蛭子神建(元)『出家日記』


出家日記―ある「おたく」の生涯出家日記―ある「おたく」の生涯
(2005/11/01)
蛭児神 建(元)

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 蛭子神建(元)著『出家日記――ある「おたく」の生涯』(角川書店/1575円)読了。

 蛭児神建(ひるこがみ・けん)は、ライター/編集者として1980年代の「ロリコン・ブーム」を担った人なのだそうだ。

 私は、吾妻ひでおのマンガに登場したキャラの一人としてしか知らない。あと、別冊宝島の『おたくの本』(いまをときめく町山智浩の、編集者時代の代表作の一つ)の中で、伝説の人物として取材を受けていたことを覚えている。

 本書は、とうに「おたく界」を引退して僧侶となった(「元」が著者名につくのはそのため)彼が、生い立ちからの来し方を振り返った自伝的エッセイである。

 カバーと扉のイラスト、それに巻末4ページのコミックエッセイを、蛭子神が師と仰ぐ吾妻ひでおが描いている。ゆえに、見た目は「吾妻の『失踪日記』の便乗本の一つ」という印象。少なくとも、『失踪日記』がベストセラーにならなかったら出なかった本ではあるだろう。

 一種の奇書であり、不思議な迫力に満ちた本だ。著者についてもロリコン・ブームの内幕についても知らない私が、一気読みしてしまった。80年代のコミケに参加していたりしてブームの現場を知る人なら、もっと面白く読めるだろう。

 「面白く」と書いたが、これはけっして笑えるたぐいの本ではない。
 幼少期に父親から虐待に近いを受けるなど、著者の生い立ちはかなりヘビーである。ロリコン・ブームやその前後についての記述も、面白いというよりむしろ痛々しい印象だ。
 また、著者は「引退」後に自分のファンだった女性と結婚するのだが、女性には精神障害があり、著者も精神科に通院している。後半に綴られる2人の生活は(著者も書いているとおり)、共依存そのものだ。

 すべてがヒリヒリと痛々しい。それでも、著者が生きづらさを抱えながらも懸命に生きている様子が伝わってきて、読後感は悪くない。

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まとめ【蛭子神建(元)『出家】

出家日記―ある「おたく」の生涯(2005/11/01)蛭児神 建(元)商品詳細を見る 蛭子神建(元)著『出家日記―

コメント

矢部 善城寺の一言
これはよい!
  • 2012-11-16│23:25 |
  • 矢部 善城寺 URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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