佐藤優『「知」の読書術』


「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)
(2014/08/26)
佐藤 優

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 昨日は、都内某所で取材が一件。
 行き帰りの電車で、佐藤優著『「知」の読書術』(集英社インターナショナル/1080円)を読了。

 前半の第一部『「危機の時代」に備えよ』は、ブックガイド編。
 緊迫の度を増すウクライナ情勢など、現今の世界を歴史的視点から読み解くための必読書を、厳選して紹介している。
 カタログ的ブックガイドではなく、ごく少数の古典的名著をじっくり掘り下げて紹介しており、読み応えがある。

 第一部で印象に残った一節を引く。

 私の見立てでは、資本主義によって生まれる人間性の空洞を埋め合わせる最強の思想は、民族主義――すなわちナショナリズムです。その意味で民族主義やナショナリズムは、「近代人の宗教」にほかなりません。



 ウクライナを巡る対立を、ロシアと欧米諸国との「新冷戦構造」と捉えるのは間違っています。冷戦とは「共産主義と資本主義というイデオロギーを巡る対立」のことですが、現在起きているロシアと欧米諸国の対立は、ウクライナへの影響圏を巡る帝国主義的対立として捉えるべき問題なのです。



 我々はどうやって、「自由」と「民主」の折り合いをつけていけばよいのでしょうか。それには、「中間団体を再建することが重要だ」と私は考えます。中間団体というのは、宗教団体や労働組合、業界団体、地域の寄り合いやサークルなどのことです。
(中略)
 中間団体が壊れた国では、新自由主義によってアトム化した個人が国家に包摂されてしまいます。そうなると、国家の暴走に対する歯止めを失ってしまう。その手前で個人を包摂し、国家の暴走のストッパーともなる中間団体を再建することこそ、現代の最も重要な課題なのです。



 後半の第二部『「知のツール」の活用法』は、少し前の著作『読書の技法』の続編的内容。佐藤優流読書術を開陳しているが、今回はとくに電子書籍を活用した読書術に紙数が割かれている。

 あとがきによれば、本書は「当初、電子書籍をビジネスパーソンがどのように活用すれば、教養を強化するツールにできるかについて書くつもりだった」そうだ。
 しかし、日本の電子書籍のラインナップがまだあまりに貧弱で、基本的名著の多くや学習参考書(受験用参考書がビジネスパーソンの教養強化に役立つというのは、著者の以前からの主張)の大半が電子書籍化されていないため、企画の変更を余儀なくされたという。

 それでも、本書に説かれた電子書籍活用法は大変参考になる。
 たとえば、“紙の本ですでに所有している本でも、参照頻度の高いものは電子書籍でも購入し、端末に入れて常に持ち歩くべきだ”と、著者は言う。

 私のKindleには現状マンガばかりがたくさん入っているのだが(笑)、著者の奨めに従って、今後はKindleを“マイ携帯書斎”化していきたいと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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