さそうあきら『ミュジコフィリア』


ミュジコフィリア(5) (アクションコミックス)ミュジコフィリア(5) (アクションコミックス)
(2013/01/28)
さそう あきら

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 仕事上の必要があって、さそうあきらの『ミュジコフィリア』(アクションコミックス)全5巻を購入し、一気読み。

 『神童』『マエストロ』につづく、さそうの音楽マンガ・シリーズ最新作。京都の架空の国立芸術大学を舞台に、「現代音楽研究会」の若者たちを描く青春群像劇である。

 現代音楽の世界を描いた青春マンガ! そんなの、さそうあきら以外の誰も思いつかないだろうし、思いついても描こうとはしないだろう。

 この作品は、現代音楽について門外漢の私が読んでも、ちゃんと面白いし感動もできる。そこが素晴らしい。
 主要登場人物はみんなキャラが立っているし、主人公・朔の成長を描くビルドゥングス・ロマンとしても、彼と2人の女性とのラブストーリーとしても深みがある。 
 
 「マンガで音楽をどう表現するか?」というテーマには、過去多くの優れたマンガ家が挑んできた(本格的な挑戦の嚆矢は、水野英子がロック・スターを描いた名作『ファイヤー!』あたりか。宮谷一彦のジャズ劇画「ラストステージ」も傑作だった)。
 その中にあって、さそうあきらによる音楽表現は、過去の類似作よりも一段高みにある印象を受ける。音楽をこんなふうにマンガで表現できるとは、さそう以前には思いもよらなかったのである。

 本作のキーフレーズとなっているのが、「未聴感」という言葉。
 元は湯浅譲二(現代音楽の著名な作曲家。この作品でも重要な登場人物となる)の造語らしいが、これが「聴いたことのないような斬新な音楽による感動」を表すとすれば、私は本作からも「未聴感」に近いものを感じた。聴いたことのない音楽が、ページの向こう側から聴こえてきたのだ。

 複数の賞に輝き、映画化もされた『神童』のほうが、作品としての完成度は高いかもしれない。が、マンガ表現の未踏域に踏み込むチャレンジ精神という点では、本作に軍配が上がるだろう。

 くわえて、“マンガで読む現代音楽入門”としても読める。少なくとも私は、本作を読んで現代音楽の敷居の高さが払拭され、「聴いてみようかな」という気になった。 

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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