根本敬『果因果因果因』


果因果因果因果因果因果因
(2011/09/10)
根本 敬

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 根本敬著『果因果因果因』(平凡社/1785円)読了。

 特殊漫画家・根本敬による初の小説集である。
 といっても、根本は2009年の著作『真理先生』の一章を小説仕立てにしており、小説デビューはそこで果たしていた。丸ごと一冊の小説集が初なのだ。もとは平凡社のサイトでウェブ連載したものだという。

 『真理先生』の「小説」(というタイトル)を読んだ際、当ブログのレビューで私は次のように書いた。

 根本のマンガをそのまま小説に置き換えたような、彼以外には書き得ない作品。もしかしたら、根本敬は町田康のように小説家に大化けするかもしれない。



 本書に収められた4つの中短編もしかり。100%の特濃根本敬ワールド。かなり読者を選ぶ作品だが、根本の著作を愛読してきた人なら愉しめるはずだ。

 書名は「ガインガインガイン」と読む。
 かつての名著『因果鉄道の旅』を彷彿とさせるこのタイトルが示すとおり、登場する人物はどいつもこいつも強烈な個性をもつ「因果者」ばかりである。普通の人は一人も登場しないといってもよい。

 「因果者」たちがたどる数奇な運命を描いた4編は、どれも不気味で下品で奇妙な物語なのだが、しかし根源的なフリーダムの感覚にも満ちている。「人間はどう生きてもいいんだ!」という「生の肯定」が全編の通奏低音となっていて、ゆえに読後感は爽快である。

 4編それぞれ面白いが、私がいちばん気に入ったのは「お寿司9696(クルクル)会館」。
 場末の回転寿司屋で出会った男女が夫婦となり、紆余曲折を経て画期的な回転寿司店を開くまでの物語なのだが、これほど先の展開が読めない小説も珍しい。どう転がっていくか予測不可能な面白さがある。

■ウェブ上でもまだ読める→ 「お寿司9696(クルクル)会館」

 くわえて、4編とも随所に根本らしい歪んだ笑いが仕組まれていて、かなり笑える。既成の小説にはまったく似ていないが、しいて近いものを挙げるなら、やはり町田康の諸作になるだろうか。

 文芸誌各誌は、根本敬に小説を依頼すべきだと思う(すでに依頼していたら失礼)。そして、根本が芥川賞でもとったら面白いのだが……。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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