない悶々、煮えたぎるルサンチマンこそが西村作品の主燃料であったのだから、願いがかなってしまったあとの随筆はどうしても燃料不足になるわけだ。

 とはいえ、下に引用する一節が示すとおり、西村のルサンチマンのもう一つの燃料たる「女旱(ひで)り」は、芥川賞受賞後もまったく解消されていないらしい。

 今年は誰もが知っている新人文学賞を受け、これで少しは状況も変わるかと思いきや、それ以後だけでもすでに三人の女性にフラれているのだから、いよいよもって、私は私の、今のこの境遇が慊(あきたりな)い(「やもめ中年の夢」)



 こちらのルサンチマンがあるかぎり、西村作品は今後も燃料には事欠かないであろう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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