ロバート・アラン・フェルドマン『フェルドマン式知的生産術』


フェルドマン式知的生産術 ― 国境、業界を越えて働く人にフェルドマン式知的生産術 ― 国境、業界を越えて働く人に
(2012/10/12)
ロバート・アラン フェルドマン

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 ロバート・アラン・フェルドマン著『フェルドマン式知的生産術――国境、業界を越えて働く人に』(プレジデント社/1470円)読了。

 モルガン・スタンレーMUFG証券の日本担当チーフ・アナリスト、経済調査部長を務める著者が、自身の仕事に用いる知的生産術を一般向けにブレイクダウンした本。2008年刊の『一流アナリストの「7つ道具」』の増補改訂・改題版だそうだ。

 まず、訳者を立てずに著者が自分で書いているのに、非常に読みやすい日本語になっていることに驚く。1970年に留学生として初来日して以来、日本での生活も長かったとはいえ、ここまで文章がこなれているのはすごい。

 内容も、読み物としてはなかなか面白い。
 アナリストの分析手法をわかりやすく紹介した章は興味深く読めるし、「数字力」「プレゼン力」「商売力」などをテーマとしたほかの章も、説明のために用いられるエピソードや喩え話がいちいち面白い。

 たとえば、いわゆる「セルフブランディング」について説いたくだりでは、「そのジャンルでは自分が一番」といえるスキルをもつことが何よりも強力なブランディングになる、と言い、次のような例を挙げる。

 リンドバーグは世界中のどの国の人にも知られていますが、二番目に大西洋を渡ったバート・ヒンクラーの名前は誰も知りません。では、大西洋を三番目に飛んだ飛行士はどうでしょうか。エミリア・エアハート(※)です。彼女はよく知られています。なぜなら、大西洋を最初に横断した最初の女性飛行士だからです。「女性」と限定することで一番になることができたわけです。


※日本での一般的表記はアメリア・イアハート

 もう一つ例を挙げる。

 新しい星はどうやってできるのかご存知ですか? 星雲と星雲がぶつかったときにできるのだそうです。アイデアも同じです。意図的ではないけれども、それまで遭遇することのなかった考え方がぶつかったときに、新しい発想が生まれます。
 スティーブ・ジョブズがピクサー社の本社ビルを建てるときに、関係のない部署の社員同士がひんぱんに顔を合わせるように設計させました。具体的には、ビルのど真ん中にカフェテリアなどをつくり、社員が移動するときに必ずそこを通らないといけないようにしたのです。(中略)計画的に偶然をつくれば、アイデアが生まれやすくなります。



 このように、思わずメモしておきたくなるような話が随所にちりばめられている。
 ゆえに面白くは読めるのだが、本書に紹介された知的生産術が我々の仕事に役立つかは疑問。「ここに書かれている方法をどうやって自分の仕事に取り入れようか」と考えてみると、意外に応用が難しかったり、意外に陳腐なアイデアで実用性はなかったりするのだ。

 たとえば、関係ない部署の社員同士が顔を合わせる仕組みをつくればアイデアが生まれやすくなる、という話にしても、よく考えれば、ありふれた異業種交流会と同程度の発想でしかない。

 「会社の朝礼で話材に使う」などという形でネタ本にするにはよいが、実用性にはやや疑問符がつく本。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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