片山智行『孔子と魯迅』



 片山智行著『孔子と魯迅――中国の偉大な「教育者」』(筑摩選書/2052円)読了。書評用読書。

 中国文学者で、とくに魯迅を専門的に研究してきた著者が、孔子と魯迅に通底するものを浮き彫りにした評伝である。

 魯迅といえば、激烈な儒教批判で知られている。小説家としてのデビュー作「狂人日記」の隠れたテーマも儒教批判であったのだ。
 したがって、魯迅と孔子に「通底するもの」などなさそうな気がするが、そうではないと著者は言う。
 魯迅が批判したのは、孔子本人の思いを離れ、支配階級に都合のいい封建道徳に変質した後代の儒教であって、孔子その人の思想とは深く響きあうものがあったのだ、と……。

 この見立てが面白いし、孔子についても魯迅についても、教えられるところの多い書ではあった。

 しかし、一冊の本として見た場合、そもそもこういう形にすべきだったのか、疑問を抱いた。
 本書の前半は孔子の評伝であり、後半は魯迅の評伝である。それぞれ評伝としての質は高いと思うのだが、肝心の“孔子と魯迅をつなぐもの”についての記述はごくわずか。分量でいえば3~4ページ分くらいしかないのだ。

 これを『孔子と魯迅』と銘打った書にする必然性があったのだろうか? 別々の本にして出せばよかったのでは?
 孔子と魯迅、中国古代と近代を結ぶ“真に中国的なるもの”の水脈が壮大に論じられる本だと期待したのに、大いに期待ハズレであった。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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