マーリーン・ズック『私たちは今でも進化しているのか?』



 マーリーン・ズック著、渡会圭子訳『私たちは今でも進化しているのか?』(文藝春秋/1944円)読了。書評用読書。

 原題は「PALEOFANTASY」(=石器時代への幻想)。日本でも最近流行っている「パレオダイエット」(旧石器時代式ダイエット)を、進化生物学者の著者が批判した書である。

 私は「パレオダイエット」という言葉自体、本書で初めて知った。旧石器時代の食事法を再現したダイエット法なのだそうで、日本では「原始人食ダイエット」とも呼ばれる。

 農耕文明が始まったのは約1万年前であり、進化の歴史から見たらつい昨日のようなもの。ゆえに、人間の体はまだ農耕文明以後の食生活に適応しておらず、石器時代仕様のままになっている。炭水化物中心の現代の食生活がさまざまな文明病を生んだのは、その齟齬のためである。
 だから、炭水化物を避け、肉、魚介類、野菜、ナッツ、フルーツをおもに食べる石器時代式の食事にすれば、健康で美しくなれる。

 ……とまあ、そのような考え方に基づくダイエットであるようだ。「糖質制限ダイエット」の源流も、このパレオダイエットだという。

 本書の随所に紹介されているパレオダイエット推進者側の考え方を見ると、もろに疑似科学である。しかも、進化論に基いているという装いの疑似科学なわけで、第一線の進化生物学者である著者としては捨て置けなかったのだろう。

 私はパレオダイエットなるものにまったく興味がないが、それでもこの本は面白く読めた。というのも、パレオダイエットの誤りを論破することを通じて、著者はおのずと進化生物学の最前線を読者に紹介していくことになるからだ。つまり、最新版の「進化論入門」としても読めるのである。

 しかも、著者の文章は上品なユーモアに満ちていて、けっこう笑える。
 ジャレド・ダイアモンドの文明論的サイエンス・ノンフィクションをもっと軽妙にした感じで、なかなか読ませる本だ。

■参考(本書とパレオダイエット推奨本を対比的に紹介した記事)
「炭水化物」は人類の敵なのか、味方なのか(東洋経済オンライン)

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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