勝間和代『「有名人になる」ということ』


「有名人になる」ということ (ディスカヴァー携書)「有名人になる」ということ (ディスカヴァー携書)
(2012/04/28)
勝間 和代

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 勝間和代著『「有名人になる」ということ』 (ディスカヴァー携書/1050円)読了。

 勝間自身が「有名人」になった経験を通して、「有名人になる」ことの意味、「有名人になる」ためのコツ、ブームが去ったあとの対処法などを綴ったもの。

 まさに「ありそうでなかった」本であり、数ある勝間本の中でも企画としての質はかなり高いと思う。有名人になりたい人のためのハウツー本としてもよくできているし、読み物としてもなかなか面白い。

 まず目を引くのは、“自分は「有名人になる」ことにビジネス・プロジェクトとして取り組んだ”と述べているところ。
 勝間は2007年に金融ビジネスの会社を立ち上げたが、翌年のリーマン・ショックで大打撃を受け、経営危機に陥った。そのときに起死回生を期して取り組んだのが、自らを商品とした「有名人ビジネス」だった、というのである。

 以下、その「有名人ビジネス」の舞台裏を明かすことを通して、有名人になることのメリット/デメリットが赤裸々に綴られていく。

 いわく、「『有名人になる』ということは、金銭的に見ると、収支トントンか、かえってマイナスです。もし金銭だけで見たら、わたしは証券アナリストを続けていたほうがよかったと思うくらいです」。
 つまり、文化人枠の場合、有名になることで得られる経済的メリットはさほど大きくない、と……。ただし、有名になることに付随する「人脈のひろがりによるチャンスのひろがり」は、何ものにも代えがたい、ともいう。

 「有名人」というビジネスは、有名になること自体が報酬となる人以外にとっては、なんらかの別の欲求が満たされない限り、かなりきつい商売だと思います。



 自らの数年間にわたる有名人体験を、冷静に客観的に振り返っているところがよい。
 たとえば、著者は次のように書いている。

 みなさんご存じのとおり、さまざまな人が有名になっては消えていきます。最盛期はせいぜい一、二年というところでしょうか。わたしも自分の「ブーム」を振り返ると、やはり、二◯◯九年がピークだった思います。



 これが芸能人なら、「私の人気のピークは3年前でした」などとはけっして言うまい。

 本書の類書といえる大槻ケンヂの『サブカルで食う』で、大槻は「『人気が出る』ということは『ある日突然、いわれのない愛と憎しみを一身に受けるようになること』です」と書いていた(→当ブログのレビュー)
 本書にも、勝間が受けた「いわれのない愛と憎しみ」の数々が記録されている。
 「いわれのない憎しみ」は気に病まず、もっぱら「いわれのない愛」のほうに喜びを感じられる人なら、有名人になることで幸せになれるのだろう。

 無名人の負け惜しみというわけではないが、私は有名人になりたいなどとはまったく思わない。人ごみの中に身を置いたとき、周囲はみな自分を知っているのに自分は誰も知らないなんて、想像しただけでゾッとする。私がゾッとするそのようなシチュエーションをむしろ快感と感じられるような人が、有名人になりたがるのだろう。

 「有名人になる」ことに過大な幻想を抱いている無名人たちは、そのメリット/デメリットを冷静に腑分けした本書を読むとよい。幻想を打ち砕くために役立つし、本書を読んでもなお有名人になりたい人にとってはよき指南書となるだろう。

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コメント

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おはようございます。先日、同じ書籍を読みました。勝間さんのことは個人的に好きでも嫌いでもどちらでもありません。ただ、話し言葉で本が書いてあるので僕には読みづらくて敬遠していました。
で、個人的な感情なく読んでいたので、「へぇー、なるほど」くらいで終わってしまったのです。
  • 2012-12-24│05:58 |
  • 岡本大輔 URL
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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